ふらんすへ行きたしと思えども🌿どこへも行けずとも
こんな美しい季節にどこへも行けない…。行きたしと思えども行けなくても、せめて心慰める何かを探したい。
萩原朔太郎の「旅上」という詩が好き。
初めのフレーズを口ずさむと旅に出た気分になれる。この季節はとくに。
ふらんすへ行きたしと思へども
ふらんすはあまりに遠し
せめては新しき背広をきて
きままなる旅にいでてみん。
汽車が山道をゆくとき
みづいろの窓によりかかりて
われひとりうれしきことをおもはむ
五月の朝のしののめ
うら若草のもえいづる心まかせに
でも今は、「きままなる旅」にも出られず、「山道をゆく」汽車にも乗れない。朔太郎の時代より、ふらんすはとても近くなったはずなのに、またとても遠のいてしまった。
東京の緊急事態が解除されたとしても、まだ旅に出る気にはなれない。
行っている人を恨むのもねたむのもやめよう。私自身がまだ旅に出る気にはなれないのだ。
近くの公園の緑を見て心慰める。
行かなくてはいけない仕事があって、週に一、二度自転車で出社している。
出社途上で、公園を通る時に見る花。
バラが咲いている。黄菖蒲が咲いている。つつじも、鈴蘭も。
汽車に乗らずに自転車に乗って、若草を見る。
旅ではない非日常が続いている。
せめて今度会社に行くときは新しきブラウスでも着ていこうか…。
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