間違いを許せない人間社会への恐怖心 - わたしがSally Carrolというペンネームを名乗ることにした理由。
初心を忘れたくないなと急に思い立ったので、noteでなぜわたしがSally Carrolという名前を使っているのか?について、わたしの価値観も含めて書き留めておきます。
Sally Carrolという人物。
Sally Carrol(サリー・キャロル)は、わたしが好きな米国作家スコット・フィッツジェラルドの短編小説「The Ice Palace」(氷の宮殿)に登場する19歳の女性の名前です。
「氷の宮殿」について簡単に。
Sally Carrolはアメリカ南部・ジョージア州の最南端のタールトンという町で生まれ育ち、暖かい気候と人間的・情緒的な町、そしてその町に暮らす人々を家族のようにこよなく愛している。若さゆえの冒険心・好奇心も強く、北部出身のハリーという男性と婚約するのだが…。
(※短編ゆえ、これ以上書くとネタバレになります。興味を持たれた方は本当にすぐ読み終われるほど短いのでぜひご一読を。)
わたしが思うSally Carrolの魅力。
わたしがnote執筆にあたり彼女の名前をペンネームとして借りたのは、彼女の持つ価値観への共感と、彼女にあやかりたい気持ちからです。
憧れポイント①
彼女はSallyと呼ばれるのを嫌がり、必ずSally Carrolと(2つのファーストネームを重ねて)呼ばせています。こう聞くとこだわり強めでやりにくい相手のような感じもするけれど、自身の名前に対してあるべきアイデンティティを感じ、ここまでのこだわりを持てるのはいいことなんじゃないかと心から思っています。
わたしは当然ながら生粋の日本人なので、ファーストネームが2つある感覚は分かりません(あったらいいなとは思います)。わたしは結婚・離婚を経て苗字がコロコロ変わり、名前というものにアイデンティティを預けることそのものがよく分からなくなりつつあるのです(どちらの苗字で呼ばれても自分だと認識はする一方で、何だかどちらも自分じゃないような、しっくりきていない自分がいる)。1つしかないファーストネームはもちろん親がつけてくれたものだけれど、音としてはよくある名前だから(特に同世代の)人とよく被って、同じ名前の人がいるコミュニティ内でどう呼び分けてもらうのがいいか?と密かに心の中でいつも悩んでいます。
結果、人に「こう呼んで」って言えるものがないわたしはあやかりたいのです。Sally Carrolの持つ、ある種のこだわりの強さに。
憧れポイント②
明るさとアンニュイさが魅力の金髪ボブの美女で正直モテなくもないSally Carrol。そんな感じなのに好きな場所はまさかの「墓地」。墓石に彫られた名前から南北戦争で散っていった人の人生に思いを馳せて涙してたりするのです。何それ可愛すぎるんですけど。ギャップ萌えです。
わたしもけっこう見た目からは「意外」と言われるけれど仏像好き・お寺や神社仏閣好きなので(※一度会社で同僚と雑談中に奈良の大仏と鎌倉の大仏の違いを力説してちょっと引かれた経験あり)、なんとなく彼女と近しい感性を持っているというか、同じ時代に生きていれば友だちになれそうな気がするのです。
なぜSally Carrolの名前をペンネームとして拝借したのか。
わたしの個人的な価値観ですが、わたしは人間的な感性や情緒的な結びつきなしに、人間の未来が繁栄していくことはないと思っています。
確かに社会を束ねるうえで、規範や道徳、秩序は必要です。
たとえば人間的な感情が根底にあるからといって、人を傷つけたり命を奪ったりすることなんかを正当化するつもりはもちろんありません。
ですが、社会や組織の持つ「正しさ」の基準は昔よりずっとずっと厳しく研ぎ澄まされてしまっていて、些細なことでさえ「間違いを許さない」「はみ出し者をよしとしない」社会に生きることが、単純にわたしは怖いのです。
非常に極端な表現をすると、
人間的・情緒的な理由で人を殺めるひとよりも、人間的・情緒的な意識が朦朧とした状態で無自覚にSNSでひとを死に追いやる人間のほうが、わたしにははるかに怖いのです。
わたしは、顔や態度に出してしまえば社会や組織では生きにくいであろう自分の人間的な感性や情緒を、隠して上手に生きようと努めるのではなく、あえて表に出して生きていきたい。そうしなければ、人間に未来はないと思っているから。もちろんわたし1人がそれをやったところでただの「社会や組織でうまくやれない人間」とみられるだけだし、めちゃくちゃに傷つくこともあると思うけれど、それもしょうがない。だけどどうしたって隠すのはうまくいかない性分だし、何より自分に嘘をつきたくない。
Sally Carrolの名前を拝借したのは、ささやかながら人間の未来に期待したいわたしの思いと、けだるい決意をいつまでも忘れないでいるためです。
改めて、気軽にSally Carrolと呼んでくださいね。