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【第212回】総務省「地域における住民の防災意識の向上(災害教訓の伝承)に関する調査」


質問 総務省の災害教訓の伝承に関する調査について教えてください。

概要

①総務省行政評価局の災害教訓伝承に関する調査の背景
②住民の災害教訓の伝承活動と行政による支援
③地区防災計画に関する事例も紹介

解説

①総務省行政評価局の災害教訓伝承に関する調査の背景

 東日本大震災の教訓を踏まえ、2012年の災害対策基本法改正で、住民は過去の災害教訓の伝承を通じて防災に寄与するよう努めることが規定されました。
 また、国及び地方公共団体は災害の発生・拡大の予防・防止のため、住民の災害教訓の伝承活動を支援することが努力義務として明記されました。
 一方で、過去の災害の記憶等が年々風化しており、住民の災害教訓の伝承活動が行われなくなってきているとの指摘もあります。
 そのような点を踏まえて、総務省行政評価局は、住民の災害教訓の伝承活動の意義・重要性及び市町村による同活動への支援について調査を実施し、2024年8月29日にその結果が公表されました。
 当該調査結果には、災害教訓の伝承を踏まえた地区防災計画づくりに関する記述もあり、コミュニティ防災全般の参考になると思われることから、以下、その概要を簡単に紹介します。

②住民の災害教訓の伝承活動と行政による支援

 近年、自然災害に遭った地区の住民から、避難行動等について聞いたところ、安全な高台への再避難等災害教訓が住民の主体的な避難行動に結び付いた例が把握されました。
 改めて、災害教訓の伝承は、住民の主体的な防災行動につながり得る重要なものであると確認されたところです。
 一方で、市町村による住民の災害教訓の伝承活動への支援の状況を市町村に聞いたところ、どう行えばよいか分からないとする市町村がある一方、児童生徒への防災教育や住民主体の活動に災害教訓を取り入れたもの等他の市町村の参考となり得る様々な支援例が把握されました。
 また、自然災害伝承碑について、国土地理院は、市町村による活用を促進していますが、調査の結果、自然災害伝承碑をどう活用してよいか分からないとする市町村がある一方、他の市町村の参考となり得る様々な活用例が把握されました。

③地区防災計画に関する事例も紹介

 総務省では、本調査で把握した他の参考となり得る市町村による住民の災害教訓の伝承活動への支援例や自然災害伝承碑を活用した支援例を、報告書の資料編としてまとめています。
 例えば、神奈川県平塚市の「自治会による避難経路を検討する図上訓練で、過去の被災箇所等を記載した地図の作成を支援することにより、地区の災害教訓の伝承活動が促進された例」では、平塚市が自治会連合会の地区防災計画策定を支援するために実施した防災まち歩きや図上訓練の事例が紹介されています(同報告書資料編55頁)。
 そして、市町村に対し、本報告書で取り上げられているような災害教訓伝承・自然災害伝承碑活用の意義・重要性が改めて周知されれば、市町村が地域特性を踏まえた支援内容を検討する上で参考にしやすくなり、支援が促進されると述べています。

文献
・総務省行政評価局,2024,「地域における住民の防災意識の向上(災害教訓の伝承)に関する調査の結果」.
・総務省行政評価局評価監視官(内閣、総務等担当)室,2024,「地域における住民の防災意識の向上(災害教訓の伝承)に関する調査の結果について」内閣府防災担当『広報誌ぼうさい』(111).

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