蜷川実花展 〜Eternity in a Moment 瞬きの中の永遠〜
写真家・映画監督である蜷川実花さん
AKB48の『ヘビーローテーション』のMVにジャケット写真、映画『ヘルタースケルター』の監督などで注目を浴び、当時メディアでも大きな話題になりました
舞台演出家・映画監督だった蜷川幸雄さんの長女であることもよく知られています
クリエイティブ・ディレクターとしても活動し、アートディレクションや インスタレーションも手掛けておられる蜷川実花さんの展覧会が 東京・虎ノ門ヒルズ ステーションタワーのTOKYO NODE で 2月25日(日) まで開催されています
蜷川実花さんの作品といえば鮮やかな色
眩しすぎるほどに強い
強すぎるほどに眩しい
そこに表現されるエネルギー
“ 体験型 ・没入型の展覧会 ”
わたしがこの色彩に囲まれたら
どうなるんだろう
どんな気持ちになるんだろう
そんな好奇心が 少しだけ湧いた
*
色、光、音…
激しくなったり 交わったり 途切れたりする
驚いたり ほっとしたり 不安になったりもする
めまぐるしく動く巨大な映像に、自分の三半規管が弱いことを思い出した
忘れかけていた何かを思い出す
時空でつながってきたものたち
過去と現在と未来とを結ぶ何か
美術展にして遊園地のアトラクションみたいな感覚は、没入型インスタレーションの狙いのとおりだと思う
三連休だったせいか、小さなお子さんやファミリーも多い
みんなしきりに花をバックにスマホでシャッターをきる
初対面のグループ同士が交代で写真を取り合っていたりもして
「すごいね」「きれいね」という声が 終始飛び交っていた
たぶん ほとんどの方は、イコール「すき」「すてき」ということなんだと思う
みんな和やかに微笑んでいて、不安げな顔をしている人は、他にいなかった
わたしは 作品をきょろきょろと見回し、ちょこちょこ写真を撮り、そろりそろり静かに道を辿った
みんな自由に、それぞれにきっと何かを感じとりながら進んでいく
45階という高層階のギャラリー
大きな窓にかけられた作品は、外の太陽や景色も淡く透けて作品に混ざる
床に置かれた大きなクッションに寝そべって高い天井に映し出される映像作品を眺めたり、
大きな半透明のスクリーンの間を歩くと、映し出される写真とともに その向こう側にいる人影も作品の一部になったりする
そんなふうに、作品が 今のその瞬間と結びつくことを体感する
わたしたちも “現存” “現実”として アートの、表現の、一部になる
11の空間ごとに表現されている そこに込められた核心を感じたいとは思うのだけど、わたしのアート鑑賞にしては珍しく いつもよりわりと足早に進んだ
あとでお茶で一息つきながら、 撮った写真でも眺めて、作品と感情を巡らせてみようと思った そんな覚え書き
*
*
入場してまず現れたのは、萎れ 枯れた植物だった
意表をつかれた
色はなかったけれど、とてもきれいだなって思った
進んでいくと、これでもかというほどに色で溢れる
“カラフル”という言葉ではとても足りないほどの色
こんなお花畑には行ったことがない
そうか、桃源郷には限りない色がある
花も色も光も、それぞれが主張し合っていて
夏も冬も関係なく、上も下も関係なく乱れていた
全てが造花だと思っていたけれど、本物の花も紛れていたようで、どれが本物だったのかわからない
造花は 永遠に姿も色もそのままに残り、香りや花粉は飛ばない
本物の花は芳しいけど、やがて枯れて消えてゆく
どちらがいいとは一概には言えない
わたしたちの住む世界も似たようなもので、
嘘も本当も、偽物も本物も混在していて、それは時代の流れとともに緻密で巧妙な、精巧なものとなって もはや一目では区別がつかなくなってきている
“多様性”をうたわれる今
ごちゃ混ぜになって存在している世界から、それぞれがそれぞれの価値観で 自分の本物を見極めるしかない
自分にとって本当に必要なもの、本当に大切なものを見つけて掬いとっていく
そうして自分の人生は、自分なりの色調でカラフルになっていくのかもしれない
わたしたちは、色合いは違っていても みんな何かを目指して、何かに挑み続けて生きている
作品のなかには、蝶や金魚がよく出てくる
けれども、わたしの大好きな鳥は見当たらなかった
鳥だって自然とは調和しそうだし、カラフルな鳥もたくさんいるし、シンボル的な存在にもなったりするのにな、なんてぽつりと思う
会場でもらった概要の中で、モチーフのひとつである蝶に関して “ Butterfly effect ”という言葉を見つけた
『 蝶は 夢と現実の間をつなぐ象徴である一方で、Butterfly effect という言葉の通り 多様な未来の可能性の象徴でもあります』
小さな変化が 予測不能な大きな変化をもたらすことがある
小さなことにも 大きな可能性が宿っている…
そんな意味が込められているのだろうか
ひらひらと空中をさまよう蝶は、ゆらゆらと水中をただよう金魚は、社会のなかのわたしたちなのかもしれない
一見穏やかで きれいだけど、その動きは わたしたちの心の中みたいに、どこか儚くてつかみどころがなかったりする
以前 友人が、「ちょうちょは苦手…なんかこわくて」そう言っていたのを思い出した
人の成長や一生は、よく植物にも重ねられる
種から芽を出し、伸びてゆき、葉を出して、花を咲かせ、実を結び、種を残し、やがて果てる
そしてまた 命は巡ってゆく
様々な色の 様々な花々は、わたしたちの個性にも重なって見える
人は、夢や理想や憧れを抱きながら 現実を生きている
夢や理想を思い描いて、「いいな」「きれいだな」「すてきだな」と憧れる
それは現実よりもカラフルなもの
カラフルな花の溢れる世界は、夢であり憧れの世界
そしてそこには “夢と現実の間をつなぐ象徴” であり、“多様な未来の可能性” であるという 蝶がいた
ふと、花も 蝶も 金魚も、声を持っていないことに気づく
声を出さない、出せないでいる
もしかしたら わたしたちの、言葉にしたくてもできない繊細な事柄や、どうにか伝えたいという深い思いを表しているのだろうか
鳥がここにいなかったことを、ちょっと強引に どうにか自分に納得させた
わたし自身が抱いてる 夢や理想や憧れは、もう少し淡いトーンのような気がする
現実よりもほんの少し色を重ねたくらいの
たぶんそれほどは 強い色でも光でもない
もし 眩しいほどの壮大な夢があったとして、もしもその世界が自分の目の前に突如現れたとしたら、わたしは多分 ぽつんとひとり立ちすくんでしまう気がする
例えば この前の「当たりますように」なんて言っていた宝くじが、もしも大当たりなんてしていたら、
一瞬は大喜びして、でもどうしていいかわからなくなって、だんだんクラクラとして 怖くなっていたかもしれない
人によっては、手に入れたものを上手にこなし、更なる糧にして どんどん飛躍していけたりするのだろうけれど
現実問題、おそらく一生 わたしの三半規管は弱いまんまなんだ
そんなことも思い知った展覧会だった
***
東京 虎ノ門エリア
“虎ノ門”と聞けば、政治や経済、ビジネス、オフィスなどのちょっとおかたいイメージ
そんな場所の再開発がどんどん進められています
虎ノ門ヒルズの竣工、虎ノ門ヒルズ駅 の開業、そして昨年10月に 虎ノ門ヒルズ ステーションタワーがオープンしました
虎ノ門ステーションタワーから外に出て、大通り沿いを10分ほど歩くと、昨年11月に新しくオープンして話題となった麻布台ヒルズがあります
そのすぐ先には みなさんよくご存知の 東京タワー
麻布台ヒルズの 森JPタワーは、地上64階の330メートルで、大阪のあべのハルカスの300メートルを抜き、日本一の高層ビルとなりました
4/17までは、33階のスカイロビーにどなたでも無料でのぼることができ、景色を楽しめます
目の前に東京タワーが見えますよ
こちらには今月、 体験型・没入型アートの チームラボ ボーダレスが常設オープンしました
古い神社や公園、老舗も大切にされつつ 新しく生まれ変わろうとしている街
スタイリッシュでオシャレなショップや おいしいお店もたくさんあります
工事中のブランドショップが 今年続々とオープンしていく予定のようで
界隈はさらに賑やかになっていきそうです
この日はとてもいいお天気だったけど、
ピカピカのビルも、キラキラの街も、赤い東京タワーも、青い空も、ピンクの桜も…
ちょっとモノクロにしたくなりました
あ、トラのもんはもともと白です
“新たなスタート” そんな感じのホットな街
暖かさにほころんだ桜も なんだかマッチしていました
もうすぐ春、たまにはオシャレをして出掛けるのもいいですね
機会があれば、みなさんもぜひ訪れてみてください
それではどうぞ よい一日を、よい一週間を
#146. 『 夢と現実 』
⭐︎春近し 惑い咲きたる桜へもきみへも「ファイト!」って投げやりたし
⭐︎スクロールしてく写真の鮮やかな色をモノクロにして戻りゆく
ー ちる ー
そういえば 余談ですが…
お祭りの金魚すくいでもらった金魚を 母が飼っていたのですけど、実家に帰るたびに 金魚も水槽もどんどん大きくなっていって おかしかった
このこたち、いつからいるんだったかな
はじめは三匹とも赤い金魚だったのに、今では右の二匹は白になりました
花も金魚も大好きだった母の姿が、母とは無縁の デジタルなアートな場所で ふわりと浮かんできました^^