
SOS!!鳥取県の境港市が妖怪に占拠されています!直ちに水木しげるロードに急行してください!!
「署長!鳥取県境港市は妖怪に占拠され、市民は動揺を隠せない模様!」
「うむぅ見過ごせないな、ただちに捜査を開始せよ!」
米子鬼太郎空港
「署長、これをご覧ください。空港に降り立った途端にこれです。どうやら乗客の荷物にまぎれて潜入した模様です」
「署長、飛行機が鬼太郎なる謎の少年と、その父親を名乗る目玉の化け物にハイジャックされました!」
「こ、これは…心霊写真ならぬ妖怪写真の製造機です!」
「自販機も妖怪に取り憑かれた模様。なお飲み物は安全とのことです」
「署長。妖怪とは関係ありませんが、腹が減っては戦が出来ないのでここでランチタイムです。空港内2F『炉端かば』にある【しじみラーメン】はとても美味であります!」
「空港前のオブジェ、ここにも鬼太郎がいます」
「自動ドアの中には一反もめんが既にその身を刷り込ませています」
「署長、これを見てください。既にバス停が妖怪の一味に占拠されてしまいました。既にバスもジャックされていることと思われます」
「到着したバスはこちらです。どうやら地元の生活の足のようです。まずはこれに乗って町中を調査します」
「うわぁ!バスの中にまで鬼太郎が!!」
※はまるーぷバス運転手の方、こちらが乗るバスを間違えたにもかかわらず目的地の近くの停留所で止めていただいたうえ、道案内までしてくださり、本当にありがとうございました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。
JR境港駅周辺
「署長、境港駅前に到着しました。商業施設に掲げられた巨大な妖怪たちのディスプレイが目を惹きます」
「署長、まずは現地の駐在員にご挨拶かたがた街の現況を伺いましょう」
「さっき空港にいた目玉のおやじが、今度は気持ちよさそうに風呂に入っています。ビジュアルがピッタリです。本官も入りたいであります」
「ここはいつから鬼太郎駅になったのでしょうか。駅が妖怪に乗っ取られたというのはどうやら本当だったようです」
「駅の中の行き先表記まで鬼太郎駅に。ちなみに隣駅(馬場崎町)はキジムナー駅なのだそうです。他にも多くの駅が妖怪名に変えられている模様」
「駅の待合室です。なおこの妖怪ベンチは街のあちこちにおかれています」
「署長、記念…いや証拠物件として奴らの印鑑を入手してきました」
「よう来てごしなったな!…これは『よく来てくださいましたね』くらいの意味なのだそうです。海の近くだけあって魚も美味しいようです」
「地元のバス、はまループバスここにも。デザインは妖怪の大行列です」
「港のそばに巨大な一反もめんが!ちなみに一反とはおよそ畳にして600畳分くらいなんだそうです。勉強になりますね!」
「おいそこの鬼太郎何をしている!軽犯罪法第一条にて逮捕するぞ!」
「署長、妖怪たちが集まってワイワイガヤガヤと話をしているのを発見しました。これは何なのでしょうか?」
「世界妖怪会議なのだそうです。妖怪も会議するのですね。何だか少しだけ同情します」
「あ、なかなか結論の出ない会議に業を煮やしたのか、目玉のおやじがブチ切れています」
「そしてねずみ男にたしなめられています」
「これは妖怪の亜種でしょうか?何だか怖いです」
「妖怪の主を讃える『鬼太郎音頭』なるものまであるようです」
「『なまけ者になりなさい』妖怪どもが人間を堕落させるために紡ぎ出した罠…ではなくて、妖怪の創造神である水木しげる氏が残したメッセージとのことです」
水木しげるロード
「こ、これはっ!ねずみ男…かと思いきや顔がない!!もしやこれが、噂ののっペらぼう!?」
「何と妖怪から新型コロナウイルス感染対策への協力を要請されました!!逆らうと後が怖いので、手持ちの消毒スプレーで手指を消毒です!」
「かの有名な子泣き爺(こなきじじい)です。鬼太郎の一味のひとりだとのことです。直ちに事情聴取…うわー背中に乗っかられたー重いっ!!」
「ついに目玉の親父が街頭に憑依した模様。光るはオヤジのハゲあた…いや何でもないです!!」
「橋のたもとにてくつろぐ鬼太郎がいい味出してます。ここは鬼太郎を撮影するうえでベストポジションだと思います…。はっ、捜査を続行せねばっ」
「署長、妖怪があふれているのは道だけではありません。お店もほとんど妖怪の巣と化しているようであります」
「お休み処までも砂かけ婆に。こ奴も鬼太郎の一味のひとりです」
「ぬりかべ商店!自分で自分の顔(身体?)をペタペタ塗っています!」
「何と甘味処までもが妖怪の手に!しかも美味しそうです!」
「おでん缶って秋葉原じゃあるまいし。それにぬりかべと一反もめんのサイズ感が気になります」
「鳥取とくれば梨。ということで梨ソフトクリームを買ったら妖怪に舐めさせろと言われたので少し分けてあげました」
「署長!ついに銀行までもが妖怪に乗っ取られました!!」
「最近の妖怪は振り込め詐欺までするらしいです。いやはや油断も隙もない世の中になりましたね」
「トイレのマークもよく見れば鬼太郎と猫娘」
「署長、どうやら我々はトイレの中でも妖怪に見張られているようです」
「いやいや、これはまたご丁寧に」
「妖怪とは関係ないけど本まぐろラーメンだそうです。美味しいとは思うのですが、ラーメンに刺身が合うのでしょうか…?」
「ここら辺でやたら見かける白バラ牛乳のブランド。これももしや妖怪の…いやそれはさすがに考えすぎですかね?」
「署長、そうこうしているうちに妖怪の本拠地『水木しげる記念館』に到着しました!我々の捜査もいよいよ大詰めです!!」
水木しげる記念館
「説明不要かと思いますが、水木しげる氏は我が国における妖怪漫画の象徴とも呼べる『ゲゲゲの鬼太郎』(元のタイトルは『墓場鬼太郎』)の作者であります。ここの展示を見ると分かるのですが、妖怪以外にも多くの分野で漫画を描いております。特にご本人が戦争に召集されていることから、その生々しい体験を綴ったものも残されており、心を揺さぶられます」
「水木しげる氏は戦時中、南方のラバウルにて部隊ほぼ全滅の中ひとり生き残るものの、爆撃によって左腕を失うという経験をしています。そんな氏の描く戦記ものが真に迫っていないはずがなく、それは現地に居た日本軍兵士による生の証言にあふれた貴重な戦記であると思われます。一般的に戦争は勝者の視点からしかその多くが語られず、故に我が国の兵士たちが現地では実際どうだったのかに対する情報は必ずしも十分とは言えません。そういう意味では、水木しげるの戦争漫画はもっと日の目を見ても良いのではないかという気が、個人的にはしています」
「ちょっと固い話が続きました。再び妖怪ネタに話を戻しましょう」
「こうした『ゲゲゲの鬼太郎』のキャラクターを掘り下げた展示もたくさん用意されています」
「子なきじじいと砂かけばばあがそんな関係だったとは…💛」
「ぬりかべと一反もめん。デカい&長いコンビですな」
「鬼太郎が実は高校に通っていたとは!?試験も何にもないんじゃなかったのか!?」
「最も謎が多いと思われる目玉おやじ。帽子なんてアイテムがあったことを初めて今回知りました」
「鬼太郎そんな必殺技たくさんあったとは。リモコンゲタはファミコン版でお世話になった気がします」
「水木しげる氏は妖怪を探しに世界を放浪したらしいです。世界中の妖怪はだいたい千種類に分類できるっていう説も興味深いです」
「これが…その世界で収集して来たもの…?漫画に活きたのでしょうか?」
「『ゲゲゲの鬼太郎』にまつわる様々なグッズを展示。こっ、これは!?」
「これ昔、さんざん友達ん家のファミコンで遊びましたよ!懐かしいなぁ」
「これは…『妖怪退治陣取ゲーム』?説明を見る限りドンジャラのようでもあるのですが…。ちょっとボドゲ趣味の血が騒ぎますね」
「水木しげる氏仕事場のイメージ。本棚は資料や書物でいっぱい。私的には左上の梨ダンボールが鳥取っぽくて良きです」
「妖怪アパートだそうな。家賃はいくらくらいなのか気になります。家賃を滞納するとどんな目に合わされるかは想像に難くないでしょう」
「案内してくださった館の方いわく『妖怪は悪さを働く存在というよりも、むしろしてはならないことを注意、警告する戒めの意味で登場するもの』ということです。我々は妖怪だからと言ってむやみに恐れたり遠ざけたりするばかりでなく、もっと積極的に妖怪と共存していく道を探るべきではないでしょうか。そう、この境港の街のようにです」
「館の方からお話しを伺っているうちに外に出てきました。ここが庭園っぽいのは、もともとこの建物が料亭であったことの名残りだそうです」
「妖怪ポスト。ここに郵便物を投函すると『妖怪消印』が押され妖怪パワーが乗せられるとのことです」
「ということで25分くらいの滞在時間でしたが、館の方の親切丁寧な説明により、とても充実した時間を過ごすことができました。それとともに我々の妖怪に対する疑いも晴れましたので、これにて妖怪捜査本部は解散とさせていただきたく思います。現場からは以上です」
※微妙に入館時間をオーバーしていたにもかかわらず快く入れてくださったばかりか、館内案内ならびに水木しげる氏の人生について語ってくださった水木しげる記念館の方、本当にお世話になりありがとうございました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。