台風は荒れるだけではなくて深く沈む
台風が来ている。
年々激しくなって、各地の状況も不安だ。
息子が小さい時に、台風で早めのお迎えに向かったことがあった。
レインコートを着せて、傘は持たせずに身を寄せ合って帰った。
雨の日ははしゃいだり、遊ぼうとしたがる息子も、この時ばかりは神妙な表情で。
「先生に気をつけて早く帰りなさいっていわれたの。みんな、大丈夫かな? おうち着いたかな?」とお友だちを気遣う。
「うん、大丈夫。みんな、うちより早お迎えに来ていたでしょう?
遅くなってごめんね」
「ううん、大丈夫。・・・ちょっと、こわかったけど。もう大丈夫」
ごめんね~。
夫は遅い。
かんたんなごはんを作っている間、外を見ては、ひっそりと戻ってくる。
わがままをいわないけれど、くっつきたがって。
急におしゃべりを始めたかと思うと、黙り込む。
ガタガタと窓を揺らす風の音。
激しい雨がガラスに縦の模様をビシビシつけている。
雨戸のないマンションだった。
お風呂に入って、早めに寝る。
ぎゅっとしがみつくように、くっついてくる。
蒸し暑く、外の雨音は大きいのに、妙に静かな、夜。
守るものがあると強くなる。
そういうけれど、強くなったのではなく、やることを済ませなければならないだけだった。
腕の中の温かいものが、むしろ頼もしかった。
みやこしあきこさんの『たいふうがくる』。
この絵本を知ったのは、息子がもっと大きくなってからだ。
台風の前の不安。早めの下校。次の日は海に行く約束。
台風が来て、通り過ぎていく。
モノクロームで描かれた世界が、子どもの気持ちも台風の風も見事に表現している。
最後のページの水色が美しい。
翌朝。
台風一過の青空。
息子は前日のことなど忘れたように、いつも通りに寝坊で、ゆっくりで、ぼんやりした、笑顔で。
ほっとする。日常に。
今、台風は自分の中にもある。
激しくたけり狂ったり、突然収まったように見せて、また風が咆哮(ほうこう)をあげたり。
そうかんたんに通り過ぎてはくれない。
考える、考える、考える。
何度も。
落ち着いたかと思うと、またよみがえってくる。
今の自分、将来の姿。
限界のある、自分の体や力や時間。
認知症の母のこと、受験生の息子、自分の体調、仕事・・・もっと先。
でも、その台風を受け止めて。
揺らぎながら、一歩ずつ。
・各地の被害が少ないことを祈っています。
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