岩波少年文庫を全部読む。(109)本筋ハッピーエンド後に「衝撃のほんとうの結末」 ジョージ・マクドナルド『カーディとお姫さまの物語』
訳題はなぜか語順が逆
ジョージ・マクドナルドの『カーディとお姫さまの物語』 (1882。脇明子訳、岩波少年文庫)は、『お姫さまとゴブリンの物語』 (1872。同)の続篇です。
前作『お姫さまとゴブリンの物語』の原題はThe Princess and the Goblin、ところが本書『カーディとお姫さまの物語』の原題はThe Princess and Curdieなのです。どちらも〈お姫さま〉が先に来ているのに、どうして本書の訳題は語順が逆なんだろう。
カーディ、〈おばあさま〉に会う
前作で華々しく展開し、収束した冒険の1年後、山あいの王国は新たな危機を迎えます。
アイリーン姫は父王について王都グウィンティストームに行き、まもなく13歳になる少年鉱夫カーディも、鉱山を救った英雄として、また姫の友人として、王都への同道を持ちかけられました。
しかしカーディは父ピーターと母とともに、鉱山に残ることにしました。姫とはしばらくお別れです。
やがてカーディは、前作でアイリーン姫にきかされた高祖母(アイリーンが〈おばあさま〉と呼ぶ姫のひいひいおばあさん)の存在を疑うようになります。自分は高祖母の姿を見なかったし、あれはアイリーンが少しおかしかったのではないだろうかと。
しかしいっぽうでカーディの母は、カーディが生まれる前に、高祖母が発する光と同じような現象を、一度だけ見たことがあると、カーディに証言するのでした。
カーディは自作の弓矢で狩りをするようになりました。
ある日、カーディは白い鳩を撃ち落としてしまいます。アイリーンの高祖母の鳩の話を思い出し、自分が撃ち落としたのは高祖母の鳩なのではないかと不安になります。
自分の愚かさを自覚したカーディの目は、王の館の屋根にあの不思議な光がふたたびあらわれたのを見逃しませんでした。カーディは光を追いかけて館にはいり、ある一室に行き着きます。
そこで出会った高祖母は、アイリーンが言っていたような若く美しい女性の姿をしていません。小さく枯れ果てた老女の姿をしていたのです。これには前作の読者もショックを受けるでしょう。
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