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劇伴は新たな音楽の可能性だ!!ハートカンパニー「音楽熱想」第961回、サイキック(斎藤滋・菊田大介)対談より

映画やテレビドラマ、演劇、アニメなどの中で流れる音楽を「劇伴」と言います。こう書いて「げきばん」と読みます。何だBGMの話か…と思った方もおられましょうが、この劇伴が我が国における新たなコンテンツビジネスの鉱脈になるかも知れません。今回はそんなお話をします。

ハートカンパニーが主催したオーケストラコンサート

ハートカンパニーの「音楽熱想」サイキックとは

このテーマにて熱く語るのは、アニメ・ゲーム関連の音楽制作で名を馳せた株式会社ハートカンパニーの社長、斎藤滋氏と、音楽制作ブランドElements Garden所属の作曲家、菊田大介氏です。斎藤と菊田でふたり合わせて「サイキック」。ハートカンパニーがstand.fmにてお届けする番組「音楽熱想」土曜日レギュラーの雑談ユニットです。

「涼宮ハルヒの弦奏Revival」その新たな試み

今回この記事で取り上げている「音楽熱想」第961回放送は、今年1月20日(土)に行なわれた人気アニメのオーケストラコンサート「涼宮ハルヒの弦奏Revival」にてハートカンパニーが実施した取り組みがテーマとなっております。すなわち、以下の通りです。

1.アニメ制作時に作られた劇伴の譜面を元に、オーケストラコンサートを行なったこと(音楽で掘り起こす過去作品の価値と当時の思い出)

2.アニメの映像を編集し、演奏と共に大きなスクリーンで映し出したこと(権利関係などをクリアしてこれが出来るのはハートカンパニーの強み)

これらについては私のnoteでも触れております。
よろしければ。

ということで、今回は番組からの引用が中心となりますが、音楽制作会社であるハートカンパニーの斎藤社長と作曲家の菊田大介氏による対談を元に、アニメ劇伴の持つ可能性を紐解いていきたいと思います。

<本記事における対談部分の記述について>
・対談の引用については敬称略とします。
・台詞については100%放送に忠実ではなく、見やすくするために相槌などをあえて省いている箇所もございます。
・聞き取れなかった部分については「??」としています。

① 劇伴はアニメ業界における新たな金脈?

菊田:今日びね、サントラを出すのも大変じゃないですか?
斎藤:そうなんですよー。サントラCDなかなか出しづらい世の中になっちゃったからね。
菊田:サントラを出すのもいま厳しい状況で、まぁ特典とかなったりしますけど…。なんかその、劇伴をちゃんと聴くみたいなことって、まぁ減ってきていますよね。
斎藤:そうなんですよ。
菊田:ねぇ、ちゃんと必要でさ、ちゃんと作ってんのにさ!!意外と…。
斎藤:そうなんですよ。
菊田:そうそうそう。
斎藤:レコード会社各社さんもやっぱり、フィジカルのCDって売れなくなってきてるので作らない傾向があるし、特にサントラっていうのはね、歌と比べるとよっぽど作品が好きじゃないと買わないものなので。
菊田:そうなのよ。
斎藤:作れるけど数がはけないとなると、レコード会社としてはね、赤字になっても良くないから。
菊田:そうなんだよねー。
斎藤:「デジタルだけの配信にしなきゃ」みたいな発想になるのは、まぁ、企業の経営しては当然の判断だったりするんですけど、でも音楽作ってる方としては何らかの形で劇伴っていうものがね、世の中に残ってほしいし、もっとたくさんの人に聴いてほしいって思いはあるわけですよ。
菊田:そうなんですよ、だから我々も作ってはいるんだけど、意外とね、サントラが出ることってほぼ最近はマジでないんで。
斎藤:そうなんです。
菊田:昔は結構ちゃんと出てたんだけど、やっぱいまの時代どうしてもね。なかなかっていう…。
斎藤:そうなんですよね。
菊田:だから、コンサートとかで劇伴に着目して、それの活かし方をちゃんとやってるのは凄いなと。僕らとしては嬉しいと思いますね。
斎藤:これはハートカンパニーとしての大事な事業だと思ってまして。売り上げ作りたいのももちろんあるんだけど、いち音楽人としてクリエイターの皆さんが作ってくれた音楽、プロデューサーの僕たちが汗水たらしていろいろ頑張った結果の音楽が、放送されておしまいじゃなくて、そのあとも残っていってほしいし、音楽を何度も演奏することで作品を何度も味わい直せるから。アニメーションとかゲームって新作を作るの大変じゃないですか。
菊田:うーん。
斎藤:音楽は譜面があればさ、映像があれば何度でも見返せるし、という楽しみ方が出来るので、僕はもしかしたら今後のアニメーション業界における金脈を掘り当ててるのかも知れないっていう気がしてます。

サントラってそんな売れてないんだ…知らなかった。

私は昔からゲーム好きでして、ゲームミュージックの音楽アルバムを買っていた流れで好きなアニメのサントラ集にも手を出していたので、あぁいうのもっと売れてるのだと思ってました。

とりあえず部屋にあったカセット。あまり持ってなかったな…

ただ自身を鑑みても、確かにここ最近声優の歌のアルバムは買っていても、アニメのサントラは久しく買っていないような気がします。そうか、私みたいな人が増えたためなのか…?

私的感覚ながら、昔に比べたらアニメ趣味が割と大っぴらに公言できるようになり、それに伴ってアニメ作品の制作本数も増え、グッズなどの販売も充実してきたように思うのですが、それなのにアニメサントラが売れなくなってきているというのは私からしてみたらとても意外です。いや昔から売れてなかったよって言うんならまだ分かるのですが。

劇伴を作っている方の立場に立ってみたら、確かにやるせないことでありましょう。苦労の末に制作した音楽が作品の放映終了と共に聴かれなくなってしまうというのは如何にも残念です。そこに何らかの形でスポットを当て、その音楽を聴いてもらうことで楽曲もアニメそのものもあらためて楽しんでもらうことが出来れば、こんないいことはありません。さらにそれが新たなビジネスチャンスを生み出すとすれば、ファンも作曲家も制作会社もみんな喜ぶ。三方一両損ならぬ三方良しというわけです。

過去作品の劇伴を現代に蘇らせること。それはアニメの音楽に長年携わってきた斎藤社長の作品に対する愛と作曲家へのリスペクト。そしてハートカンパニーのアニメ音楽制作会社としての使命感によってこれを具現化したと言えるのかも知れません。

②  演奏に映像を背負わせることのハードル

斎藤:これね、どの会社もやってなかったんですよ。一部、劇伴を大事にしようって言う動きはあるんですけれども。作家さんもいらっしゃるんですけれども。たとえば作家さんご本人が劇伴の演奏会やりますってやられることもあるんですけれども、そのときに、演奏はできるんだけれども、映像を背負えなかったりするんだよね。
菊田:まぁねー。
斎藤:権利が、とか、製作委員会が、みたいなのがあったりするので。
菊田:あぁー。
斎藤:そこの壁を突破するのが、ハートカンパニーの新しいところで。
菊田:そうねー。
斎藤:後ろに映像をちゃんと背負うという状況を作り出せるんですよ。ハートカンパニーがやると。
菊田:そうねー。
斎藤:何でかっていうと、そのー、めっちゃ自慢ですけど、人脈とか、アニメ業界における関係値とかがいろいろあるからですね。
菊田:そういうことですねー。
斎藤:これ他の会社じゃたぶんできません!
菊田:そうねー。何かそこの部分は…映像もあって、その、例えば昔のアニメとかを追体験できるじゃないですか。
斎藤:うん。
菊田:いいっすよねー。
斎藤:製作委員会としても、こういうライブをいっぱいやらないのは何故かっていうと、赤字になるリスクあるかもっていうのがあるし、あと「作るのが大変なんじゃない?」っていうのもあって。「譜面起こすお金は?」とか、あと「後ろに流す映像ってそれ編集誰がやるんだよ?」っていう問題があって…。
菊田:まぁまぁまぁまぁ…。
斎藤:その~、大変なんですよ、あれ作るの。名場面をちゃんと集めて切り貼りするっていうのはすーごい大変なんですけれども、それが出来るようなチームを作ったハートカンパニーは、一歩先行ってますよ?
菊田:そうね、だからそこの部分がやっぱネックになりますよね。その、たぶんフィルムスコアリングとか…例えば普通の劇伴って別にちゃんと ??(編注:すみません聞き取れませんでした)のスコアになってないんで、そこをまず編曲しないといけない。オーケストラアレンジしないといけない。っていうところと、プラスその映像を作るっていうところはハードル高いっすよね。
斎藤:高いです。高い高い。
菊田:やろうと思えばやれるのかもしれないけど、やっぱりその、一定のノウハウが必要だから、そういう人に頼まないといけない。
斎藤:そう、アニメへの愛が必要だし、アニメを理解する時間が必要だし、分かってる映像にならないといけないよね。
菊田:まぁね、うん。だってもう既にアニメを観込んでる、アニメを愛してる人が来るわけだから。
斎藤:そうです。ファンの目が一番厳しいので。「この映像、何この編集全然分かってないじゃーん!!ダセー」って言われたら台無しなんですよ。
菊田:まぁそうなのよねー。
斎藤:ただウチのチームは「ハルヒ」にしても今度やる「らき☆すた」にしても、いろいろ工夫をしてですね、上手いことやってるので。

「これ他の会社じゃたぶんできません!」…って、すげぇ自信。この後の放送でも斎藤さんは

映像もセットでできるっていうのは、これはウチだけ!!その交渉する窓口を持っているのはウチだけです。人脈とか。あとノウハウ。これはオンリーワンなんですよ。世界のひとつの花ですよ。

って言ってますから、その自信のほどが伺えます。

この対談内容をあえて細部まで載せたのは、斎藤さんの自信の根拠をお伝えしたかったというのもあります。演奏のバックにBGMを流す。一見何でもないようなこと(失礼…)ですが、実際にビジネスベースで考えると様々な壁が立ちはだかるのが容易に想像できます。

第一の壁、権利。

テレビや映画で放送されたコンテンツは、勝手にどこででも放映して良いものではありません。ほとんどすべての素材には、次のような注意書きが添えられております。

これは「劇場版 涼宮ハルヒの消失」のパッケージ裏ね。
禁則事項…もとい、禁止事項についての記述にはこうあります。

このディスクを無断で複製、放送、上映、公開演奏、レンタル(有償、無償を問わず)、インターネットによる公衆送信することは法律により禁じられています。

「涼宮ハルヒの消失」パッケージより

上映どころか、無断で公開演奏もダメだってさ。

これは脅しではなく、現実に「ハルヒ」シリーズと同じKADOKAWAのコンテンツを無断アップロードしたとして逮捕者も出ております。人によっては以下のニュース(インターネットによる公衆送信に該当)が記憶に新しいところでありましょう。

では、貴方が特定のアニメ映像をどこかしらで上映したいとき、どこの誰にお伺いを立てれば良いでしょうか?そして一体いくらくらい払えば、それは可能になるでしょうか?

KADOKAWAの場合、このようなお問い合わせ窓口があります。が、さすがに興味本位でこのようなことを問い合わせるには忍びない。そもそも問い合わせるところはホントにここでいいの?何て聞き方すればいいの?見積りだけ取るんじゃ申し訳なくない?それに製作委員会とかには根回ししなくていいの?いやむしろアニメなんだからまず京アニさんなんじゃないの?あー、もう!!こういうこと、斎藤さんに聞けばそれなりに確度の高い回答が帰ってくるんだろうなぁ…。

そう、まさにそのように思ってしまうことこそが、斎藤社長がこれまでに積み重ねてきた業界の経験値なのですよ。

特定のコンテンツを任意の会場で上映したい。その際にどこの誰にどんな問い合わせをすればいいか。おそらく斎藤社長なら(少なくとも斎藤社長が関わられた範囲で)それらに対する回答を持っています。と言うより、誰もが「この人に聞けば間違いない」と思っています。アニメ・ゲーム業界にてコンテンツプロデュース業として積み上げた信頼と実績。これは強いですよ。むしろこの方の存在自体がハートカンパニーのコンテンツです!!

第二の壁。誰がやるの。

権利の壁を無事突破できたとします。じゃあ次はアニメ素材を演奏する音楽の尺に合わせてどう切り替え、編集していくか。映像とは言えそのとき鳴っている劇伴のタイミングに合わせてより効果的な映像が流れていなきゃ意味がないことは対談で述べられている通り。これはもう、演奏+映像じゃなくて、むしろ映像も演奏の一部みたいなもんですよ。すなわち演奏+演奏みたいなもんですよ。

誰がやるの?

「涼宮ハルヒの憂鬱」は全28話です。だいたい30分もののアニメ作品は24分映像のことが多いので、24分×28話=672分=11時間12分です。これにあと劇場版「涼宮ハルヒの消失」も加えるなら、あれ2時間 44分だそうなので、足すと13時間56分。まぁざっくり言っておよそ14時間ですな。

誰がやるの?

14時間ある映像を全部見る。それもただ見るわけじゃない。演奏される音楽の演目を頭に入れた上で、どの絵がどこに使えそうかを分析する…おそらくデータベース化もしなきゃならないでしょう。ファン心理に立って、どの音が鳴ってるときにどの絵が出てたら最も嬉しいか…。

誰がやるの?
私がやるの?

いやーこれしんどいですよ。普段仕事にてPremiere Proで映像のカット編集してる私からしても、これやれって言われたらかなり「うわーっ!!」ていう仕事であることは容易に想像がつきます。私も「ハルヒ」シリーズに限って言えば映像化されているものはだいたい見てはいますが、濃密なファンの期待にそこまで応えられるかって言ったらとても自信がありません。

たぶんこれ、ファンが満足するようにやり切るってなったら「ファン心理に立って」とか言ってる時点でダメなんですよ。それじゃ圧倒的に足りないんです。むしろファンが編集してることが望ましいんです。ゴルゴ13みたく「仕事ビジネスだ…」みたいな姿勢で取り組んでたら、作品に対する愛の薄さを顧客に見透かされちゃうんですきっと。斎藤社長が仰る「アニメへの愛が必要」っていうのはそういうとこなんですよ。だからこの仕事は「アニメコンテンツに強い会社」がやらないとダメなんです。

こういうことを言うと「マニア気質を前面に出してる奴には任せられない」というような方が必ずいます。確かにマニアなだけだったらダメでしょう。しかし、ある種の仕事はそれを達成する際に、対象に対する愛が求められることがあります。これは私自身の経験も上乗せして言いますが、クリエーティブの世界は特にそう。あることに妄執的なこだわりを持っていることで、成果物の質が爆発的に上がることがある。世の中にはそういう仕事が本当にあるんです。これは経験したことがないとなかなか分かりません。

そんな愛を持った方がいますか?
または、そんな愛を持った方を連れてこれますか?
そんな人たちを、何人知っていますか?

「ウチだけ!!」って言える斎藤さんのこの自信は、こうしたことに裏打ちされているのでしょう。どんな業界もそうですが、「ウチだけ!!」っていう何かを持っている会社は、強い。

③  これからの劇伴演奏は映像とセットに

菊田:劇伴にスポットが当たるのマジでいいと思う。
斎藤:そうなんですよ、そう言ってくださる方は業界人で凄く多いので、業界内需要は凄くあるし、たぶん一般のファンの方に関しても、これたぶん、今後のアニメのライブイベント系の一個のスタンダードになっていくと思います。
菊田:うーん、なるといいなぁ~。
斎藤:で、作れる会社があんまりないので、「ハートカンパニーがやりまーすっ!!」って言って業界内で営業しまくろうと思います。
菊田:そっかそっか、うーん、まぁいろんなアニメの劇伴とか、もっと利用してほしいですよねーと思います。
斎藤:そうですそうです、そうなんです。劇伴は単体だとちょっと分かりづらいんで、映像とセットで観るというのを文化としていくべきですね。
菊田:いや本当にそうですよ。やっぱ音だけだと今どきはちょっと。
斎藤:で、映像の権利っていうのはもちろんあるので、これ文化にしていけば、劇伴フィルムコンサートには映像も付けるのが当たり前であるとなれば、アニメ業界全体で、そもそも契約、アニメの契約を作るときに、劇伴フィルムコンサートやるときは映像を気軽に貸し出せるような座組で契約が作れるようになっていくと思うんですよ。
菊田:うん。
斎藤:いまの契約は、そういうことをそんなに想定してない契約であることが多いので。「映像使用は一律これ!」みたいなルールになってるだけだから。
菊田:うん。
斎藤:「劇伴ライブのときはこういうふうにしましょうよ?」っていう風に、今後制作の契約書が作られるときから盛り込んでいけるといいのではないか。
菊田:そうだねー。
斎藤:っていう啓蒙活動を業界にもしていきたい。
菊田:そうね、二次利用をしていただきたいですよねぇ。劇伴とか。

まんま引用しますけれども、

「劇伴フィルムコンサートには映像も付けるのが当たり前であるとなれば、アニメ業界全体で、そもそも契約、アニメの契約を作るときに、劇伴フィルムコンサートやるときは映像を気軽に貸し出せるような座組で契約が作れるようになっていく」

…というのが本件の最適解であると思います。

というか、「むしろそうなってなかったんかい!」と業界素人な私としては思ってしまいますが、これはアニメというものが音楽と映像で別々に権利を処理しなくてはならないところに、その難しさがあるのでしょうね。

そう、とにかくコンテンツは契約条件ありきなんですよ。
なので、今後は劇伴を題材にしたコンサートが多く行なわれると予測されるのであれば、契約時にそこを含んだ条項を入れておくこと。それが何よりであると私も思います。

ただし、そのあたりをどこまで許諾するかについては基本的にコンテンツホルダー次第ですので、座組(ここで言う座組とは、おそらく製作委員会クラスの話なのだと思いますが)の段階でそのような目論見を明言しておくべきでしょう。それを主張できるのは、やはりこうした実績を持っているところなのかなぁと。

アニメキャラのコラボやグッズ制作・販売などの横展開がビジネスモデルとしてスタンダードになっている現在、劇伴コンサートも次第にファンの中で市民権を得ていく流れが見えています。ならばそこに対象の映像もセットであるべきという流れもまた必然であり、そこに向けた契約面の整備は重要なmissionになるのではという気がしています。

…や、何か業界人でもないのに好き勝手言い過ぎてるな私。

④  演奏され続けることで、作品が人の心に残る

斎藤:そうです。僕は、今日はマジメに語りますけれども、アニメーションってすごく素晴らしいものだと思ってて、そこに関わるクリエイターの方たち一生懸命作るじゃないですか。絵を描くし、演出するし、色を塗るし、撮影するし。そこの努力の結晶の映像をもっともっとたくさん運用した方がいいと思っていて。いまの運用って、ブルーレイで売る、DVDで売る、配信で観る、終わりって感じなんですけれども、プラス劇伴コンサートで映像も一緒に楽しむってやることによって、劇伴も命が吹き込み直されますし、映像そのものもお客様の心にまた蘇るわけなので、みんながハッピーだと思うのですよね。
菊田:そうですねー。何かそれは思うなぁ…。
斎藤:僕はこう「消費され過ぎる」っていうのがいま凄く危険だと思っていて。まぁコンテンツ業界の宿命なんですけれども、どんどん新しいもの作らなきゃってなって、それは素敵だからやった方がいいんだけれども、何か、消費しているじゃないですか?
菊田:うーん。
斎藤:今クールのアニメ見て、楽しかったな、じゃあ次のクールだ!ってまぁそれは当然なんだけど、もうどんどん忘れ去られていってしまってるってわけですよ。
菊田:そうだねー。
斎藤:それを劇伴コンサートで、映像と音楽と一緒にもう1回お客様の目にさらすことで、消費されるんじゃなくて残っていくものになるんじゃないかと。
菊田:それは本当に思いますよ。うん。
斎藤:たとえばみのりんが「Paradise Lost」をずっと歌うことによって、「Paradise Lost」っていう曲は残るじゃないですか。
菊田:そうですそうです。
斎藤:みのりんが「Paradise Lost」を一切歌わないってことになっちゃったら、残らないですよね?
菊田:まぁね。
斎藤:だから文化は、こう、歌われるとか、観られるってことを繰り返されないと残っていかないです。
菊田:まぁそうなんですよね。
斎藤:データ上では残ってるでしょ?ってそういうことではなくて、人の心に残るかどうかっていうのは、繰り返し演奏されるか、上映されるかをしない限りは残っていかないですよ。「人の心に残る」が本当に「残る」なんですよ。
菊田:そうそうそう。だからベートーベンの曲とかモーツァルトの曲は、もう400年ぐらい経ってる。
斎藤:人の心に残ってますからね。
菊田:そういうものにしていきたいですよね、っていうことですよね。
斎藤:そうなんですよー。
菊田:いやホントそう思いますよ。

アニメ作品が新作作られ過ぎて飽和状態になってるって言われて、もう何年くらい経ちましたかね…?

いつからそう言われるようになったのか。作品供給量の推移はどのように変化したのか。本記事の目的はそれを解明することではないのでここでは深く触れませんが、一般論としてアニメ作品が供給過多に過ぎることは論を待たないと思われます。ラノベの隆盛に伴い、原作ものが数多く作られるようになったこともその要因として挙げられるかも知れません。

それ自体は良いことか悪いことかって言ったら、まぁお客側の立場にしてみたら良いことって捉えとくべきなんでしょう。それだけ選択肢が増えたってことですからね(作ってる側がそう思ってるかは知りません)。

ただ、一方でこうも思うのです。「以前よりもひとつひとつの作品に対する接し方がおざなりになってきてるなぁ…」と。

日々の暮らしが忙しくてアニメに費やす時間が減ったから?
そうかもしれません。

観たい作品が多すぎて同じ作品を何度も見なくなったから?
それもあるかもしれません。

(…いやそれどころか、観たくても一度も見てない作品とかあるぞ私)

何が言いたいのかっていうと、昨今はアニメの作品数は増えたけど、それに対してアニメがだんだん心に残らなくなっているぞ…と。

いかんいかん!!
そんなことではアニメファンとは言えないぞ!!

昔は人前でアニメ好きなんて口が裂けても公言できなかったんだから、その呪縛から解き放たれた今、だいぶ遅れてやってきた青春時代を存分に謳歌しないと!!ねぇ私!!ねぇ!!ねぇ!?

分かってるんです。いまは私が学生だった頃に比べると、特にアニメを巡る環境に関して言えばとても恵まれています(学生の頃が何歳だったかについては禁則事項です)。作品も増えています。アニメに愛を注げる環境は十分すぎるほど整っているのに、何故私はいま、制作者が心血注いで作り上げた作品に対して、その程度の愛情しか注げないのかと。

さっき「アニメがたくさん作られていることは良いこと」って書いたけど、本当に良いことなのかどうか、良く分からなくなってきました。でもそれはアニメ業界のせいではなくて私のせい。それだけは分かっています。

でも自省する一方でこうも思うのです。
似たような人、いっぱいいるんじゃないのかなぁ…と。

もしもですよ。
そういう人がたくさんいるのだとして。

新作アニメがシーズンごとにたくさんリリースされているのにも関わらず、私たちの心に残る作品が少ないと言うのなら…それを再び心に灯し、人生の思い出として鮮やかによみがえらせる鍵は音楽、すなわち劇伴演奏が握っているのでは…!!
(いつもながらに強引な論理展開だなーオイ!!)

斎藤社長が仰った「消費され過ぎる」っていう言葉が私的に心に刺さりまくってしまったので、そこに随分行数を割いてしまいました。

図星を突かれました。
いや秘孔を突かれました。
ひでぶです。いやむしろデブです。
まぁそこはどうでも良くて!!
健康診断までには痩せるから!!

こないだ私、「涼宮ハルヒの弦奏Revival」行ったんですよ。
そんであまりにも感動してこんなnote書きました。

何が感動したって、私、音楽が鳴った瞬間にアニメの内容から見てた当時の自分自身の暮らしまで、何もかもすべて思い出してしまったんです!!

演奏始まるまで「涼宮ハルヒの憂鬱」にBGMなんてあったっけ?とか思っていたのにですよ?(作曲者の方超ごめんなさい)

それはあたかも、記憶喪失になってた人が何かのショックですべてを思い出したかのような出来事でした。
「マンガみたい」とはまさにこのことです。
いやもうホントに驚いたもんで。
信じられないかも知れませんが、音楽にはそういう力があるんです。

でもこれだって、演奏される機会があったからこうして記憶の奥底から呼び覚まされたわけです。そういう意味では演奏されること大事。繰り返されること超大事。

みのりんの「Paradise Lost」の例えもそうで、何度も繰り返し歌われることで、定番と呼ばれるほど皆の記憶に残るものです。

なので斎藤さん、その…よろしければ「ひとひらの願い」も繰り返し歌ってもらえるよう、それとなくみのりんに電波送っといてもらえたら私的には嬉しいなーなんてw

何となくオチがついたようなので、そろそろ締めに向かいましょう。
引用部分含めて、もう1万文字超えちゃったよ。
いつもながら冗長で、斎藤さんのラジオみたい(こらこら)。

「音楽熱想」皆様もどうかぜひ!!

ここまで斎藤社長と菊田さんの対談を紹介しつつ、私の思いなどを綴ってきました。いやでも、それだけ語りたくなるくらい、熱い想いのこもった放送だったのですよ。もう一度リンク貼っておきますね。

ちなみにここまで読んでくださった方のためにネタバラシしちゃいますと、この放送の中でどこかの誰かさんによる「X、SNS、noteに!書いてね!」って天の声が聞こえてきたような気がしまして(笑)。

…え?いまnoteって言わなかった?
気のせい?
これまさか、私に話しかけてるわけじゃないよね?
(自意識乙)

そんなこんなでこうなった次第なのでございます。
いや当初は10行くらい書いてお茶を濁すはずだったのに。
どうしてこうなったのだろう…。

「繰り返されることが大事」って斎藤社長も仰っているので、私も繰り返します。
「音楽熱想」皆様もどうかぜひ。
「音楽熱想」皆様もどうかぜひ。

音楽制作、コンサート制作、振り付け、その他音楽に関するご相談はこちらまで。今後は劇伴コンサートや海外進出にも力を入れていくそうです。

(了)

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