緑色の星空が広がっている
楓の若葉は星空みたい。
キラキラ光るような萌黄色から日差しが注ぐ。
透明感のある緑色に心惹かれて、見つけては立ち止まる。
一葉一葉が星みたいで、仰ぎ見ると星空が広がる。
小学生の時に昼間の月を見つけて驚いたように、昼間の星空を見つけて驚いている。
8歳くらいだったか、いつもは集団下校なのに、その時だけ一人で帰っていた。
確か忘れ物を取りに、学校に戻ったからだ。
袋をぶらぶら振り回しながら、とぼとぼ歩いていた。
一人で帰る道は長くて、心もとなかった。
そのとき、振り上げた袋が手を離れて上に飛んでいって、
「あっ」って目で追いかけたら、月があった。
はじめ「なんだろう」って思いながら見ていた。
ぼんやり光っている。
少しして「あ、月だ」ってわかった。
前から知っていたかどうかもおぼえていない。
ただ、一人で昼間の月を見たことだけおぼえている。
その時に、「一人で帰るのも、いいな」って思ったことも。
うんと小さい時から一人遊びが好きだった。
ぶつぶつ言いながら、おままごとをしていた。
近所に、姉と同い年の子はいたのに、私の同い年の子はいなかった。
姉は私を遊びに連れていきたがらなかった。
引っ越して、半年だからと幼稚園に行かず、小学校まで一人で過ごした。
寂しかった思いもない。
小学校に入って、いつの間にか「集団」に慣れていた。
そこから「ひとり」をもう一度つかんだ時なのかもしれない。
悪くないなあって。
生意気にも、思ったのかもしれない。
そういえば、いつの間にか一人遊び時間がふえていった。
ぼんやりして、本を読んで、昼寝して、花を摘んで、またぼんやりして。
あの時間が好きだった。
今見ているのは昼間の星。
見上げると本当に星空。
こんなに広がるんだなって、見つめる。
緑だけど、赤い若葉もあってせめぎ合う。
この紅は、何?
静かな時間に入り込んでくるのは。
情熱?
妄想?
それとも、人?
いつかはすべて真っ赤に染まってしまうのだけど。
今は緑の星空に浸っていたい。
楓の木漏れ日って時どき星形になるよね。
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