美術館巡り「浮世絵の別嬪さん」大倉集古館(6/9まで)
大倉集古館(東京・港区虎ノ門)で開催中の「浮世絵の別嬪さん 歌麿、北斎が描いた春画とともに」のレポートです。
テーマは大きく5つでした。
第1章 初期風俗画と又兵衛、そして師宣の誕生―17世紀
岩佐又兵衛、菱川師宣、田村水鷗、菱川師平、山崎女龍
第2章 安度、長春の隆盛―18世紀前期までの美人画
懐月堂安度、懐月堂安知、宮川長春、松野親信、宮川長亀、川又常行、宮川一笑、宮川春水、鳥居清春
第3章 春章、歌麿、栄之の精華―18世紀後期の美人画
礒田湖龍斎、勝川春章、勝川春霍、窪俊満、水野盧朝、勝川春暁、北尾政演、西川祐信、祇園井特、鳥居清長、月岡雪鼎、歌川広重、烏文斎栄之、歌川豊広、喜多川歌麿
第4章 葛飾北斎と歌川派の浮世絵師―19世紀の美人画
葛飾北斎、勝川春英、勝川春扇、勝川春周、勝川春好、二代葛飾戴斗、蹄斎北馬、抱亭五清、菊川英山、渓斎英泉、歌川豊国、歌川豊春、歌川豊広、歌川国芳、歌川広重、香蝶楼国貞、月岡芳年
第5章 めくるめく春画の名品
歌川国貞、葛飾北斎、歌川豊広、喜多川歌麿、烏文斎栄之、宮川長春、歌川豊春、烏居清信
古典文学にまつわる作品もいくつかありました。
特に、勝川春章「雪月花図」は、清少納言が簾をかかげて外を眺める様子を引用した「雪」、紫式部が文机で物を書いている様子を引用した「月」、小野小町が桜の花を眺める様子を引用した「花」とで構成されています。
それぞれ、当世風の女性が描かれていますが、平安時代の三人の女性を引用していることがわかります。(諸説あるようです)
テーマは「別嬪さん」とありますが、そこにはさまざまな立場の女性や、若衆が登場します。
「美人」といったい何なのか。それぞれの時代、それぞれの作家による「美人」を見比べていくのもおもしろいです。
浮世絵の「美人」といえば、歌川派の美人をイメージしていましたが、長い江戸の時代の中で、さまざまな美人の描かれ方があったことを知りました。
また、今回の展示のほとんどは女性や若衆だけが描かれますが、春画だけは別です。情を交わす男性も描かれます。
春画の中で描かれるのは、ある種のコミュニケーションです。情を交わす者どうしの関係性や、やりとりが伺えるような作品になっています。その表情やしぐさの様子に物語があるように思えます。
美術としてのさまざまな美しさに触れると同時に、そこにある物語を楽しむのも、浮世絵の魅力だと思います。
【大倉集古館】
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