【第74回】「国土交通白書」閣議決定
質問
国土交通省の「2022年版国土交通白書」では、災害の激甚化・頻発化についてどのように書かれていますか。
概要
①「2022年版国土交通白書」閣議決定
②地球温暖化の影響による異常気象
③リスクエリアの考察
④流域治水
解説
①「2022年版国土交通白書」閣議決定
2022年6月21日(火)に「2022年版(令和4年版)国土交通白書」が閣議決定され、公表されました。
同白書の第Ⅰ部では、「気候変動とわたしたちの暮らし」をテーマとしています。気候変動に伴う災害の激甚化・頻発化や社会情勢の変化を踏まえ、暮らしの脱炭素化に向けた取組の課題と方向性を整理し、気候変動時代の暮らしを展望しています。
以下は、第Ⅰ部の「序章 気候変動に伴う災害の激甚化・頻発化」の要旨になります。
② 地球温暖化の影響による異常気象
2011~2020年の世界の平均気温は、1850年~1900年の工業化以前と比べ1.09度上昇しており、更なる気温上昇が予想されています。そして、1980年以降の気温上昇を基に算出すると、例えば、2019年の東日本台風は、温暖化の影響を除いた場合に比べ、総降水量が10.9%上昇しました。さらに、50年に1度の大雨の発生確率は、温暖化により約3.3倍になりました。
このように、近年、異常気象は激甚化・頻発化しており、長期的な傾向として雨の降り方が変化しています。
この気象災害をもたらす大雨・短時間強雨の頻発化の背景には、地球温暖化の影響があると考えられています。
近年、世界中で災害をもたらす異常気象が毎年のように発生し、これにより、世界各地で豪雨災害等の気象災害による大きな被害がもたらされています。日本でも、「平成30 年7月豪雨」、「令和元年東日本台風」、「令和2年7月豪雨」をはじめ、毎年のように豪雨災害による被害が生じています。
③リスクエリアの考察
気候変動によるリスクは、自然現象による災害外力「ハザード」(Hazard)、「脆弱性」(Vulnerability)、「曝露」(Exposure)の3要素が相互に作用して決定するという説があります。
具体的には、「ハザード」とは、台風や豪雨の頻度等を指し、「脆弱性」とは「ハザード」に対する感受性の高さや適応能力の低さを指し、「曝露」とはハザードの大きな場所に人や資産が存在していること等を指します。
都市化の進展により「ハザード」に晒される曝露対象の人口や資産が増大していますが、気象災害リスクに適切に対応してくためには、曝露対象となるリスクエリアの現状を考察する必要があります。
この点、日本は、国土が急峻なため、洪水・土砂災害リスクの高いエリアに多くの人々が居住しています。そのため、人々が洪水・土砂災害へのリスクに晒されています。また、65 歳以上の単独世帯が増加傾向にあり、今後も増加すると推計されています。近年、コミュニティの機能低下等地域の防災力が低下する中で、避難の遅れ等社会的な課題にもつながります。
気候変動による気象災害リスクに対応するため、「脆弱性」に対応する治水計画、高潮対策のようなインフラ計画、「曝露」に対応するハード・ソフト一体となった流域治水の取組等の防災・減災対策が重要です。
④流域治水
気候変動による水災害リスクの増大に対応するために、集水域と河川区域のみならず、氾濫域も含めて一つの流域としてとらえ、流域に関わるあらゆる関係者により、地域特性に応じて、ハード・ソフトの両面から流域全体で治水対策に取り組む「流域治水」の推進が重要です。
また、「曝露」への対策として、氾濫域における土地利用や住まい方についての対応も必要です。
例えば、災害リスクを抱えた地域において発災前の段階からより安全なエリアへの住居や施設の移転、居住誘導、居住の安全性強化等の防災対策を推進し、安全なまちづくりを促進していくことが重要です。