見出し画像

岩波少年文庫を全部読む。(110)目に見えない魔法の輪の、外側に疎外されてるあなたへ ジョーン・ゲイル・ロビンソン『思い出のマーニー』

〝やってみようともしない〟ことの苦しみ

ジョーン・G・ロビンソン『思い出のマーニー』(1967。松野正子訳、岩波少年文庫、全2分冊)は、病気になったあと、療養のために一時的にノーフォークに引っ越した少女アンナが主人公です。

アンナがノーフォーク行きの列車に乗ると、養母ミセス・プレストンは心配そうに別れを告げます。アンナは老夫婦ペグさんの家に滞在することになったのです。

アンナは孤児で、病気で、しかも内気で友達がいないという、ずいぶん孤独な設定になっています。自分が〈目に見えない魔法の輪〉(12頁)の外側にいると解釈しています。
また、自分より先に世を去った母や祖母にも、否定的な感情をいだいています。養父母プレストン夫妻にも、心を開くことがありません。

ミセス・プレストンはアンナにとても優しいのですが、アンナにとってはミセス・プレストンの気づかいすら重く煩わしいようです。
というのも、あるとき知ったのですが、ミセス・プレストンは

ここから先は

3,766字 / 1画像
この記事のみ ¥ 100
期間限定!PayPayで支払うと抽選でお得

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?