『半券』006 2024.9.
①紫陽花が眩暈のように咲いているあなたを過不足なく愛したい 山本夏子 他者を過不足無く愛することはできない。愛はいつも多過ぎるか少な過ぎる。おそらく受け取る愛も。主体も多分わかっている。「眩暈」の画数の多さが花弁の密度と重なり、くらくらする感じがある。
②梔子のつめたさに肘ふれているイメージで嘘を通すあなたに とみいえひろこ 梔子は花も葉もつるっとしていて、触れたら冷たそうに見える。そんな梔子の冷たさに肘が触れている気持ちで嘘をつき通す。関係性の微妙なすれ違いとその違和感が一連の底流にあると思った。
③目が合ったやうな気がする まんじゆしやげ かすり傷でも一度は拭ふ 濱松哲朗 曼珠沙華に人の気配を感じている。誰かから受けた傷を「かすり傷」としながらもその傷に手当はする。一字空けで区切られたそれぞれが、関連あるような独立しているような、不安定さが魅力。
④座談会「わたしとお菓子」
山本夏子・とみいえひろこ・竹内亮の座談会。とても楽しく、読んでなごんだ。誰が出席してもその人の「お菓子観」はかなり語れるだろう。お菓子も文化だなーと思いつつ読んだ。私の第一歌集に「お菓子の歌が多い」と言われたこと等も思い出した。
2024.9.14. Twitterより編集再掲