タスク管理(9) あるいは「流氓の小さな夢」
第8回までの内容のまとめ
『五娘会』のサム兄貴がタイから戻る八日後までに、
15Kgのブツをすべてさばける手立てをしなければいけない。
そこで本部の壁に、
俺が 13Kg と舎弟のDが 2Kg をさばく予定を
タスク管理表に付箋を貼り、誰にどれだけ、幾らで売るかを明確にし
早く確実にあたりをつける事としていた。
俺の方は 、8Kgのめどが付き残り 5Kg で残りの売人は8人。
舎弟のDが、1.4Kgのめどが付き
残り 600g で残りの売人は3人。
残り期間は八日間。
タスク管理(9)あるいは「流氓の小さな夢」
十二味に行く道すがら、
「红鼻子は、どれだけさばけるんだ?」
「そうㇲっね、頑張っても 400gㇲ。
前回は 200gでした。」
「それじゃ、300gを目標に交渉するか。
400gで、金が払えなくて飛ばれても困るしな。
ダメなら 200gで落とそう。」
「龍哥、一緒にいるとわかるんㇲが、
色々な手管で売人にOKと言わせていまㇲね?」
「D、おれぁ、本土で日本人の工場長から色々、教わったんだ。
谈判技巧と言って、相手と交渉するときには
まず、相手の情報から全体の流れを事前に考える、
日本人の工場長はストーリーを決めるって言ってたな。
その後、落としどころを決める。
これは出来るだけ二個から三個にして、順位をつけて、
サム兄貴に値段や入金の頻度などの最低値を聞いておく。
最低以下で決めないためと、現場で困らないためだな。
そして、出来るだけ最高額になるように話をもって行き、
相手に最終的には決めさせる。
後は、沟通技巧とか色々あるな。」
「すごいㇲね! 龍哥、そんな技巧があって
本土の工場をどうしてやめたんㇲか?」
「良い工場長で、将来の道筋も見せてくれていたんだが、
日本人と比べると、四十になっても安いんだ。」
「龍哥、今は?」
「はっ、そんなにゎ、変わらねぇな。 香港に来れただけましか。」
「あ! あそこㇲ、十二味ㇲ。」
「红鼻子は、居そうか?」
店の奥を覗いて、
「龍哥、居まㇲ。 奥で飲んでまㇲ。」
「よし、行くぞ。」
テーブルをよけながら、奥に向かい、
红鼻子の座っているテーブルの椅子を引き、
「ここ座らせて貰うがいいか?」
「うん? なんだ、Dじゃないか、何か用か?」
「俺は、こいつの兄貴格の龍と言う。
商売の話があるんだが、いいか?」
「儲け話なら、いいぜ。」
「今、天使の粉はどうなんだ?」
「入荷が無くて、本土の安物しかねぇな。
上物なら、売れるぞ。」
「300gなんだが?」
「多いな、幾らなんだ?」
Dが红鼻子に耳打ちする。
「はっ。そんなに高いと、一括じゃ無理だな。」
考える振りをしながら、少し間を置き
「半分ずつの二回払いじゃ、どうだ? 物を渡すときに半分、
一か月後に半分で行けねーか?」
「うーん、難しいな。」
Dに合図をすると、Dが耳打ちする
「うん? その値段なら、300g受けるぜ。」
「よし、D、乾杯だ。ビールを頼め。」
軽く飲んで、十二味を後にする。
「龍哥、龍哥の言った通りで上手くいきましたㇲ。」
「まぁ、こんなもんだよ。」
「すごいすね、後、300gㇲ。」
「後の売人はどこに居そうだ?」
「狂犬の明は、この時間だと、本部の近くの屋台で
飲んでいると思いますが、
もう一人の売人、南進の居場所はわかりませんㇲ。
二三日中に調べときまㇲ。」
「まぁ、とりあえず狂犬の明に会おう。
上手くするとノルマが達成するかもしれん。」
そう言いながら、本部に向かう。
( 第9回/第1672回 )
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