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もう初出版⁉速い展開に心配もある
「吉原細見」の制作本屋「鱗の旦那」と呼ばれる鱗形屋孫兵衛(片岡愛之助)は蔦重(横浜流星)の味方で協力者だと思っていましたが、最後に不穏な表情を浮かべていました。
え?もしかして蔦重を妬んでいる??
江戸出版界の大物・鱗形屋
大衆本の企画・制作・販売をした地本問屋で、この当時は江戸ではトップ企業、「吉原細見」も独占販売していました。
「吉原細見」の内容の更新もせずに古い情報のまま出版していたのは、商売に胡坐をかいていたようです。
その改訂を素人同然の蔦重に任せたのは、きっと油断していたのでしょう。
いちいち調べ直して訂正するような面倒な編集作業など、自分がしなくても蔦重にさせておけば手間は省けて楽ができますから。
一方、蔦重は本格的な本作りに関わることで、出版のノウハウを得る事ができたのです。
鱗形屋(片岡愛之助)は蔦重を利用していたつもりが、次に彼が出版した本の出来と評判に穏やかではなくなったようです。
やがて、鱗形屋は上方の本をその版元に無断で出版した件で処罰された事を機に衰退していき、出版本の市場は蔦重が台頭してゆくのです。
またまた序盤で退場?
大河には結構重要な役柄で出演する片岡愛之助さんですが、今回も主人公に大きな影響を与えた人物を演じながら、また序盤で退場するようです。
まだ記憶に新しい2022年の「鎌倉殿の13人」では北条義時(小栗旬)の兄・宗時役でしたが「石橋山合戦」のどさくさに暗殺されたり、その2年前の「麒麟がくる」では今川義元役で「桶狭間の戦い」で討ち死。
いずれも物語はこれからという序盤での退場が続いています。
今回もあの最後の苦い表情のアップで、序盤退場のフラグが立ちましたね。
初出版の「一目千本」
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蔦重が、アイデアから企画・制作・宣伝・販売まで一貫してプロデュースした本のタイトル「一目千本」には、”奈良・吉野山の桜のように千本の桜が一目で見渡せる所”という意味があります。
遊女たちの絵姿ではなく、それぞれの雰囲気や性格を連想させる花に見立てて描き、それだけではなく、それらを東西に分けて相撲の取り組みに見立てて競うという趣向です。
冒頭には土俵と樽に入った花束が描かれ「華すまひ」とされていて、とても良いアイデアだと唸るしかありません。
~吉原には様々な容姿や性格の遊女が揃っている~
遊女それぞれの「個性」を見事にクローズアップしながら、それを活けられた花で表現したという粋な趣向は珍しく初の試みでした。
入銀出版とは賢い!
吉原の遊女たちの序列は厳格だったはずなのに、「一目千本」の掲載順はそのランク順でもなければ、網羅した全てでもなくランダムなのは、出資金額順の可能性があるようです。
ドラマでも蔦重が様々な人々から入銀(出資)を募っていましたが、宣伝するための広報活動のメリットを訴えてスポンサーを集めていたのです。
版元が全てを負担するのではなく、「相互利益」に繋がる方法を選択したのは、確実な収入と実績が見込める賢い方法だと思います。
この時、蔦重は25歳。親なし・金なし・風流なし…ないない尽くめの蔦重が本を出版できた理由はここにあったのですね。
見本配りも的確
徹夜で本を仕上げてもまだ仕事は完了していません。
その見本の本を茶店、湯屋、髪結い屋、居酒屋など、特に男性が出入りしそうなところを回り配り歩きます。
その苦労が実り、吉原に賑わいが戻り、基本的に自分のためではなく、吉原の皆のために健気なほどまっすぐに突っ走る蔦重。
吉原に育ち、その衰退を見てはいられない思いだけが出版への意欲を駆り立てたその姿は、人の徳を失った亡八の旦那衆も認めざるを得ないものだったはずです。
育ての親・駿河屋(高橋克己)からどんなに折檻されても屈しないほど、蔦重の”吉原を良くしたい”という思いは強かったのです。
駿河屋も結局は蔦重の事を認めて親心があった事が明かされ、私も老婆心ながらホッとしました。
人気絵師・北尾重政
葛飾北斎や喜多川歌麿は知っていても、私は北尾重政(橋爪淳)の事は知りませんでした。
技術や力量はあるのに現在においての知名度が低いようですが、当時は浮世絵美人画で人気絶頂の絵師でした。
彼の父は江戸の書店を経営していた須原屋三郎兵衛であり、生家の環境で幼いころから本に囲まれて成長します。
独学で腕を磨き、後に錦絵の創成期と言われるまでになります。
指導力も備わっていたので、山東京伝や鍬形蕙斎など個性豊かな多くの門人を輩出し、北尾派を確立するまでになりました。
間違いなく後世の浮世絵を牽引する役割を担った人物だったようです。
「一目千本」で蔦重と初タッグを組み、その後も大きな役割を示し、彼らは二人三脚で歩み続ける最も長期に渡るパートナーだと言えるのです。
こんなに重要な絵師だった事を知り、私もこの機会にしっかり頭にインプットしておこうと思います。
展開が早すぎて心配
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早くも初出版を実現し、成果を出した蔦重です。
テンポがよくて非常に私好みの展開の速さなのですが、蔦重が47歳で没していて長生きしていないので、1年間もたせられるのか心配になっています。
この時の蔦重が25歳なので、あとのたった22年間を1年かけて描く事に無理はないのだろうか?
これからまだ田沼意次(渡辺謙)など江戸幕府側の動向や、花の井(小芝風花)の運命の行方など、理不尽な処罰を含めた脇役たちへ話を膨らませたとしても、例年の話の進み具合を思うと、もたせることはできるのでしょうか?
その分、肝心な心を丁寧に描いて泣かせにくる予感もあります。
そのあたりを際立たせるために緩急を上手く使い分けた展開になるかもしれません。
いずれにしても、今の蔦重が眩しいほどに溌溂として、これからの苦労を乗り越える蔦重こと横浜流星さんの演技の変化が楽しみで仕方がありません。
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