『COCOON』33 September2024
①死別より離別はもつとつらいかも わかつてはゐる 骨を見たので 片岡絢 父の死を詠った一連。心の動きのままに言葉が継がれていく印象だ。結句に衝撃力がある。諦めがつくということか。
②父が死ぬことがどんなにかなしいか父が死ぬまでわからなかつた 片岡絢 心をそのまま言葉にした歌。肉親の死のような事態では、技巧を使ったり詩的な表現に昇華したりはなかなかできないものだ。ストレートに詠んだ方が、読者も自分の思いを重ねて共感できる。
③夜光貝の螺鈿を撫でる生まれ直しても幾度も姉を生きねば 小島なお 螺鈿は実際に撫でているのか、視線で撫でるように見ているのか。上句の美しく精密な工芸品と、関連が無いような下句の感慨。来世もまたその次も姉として生まれ、生きるのだろう。諦めのような気持ち。
実は結構、姉歌、長女歌が好き。それも姉妹の姉、という立場で詠まれた歌が好き。私にとっては分かる分かるの最たるものだ。
④不機嫌は意見を通りやすくさせことあるたびに不機嫌な人 柴田佳美 不機嫌になることで相手をコントロールしようとするフキハラ。この歌はまさにそう。何でもハラスメントとになると言う人もいるだろうが、言語化しないとその現象が存在することすら分からないものだ。
⑤病む祖父は見舞ひのわれを励ませり昔どほりのおほきなこゑで 岩崎佑太 祖父の見舞いに行ったら、心配している主体の顔を心配して、祖父が励ましてくれた。病人に却って励まされるということはあるものだ。祖父が認知に問題があるらしいことで一層歌が深く響く。
⑥睡眠の深いところにいるっぽいきみは閉じきれない目も口も 松下誠一 睡眠の深いところにいる時は普通、口はともかく目は閉じ切るように思うが、目も口もうっすらあいているところがどこか怖い。境界線上にいる感じ。「いるっぽい」という推測の話し言葉が活きている。
2024.11.11.~12. Twitterより編集再掲