なみだのはなし
NHK大河ドラマ『光る君へ』
道長(柄本佑)とまひろ(紫式部: 吉高由里子)の逢瀬
そこで涙を見せたまひろのセリフ
まひろの涙に 道長は、この涙は(喜びなのか、悲しみなのか)どっちだと訊ねます
まひろは、「どっちも」と答えます
愛し合っていても夫婦にはなれない
幸せで悲しい…
幸せって悲しい…
そんな切ない涙でした
まひろの父 為時(岸谷五朗)は、摂政となった藤原兼家(段田安則)の計画により官職を外され、仕事を失い生活が苦しくなっていました
兼家が逝去した知らせを受けた為時は涙します
その姿を目にした いと(まひろの弟の乳母: 信川清順)は それがどういう涙なのかわからずに惑います
そんないとへの まひろのセリフでした
人の関係も、人の心も、複雑…なんですよ、ね
今年の1月からスタートしたストーリーも終盤となってきました
これまでも涙のシーンはたくさんありました
ご覧になられている方もいらっしゃるでしょうか
わたしは、まひろが文字を書いているシーンが特に好きです
平安の大和ことば
和歌もたくさん出てきました
美しい衣装や所作にも惹かれます
最終回まで楽しみたいと思います
*
8年前の今頃の時期
思春期の方へ向けた講話でしたが、わたしも参加させていただいて拝聴しました
そのお話は、俳句や 現代の音楽の歌詞などになぞらえて、やさしい言葉と声で語られました
「 みなさんは、最近涙を流しましたか?
それはどんな涙でしたか?
涙には 悲しい涙、悔しい涙、嬉しい涙もありますね… 」
そこからお話が始まりました
「 社会に生きていると、自分の弱さや小ささに涙することがあります
泣くことを我慢して、強く立派でなくてはいけない
失敗や涙することが、間違いや恥ずかしいことのような風潮や思い込みに、みんなそれを隠そうとします
けれど、間違いでも恥でもなく、成長するために とても大切な必要なことなのです
『 裏を見せ 表を見せて 散るもみじ 』という俳句があります
表と裏、光と影、どちらも合わせ持つのが自然の姿です
誰かの流す涙の意味を理解して共に感じ合うことができる、相手を自分の中へ受け入れて大切にすることができる
その時に、本当の友情や愛情が生まれるのかもしれません
完璧な人はいません
良いところがない人もいません
自分は愛される存在であり、唯一無二の存在であることを忘れないでください
自信を持って、大らかな心でこれからも歩みを進めてください 」
…と、大筋はこのようなことで、自己肯定感を高める内容でした
このお話を聴いた中高生は 何を感じ、何を考えたでしょうか
そのあたりも気になるところでした
思春期は、子どもと大人のはざま
その多感な年頃は 心が特に繊細に揺れ動く大切な時期です
人間関係や行動範囲が広がるほどに 悩みやトラブルも増えていきます
壁にぶつかってどうしようもなく辛い時に、思い出して前を向ける
冷静になって前へ進むことができる
そんな支えとなる言葉を伝える というのも 大人の大切な役割なのかなと思いました
お話の中に出てきた俳句は、良寛(江戸時代後期の禅僧 )が 亡くなる前日につぶやいたものだそうです
みんなおなじ
裏も表もある
長所も短所も
笑顔も涙も
すべてをさらし
ありのままに
散ってゆく
良寛さん(1758-1831)は
子ども好きで 穏やかな優しいお人柄がよく知られています
歌人、漢詩人、書家でもあり、俳句以外にも多くの作品を残されています
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このところ、涙に触れることが重なりました
心が動いて涙が出る
感情が高まるほどに涙は出ます
嬉しい時でも悲しい時でも、涙はその気持ちの昂りを落ち着けようとする ヒトに備わった自然のチカラです
涙にはさまざまな役割があって、“泣く”という行為は、心と体を守る大事な働きをしています
たとえば、副交感神経を活性化して心身の不安や緊張を緩和するリラックス効果や、ストレスホルモンを体外に排出するデトックス効果などが認められています
たしかに、涙を流したあとは 気持ちが落ち着いて、ちょっとスッキリしますね
気持ちの切り替えスイッチ、そんな感じ
嬉しい時も、悲しい時も、泣きたい時は 我慢なんてせずに泣くのがいい
泣きたいだけ 泣くといいよ
心がスッキリ晴れるといいね
目は少しポッテリ腫れるかもしれないけどね
嬉しい涙は右目から、悲しい涙は左目から とか、
嬉しい・悲しい涙は甘い、 悔しい涙はしょっぱい、なんて言われたりもしますけど
さて、どうなのでしょう
みなさんは 最近いつ涙しましたか
それはどんな涙でしたか
わたしはどうだっけな…
つい最近のこともすぐに忘れちゃって
もうほんと、困っちゃいます
それではどうぞ よい一日を、よい一週間を
#179. 『 涙 』
⭐︎重力に必死に逆らおうとして君の涙が膨らんでゆく
⭐︎ちょっとだけアンバランスになっただけ 涙のぶんだけチョコを許す
ー ちる ー