角川『短歌』2021年2月号
①「歌の名言」高野公彦〈西行の歌には「虚と実の半ばにさまよふ言葉と心」がある。ゆえに塚本邦雄は、人々の一面的な見方を笑殺しつつ、西行の歌を笑殺できないのだ、と久保田淳氏は言う。〉塚本も認める、西行の歌の虚と実。時間を超えた考察に惹かれる。
②眼球が汚染されたるヒヨドリのそこだけ光り続ける眼よ 前田康子 原発事故の当時、放射能は見えないからこそ恐ろしい、という論調があった。この歌は放射能を可視化する、放射線像の展示を詠っている。可視化が新聞の一面を覆うようなニュースにならないのは、なぜだろう。
③内山晶太「歌壇時評」書き言葉の話し言葉化が発生している、という見立てに対して、〈(TwitterやLineなどの)新しいシステムの流入によって声(話し言葉)が文字(書き言葉)へ置き換わっている、と考えることもできるだろう。〉〈おそらくもっとも単純明快なものは、その源が声だったのか、文字だったのかというところなのではないか。〉用語の話はどんどん変化している。文語口語だけ話していても追いつかない。実際に使われている言葉の変化は不可逆的だから、それを論じる者も意識を変革していかないといけない。とても刺激をもらった文。
2021.2.23.Twitterより編集再掲