『短歌往来』2021年6月号
①桜川冴子〈「短歌の作り方DVD」のようなものがあれば利用したいか聞いたところ「はい」が82%、「いいえ」が18%であった。この結果を受けて学院の実行委員会として小学生版、中学生版、高校生版の三種類を制作するに至り、〉すごい実行力(@_@)!作ったんだ!
②田中教子「前登志夫の歌のコスモロジー」〈読者が胸打たれるのは、事実の告白でも、空想力でも、目新しい技法でもない。言葉の向こうに、言いようのない「緊張感」のようなものを感受するからである。〉共感する。様々な違う言い方があると思うが、目指す所は同じだろう。
③大丈夫、あなたのことは許さない 港の端より汽笛を鳴らす のつちえこ 漫画ポプテピピックの「大丈夫、致命傷だ」というセリフを思い出した。大丈夫の後に否定的な言葉が続くところが意外性があっていい。あなたは忘れても(すぐ忘れるんだろう)私は忘れないし許さない。大丈夫、あなたが忘れる分も、私が憎んであげるから。港の端から鳴らす汽笛は作中主体の決意のようにも思う。
余談ながらポプテピピックはこのセリフとあと2,3個のセリフを知ってるぐらい。あの強烈な絵柄と。読んだことは無いです。
④音楽はまづ指先に宿るから弾くだらう舟を焼き尽くすまで 河野美砂子 頭でも心でもなく、指先に宿るというのが演奏者でもある作者の実感なのだ。「舟を焼く」は「退路を断つ」の意味だろうが、音楽が流れる背景に、燃える舟の映像が浮かび上って見えるような印象を受けた。
⑤勝又浩「与謝野晶子雑談」晶子が有島武郎と秘められた恋心を育てていたという話が紹介されている。〈永畑道子『夢のかけ橋』(…)晶子と有島武郎の秘められた熱い交情を二人の書簡から追窮して評判になり〉とのことだが全然知らなかった。晶子の歌にはその想いが詠われ、それを読んだ夫の寛も、晶子の気持ちに気づいて歌を作った。〈だが、そうであればもう一つ、寛のこうした歌も当然、晶子は見ていたわけで、そこには歌人夫婦の不思議な関係、奇妙な馴れ合いも見えるのではないだろうか。〉何だかな。読んでて気持ちがどんよりしたな。
〈有島武郎は有夫の婦人記者と心中死する。その新たな悲しみから更に晶子のいい歌がたくさん生まれている。〉有島、エグ過ぎる。読んでないが、彼の小説に感動してなくて良かった。その時の想いをネタに「いい歌」を作った晶子にも、歌人としての業を感じる。「いい歌」を作ればそれでいいのだろうか?
2021.7.9.~11.Twitterより編集再掲