古典文法講義6 単語
品詞とは、単語の種類のことである。それでは、単語とは何か。
これが英語であれば、明瞭である。英語では単語ごとにスペースを空けることになっているので、書き言葉であれば、一つひとつの単語がはっきりしている。
例えば、「I Love you.」であれば、三つの単語に分けることができる。
それでは、日本語の場合はどうか。日本語では、単語ごとにスペースを空けることは基本的にはしないので、ぱっと見ただけではわからない。
『古文読解のための標準古典文法〈三版四訂〉』という文法書では、単語を「意味を持つ言葉としての最小の単位」としている。
例えば、「竹取の翁という者がいた」という文を、単語に分けたらどうなるか。
「意味を持つ」という言葉から考えると、大雑把に分ければ「竹取の翁/という/者が/いた」とでもできそうだし、細かく分ければ「竹/取/の/翁/と/いう/者/が/い/た」でも良さそうな気もする。
このように、単語に分けるというのは一筋縄ではいかない。そして、捉え方によって答えがいくつも考えられるものである。
学校文法では、単語を考えるときに「文節」という概念を用いる。
先ほどの文法書では、文節を「不自然でない範囲で小さく区切った単位」としている。これではよくわからない。
そこで、「一つの文を、音読して不自然にならず、意味もわかりにくくならないように区切る」という説明もある。なぜ音読が入ってくるのか。これは、次のことにつながってくる。
さらに「文節に区切る方法」として「言葉の間に『ネ』を入れてみる」とも記されている。幼い子どもが用いる「あの(ネ)、この犬が(ネ)、動いて(ネ)、」のような「ネ」である。
例えば、「竹取の(ネ)/翁と(ネ)/いう(ネ)/者が(ネ)/いた」という具合に考えてみるのだという。
「竹取の翁と(ネ)/いう者が(ネ)/いた」でもいいじゃないかとも思えるが、これは、もっと細かく分けられないかと考えてみる必要がある。
「なぜ」それで文節になるのかには深追いせず、文節に分ける「方法」だけを示すのがポイントである。学校文法はわかりやすさを重視している。「ネ」を入れて音読してみると、なぜか文節に分けられるというのである。
この文節をさらに細かく、「意味を持つ言葉」としてギリギリまで細かく分けたものが、単語だという。
このように、最初から全てを細かく分けるのではなく、ひとまず文節に分けることで、分け方の方向性を定めているともいえる。
学校文法において、「竹取の/翁と/いう/者が/いた」という文節を単語に分けるためには、さらに「自立語」と「付属語」という概念が必要になる。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?