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[小説:紹介] スティーヴン・キングの小説 (2) [80~85年]
ネタバレ基本的になし
スティーヴン・キングの小説を紹介します。
第二段は1985~85年に発表された分です。
キング作品には作品間のリンクも多々あるので、それもネタバレしない程度に紹介したいです。
◎スティーヴン・キング
◎リチャード・バックマンにとは
キングの別名です。
キングは一時期、正体を隠してこの名前で本を出してました。
途中でバレちゃったんだけどね。
◎1980~85年に発表された作品紹介
ファイアスターター
1980年発表。
絶版なのかな…。
パイロキネシスものです。発火できる超能力。
ちなみに、パイロキネシスという言葉この小説で最初に用いられたとされています。
薬物実験を受けた男女の間に生まれた娘チャーリーに念力放火の力が備わっていた…。
今ではわりとよくあるパターンかもですが、80年では斬新なアイディアだったのかな?
しかも、実験で使われた薬の名称が “ロト・シックス”。
ズコーッてなるけど、偶然ですw
若干7歳のヒーロー。
彼女はこの年齢で家族を守るために被験者を極秘に管理したい組織と戦わなければならないのだ。
キングの作品にしてはわりとストレートな内容だし、登場人物も少ないので読みやすいと思う!
このお話はドリュー・バリモア主演で映画化してるけど見てないです。
なんかすごいB級になってる予感…。
クージョ
1981年発表。
これも絶版かな??
《キャッスルロック》で一番有名な犬の話。
クージョは大きな心優しいセントバーナードだったのだが、コウモリにひっかかれて狂犬病をうつされてしまう。
徐々に発狂してやがて主人を襲ってしまう。
そこへたまたまやってきた母子がクージョに狙われるはめに…。
炎天の中で故障した車に閉じ込められてしまった親子の運命。携帯電話もない時代だよ。
閉所でジワジワと死に向かっていく心情をひたすら描写する狂気的な長編なのである。
ちなみに、キャッスルロックはキングの物語に度々登場する小さな町だ。
クージョの名は他の物語でも度々出て来るので気になっている人もいるかな。
それからこの物語に登場する保安官なども他のキャッスルロックもので名を聞く人だったりするので、手に入らなくなる前にぜひ読んでおいてほしい一冊だ。
見てないけど、映画化もしてる。
ロードワーク
1981年発表。
リチャード・バックマン名義で出した本です。
実はこれ読んでないです。
読めたら感想書きます。
サイコ・サスペンスだそうです。
恐怖の四季
1982年発表。
春夏秋冬をテーマにした四編の中編集。というかオムニバスに近い。
収録されているタイトルを見てもらえれば解るけど、めっちゃ豪華な中編集なのだ。
しかもね、それぞれが絶妙に関係してるんだよ。
・春は希望の泉『刑務所のリタ・ヘイワース』
映画 『ショーシャンクの空に』 の原作です。
有名な話なので最初に書いてしまうが、これは脱獄の物語である。刑務所の調達屋で情報通の囚人レッドが、ある伝説の男アンディーについて回想することで物語は進む。
映画と原作ではスポットをあてた場所が違っていてその紹介をちょっとしたい。
映画では囚人たちの人間模様にスポットが当てられ感動作として扱われることが多いかと思う。この映画を一番に選ぶ人も多いよね。
原作はもっと違ったところにスポットが当たってる。
キングは、調達屋レッドという仮面をつけてアンディー伝説を語りつつ、実は、刑務所という特殊な環境下での人生を書きたかったのだと思う。数年服役するような話ではなくて、人生の半分以上を刑務所で過ごす人の話を。
溢れかえるローカルルールと裏技の数々。刑務所の中でタバコを調達するにはどういうことをすればいいのか、看守と仲良くなるにはどうしたらよいのか。何が卑怯で、何が英雄的行動とされるのか。
そして刑務所の中には、本物の極悪人からコソ泥までいろいろなタイプの人間がいる。社会からつまみ出された人間の集団でも、人が集まればそこには一種のコミュニティが形成される。囚人たちの社会。外界とは勝手が違うけれどそこにも立派な人間関係がある。
これは膨大な取材なくしては書けない内容だ。決して長編の余力のみで仕上げたおまけ中編ではない。とっても面白いドキュメンタリーを読んでいるようだった。
なお、キングの他作品でも “ショーシャンク” という言葉が刑務所の代名詞として出て来るよ。
・転落の夏『ゴールデンボーイ』
『刑務所のリタ・ヘイワース』 を読み、すがすがしい感動に包まれた後、読者は破滅の物語 『ゴールデンボーイ』 を読まされる。
だけどがんばって読んでほしい。なぜなら続けて読んだ人にしかわからない仕掛けがあるからだ。
『刑務所のリタ・ヘイワース』と同じ著者が書いたとは思えないほど、その世界観は変貌する。
『ゴールデンボーイ』 は、人間の中に潜む複雑怪奇な光と闇を、限りなく単純な設定で見事に表した傑作である。
主な登場人物は、裕福で優等生の少年トッドと、隠れて暮らすナチ戦犯のドゥーサンダーの二人だけ。それぞれ表の顔では普通の市民としてアメリカに暮らしているがその心の闇は奥深い。
少年の中の光と闇。
老人の中の闇と光。
少年と老人。
この入り組んだ3重のコントラストが織り成す泥沼劇。それが 『ゴールデンボーイ』 という作品だ。正直言って後味が嫌~な感じなので、落ち込んでいる時には読まない方がいいかも。
ショーシャンクとの繋がりもあり。
・秋の目覚め『スタンド・バイ・ミー』
原題は 『THE BODY』。<死体> である。
言わずと知れたキングの代表作。キングを知らなくても、映画 『スタンド・バイ・ミー』 を人生の中で大切な1本として挙げている人も少なくない。
私も、キングを知る前に映画 『スタンド・バイ・ミー』 と出会っていて、生まれて初めて触れたキング作品がこれである。
おそらく、『スタンド・バイ・ミー』 こそが、キング作品中で最も有名な作品かと思われる。そんなわけで、ここでわざわざこの物語の内容を説明するのはやめにした。
一つだけ、特記しておきたいのは、この物語が ≪キャッスルロック≫ を舞台にしているということである。
『スタンド・バイ・ミー』 は、あまりに有名で、単独で扱われれることが多いが、本当はそれではもったいない。
少年らが辿って行った線路が極悪ピエロが君臨する 『IT』 の舞台 ≪デリー≫ と繋がっているように、この物語は、キングの奥深い壮大な世界とつながっているのだ。
それからこの短編集を全部読んだ人にしかわからない真実も知ることができる。
映画ファンもぜひ、これらの裏のつながりを探る旅に出てほしい!!!
・冬の物語『マンハッタンの奇譚クラブ』
『恐怖の四季』 で唯一映画化されていないお話である。
不思議なクラブに行って、不思議なお話を聞くという内容。
どんな不思議な話か概要を説明すると、そのままネタばらしになってしまうので、まあとにかくまずは読んでみて、としか言えない。。。
バトルランナー
1982年発表。
リチャード・バックマン名義で出した本です。
シュワルツェネッガー主演の映画がわりと有名なので知ってる人もいるかも。
舞台は西暦2025年。80年代の作られた近未来SFの舞台がリアルタイムになってしまう現象がここでも!!
管理国家と化したアメリカで、都市は失業者があふれるデストピア的な状態に。
そんな中で、人々の娯楽はテレビで流される残酷なクイズやげゲームだけだった。
難病の娘をすくためにやむなくこの番組に出演した主人公が体験するはちゃめちゃなデスレースのお話。
映画と原作では設定など結構違うけど世界観はだいたい同じになってる。
クリスティーン
1983年発表。
絶版のようだ…。
いじめられっ子のアーニーは17歳。唯一車の整備だけには自信があった。
そんな彼が出会うのがボロボロの’58年型プリマス・フューリー。
この車に一目惚れしたアーニーは親の反対を押し切ってバイト代をつぎ込んでこの車を購入する。
アーニー車にクリスティーンと名をつけて溺愛するんだけど、徐々に車に心を支配されてしまう…というお話だ。
アーニーが徐々に邪悪な者へと変わっていく様が悲しき怪物が生まれる過程を見ているようで、とてもつらい。
『はてしない物語』のバスチアンのように、『AKIRA』の鉄雄のように、弱き者が急に巨大な力を得てしまって自我崩壊する物語はたくさんあるけど、クリスティーンはその中でも特に悲しい物語なんだ。
鬼才ジョン・カーペンターによって映画化している。
見てない…。
ペット・セマタリー
1983年発表。
映画も有名かな。セマタリーというのはセメタリー(墓)のこと。
作中のペット墓地の看板を子供が書いたのでスペルが間違っている…ということでタイトルもそのままなのだ。
ゾンビものである。はっきり言って怖い。後味も悪い。
死んだペットを埋めると翌日、何か違うものにはなるけど帰って来る…という墓に、我が子を…。
い、い、いやぁぁ~。
タリスマン
1984年発表。
ピーター・ストラウブと共著の本です。
絶版ですか…。
ジャンル的にはダークファンタジー。
主人公のジャック・ソーヤー12歳は病気の母を救うには “タリスマン” が必要だ、と偶然出会った不思議な黒人スピーディに教えてもらって旅に出ることになる。
ジャックは現実世界と異世界を行き来しながら、タリスマンを探す旅を続ける。異世界ものに慣れ親しんでいる現在の日本人にも受け入れやすいお話かも。
主人公と同じくらいのティーンズに読んでほしい物語。
『指輪物語』へのオマージュや、キングの超長編『ダークタワー』をなぞるような展開がかなり萌える。
続編に『ブラック・ハウス』があるけど、そっちは結構グロいホラーになっている。
人狼の四季
1984年発表。
毎月満月の夜に、小さな町で繰り返される惨劇。
恐怖に怯える大人たち中で、十歳の車いすの少年だけが犯人の正体に気がつき人狼と戦う物語。
バーニー・ライトスンという怪奇イラストレータ―のイラストと共に綴られるヴィジュアルブックとなっている。
絵に対して詩に近い文章がついてるって感じかな。抒情詩のような。
痩せゆく男
1984年発表。
リチャード・バックマン名義で出した本です。
呪術系のホラーです。
ジプシーの老女をひき殺してしまった主人公。誠意を見せなかったために、どんどん痩せるという呪いをかけられます。
…これがただ痩せるだけじゃないのだ…。ネチネチと、ジワジワと、着実に死に至らしめられる粘着系の呪いなのだ。
なんか主人公にまったく同情はできない後味悪いお話です。。
骸骨乗組員
1985年発表。短編集です。
日本語訳版では『骸骨乗組員』、『神々のワードプロセッサ』、『ミルクマン』の三冊に分冊。
キングの短編はそこまで込み入った物語は期待できないけれど、奇怪さは抜群で楽しめます。
それから他の長編のスピンオフ的なお話が時々あるので要チェックです。
キング作品を読めば読むほど、彼の書いたものを隅々まで読みたくなるのですよ。
『霧』は映画化されて結構ヒットした。『ミスト』です。
『ノーナ』はキャッスルロックが舞台で『スタンド・バイ・ミー』のエース・メリルとバーン・テシオの名が出て来る。
他にも何かあるかもだけど忘れた…。
以上です。
この中で特におススメは『恐怖の四季』です。
映画が好きな人にもぜひ四編全部読んでほしい。新たな発見があるはずです。
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