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【読書感想】さざなみにのまれたい
遠藤周作の『海と毒薬』を読んだので感想を少し。
戦時中のある病院での事件を題材とした作品。
構造的には現在→過去というように勝呂と言う人物を不気味に描いたあとでこんなことがあった、と探偵小説でいうところのトリックを明かしていくスタイルになっています。
まずは「私」が勝呂に出会い、戦争の狂気に触れていた人たちへの嫌悪のような感情が描かれ、読者にもそれが伝わってきます。
そして、過去を回想するかのように勝呂の話が後に続きます。
その過去の話も数層になっており、1人の看護婦、勝呂と同様に研修医の戸田の語りも挿入されています。
絶対的な神を持たない、日本人の責任の所在を説いたセンセーショナルな一作。
特にこの責任という点では戸田の話が1番感じました。
あ。
勝呂は日本人的断れなさを体現していますし、看護婦は日本人的諦念を表現しているのかもしれないですね。
「私」も日本人的好奇心(直接聞かずに勝手に踏み込む感じ)があるように思いました。
どれだけこの「日本人的」が通用するかは置いておいて、すぐ身近で、もしかしたら自分自身となり得る姿です。
映画はまだ見れてませんが、いずれ必ず見たい作品のひとつです。