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蹲踞で筋トレ?
今日は蹲踞の話をしましょう。
蹲踞(または蹲)はツクバイと読み、手水鉢(ちょうずばち)のことをいいます。大辞林によると茶庭などに据える手水鉢で、つくばって使うように鉢を低く構え、左右に湯桶・灯火を置く湯桶石・手燭石を配し、使い手の乗る前石を据えるのが定式。茶室では心身の塵を払うものとして重視する……とあります。
ツクバイは祖父母の家の庭にあったので、名前も聞いたことあったし(でも漢字は知りませんでした)、形も知っていたし、もちろん見たこともある……けれど、それは目の前の景色の隅にあるだけで、どうやって使うものなのか、実をいうとお茶を習うまでワタシ自身はよく知りませんでした。ワタシのなかでは庭の飾りか置物、くらいのイメージだったのかも知れません。
お茶のお稽古にうかがった時に、一番最初に使い方を教わったのがこの蹲踞で、先生のお宅では中庭に置かれた手桶と蹲踞柄杓がその役割を担っていました。
中庭といっても手桶は縁側からすぐのところに置いてあったので、縁側にひざまづいて使うのです。お茶のお稽古場ではずっとこのスタイルだったので、いわばこれがワタシのデフォルトになったのです。
ところが初釜でうかがった先生の別宅の方では蹲踞はお庭にありました。お茶室からほど近いところにあり、まさに心身の塵を払ってお茶室に入る、ちょうどその通り道にあるという感じです。
先生の別宅に伺うときは初釜かあるいはお免状の相伝等の時。着物を着て、露地草履を履いて、蹲踞の前にしゃがむ。
袂は汚したくないのでヒラヒラさせないようにして。手を洗い、口をゆすいで濡れた手でハンカチを探すと着物にも水滴がついてしまいます。汚したくなかったので、ハンカチは吸水性のよいガーゼ素材のものを胸元に取り出しやすいように入れて……色々と知恵を働かせました。
お茶といえば着物で正座、はイメージしやすいのですが、まさか庭でしゃがむことになるとは想像もしていませんでした。しかも足元は露地草履。初めて見た時、ワタシにはそれは草鞋に見え、一緒にいた友人と「この草鞋、歩きにくいよね」なんて話していました。「これ、ワラジじゃなくて、ゾウリだよ」と誰もツッコミを入れなかったのはその時そこにいた誰もが知らなかったからです(大辞林によると草履は鼻緒のついた平底の履き物。草鞋は藁で編んだ長い緒のついた草履に似た履き物だそうです)。
あとで先生にうかがうと『テレビの時代劇で見た草鞋に見えたかも知れないけど、あれは草履』と。そうなのです、これは露地草履といって腰掛け待合からお茶室まで歩く時に履くものでした。この草履を履いて蹲踞の前にしゃがみ、ぐらつかないようにして水を使わせて頂く。まさに体幹トレーニングです。
そういえばお茶室でも立ったり、座ったり。お道具を持って歩いて、また立ったり座ったり。これもトレーニング的な動きだなぁと今改めて思います。お茶人の皆さんはご長寿の方が多いですし、お抹茶のビタミンCにカテキン、そして筋トレ的立居振る舞い……この辺りも関係あるのかも……なんてことを以前友人と話していたことを思い出しました。
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見出しイラストはみんなのギャラリーからお借りしました。sou_by_umudesignさん、ありがとうございます!
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