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『短歌往来』2023年12月号

銀色の匙にすくへる氷菓子われにもいつの間にか残り生(よ) 佐藤通雅 かき氷のことだろう。匙に掬って少しずつ食べている間にどんどん溶けてゆく。気がつけば残り少なくなっている。ふと自分の残生に思いが及ぶ。溶けるように時間は過ぎてゆくのだ。

在つたといはれればあつた、無かつたといはれればさうかと思ふノボロギク 小黒世茂 ある何か、が在ったかもいや無かったかも。記憶とは曖昧なもの。事実はいくらでも捻じ曲がる。このノボロギクは在る無しの主語ではなく、結句を植物名で収める一つの型だろう。

③川本千栄「川野里子歌集『ウォーターリリー』評」〈短歌の持つ力を拡張し、可能性を拓く構成だ。〉連作「鶴の折り方」に対する評の部分。ここちょっと言葉足らずで「短歌の持つ力」→「短歌連作の持つ力」と書くべきだった。(言い訳…。)最近、短歌を一首で詠む/読む、か、連作で詠む/読む、か考えることが多いのだが、これは連作の力を感じる歌集だった。

④崔ソハ「作品月評」
夏椿これが普通と思ってた咲いても咲いてもただ散るばかり 川本千栄
〈夏椿の花が咲いては散っていく様子が描かれており、命の儚さと繰り返しの中にある美しさが表現されている。〉四首も挙げて評をいただきました!ありがとうございます!

2023.12.29. Twitterより編集再掲

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