【第210回】【23年度内閣府モデル地区】大阪府岸和田市畑町の地区防災計画づくり
質問 大阪府岸和田市畑町の地区防災計画づくりについて教えてください。
概要
①大阪府岸和田市畑町は内閣府の2023年度のモデル地区
②畑町の地域特性・社会特性
③だんじりの人間関係を活用した地区防災計画づくり
④防災活動の活性化に向けた工夫
解説
①大阪府岸和田市畑町は内閣府の2023年度のモデル地区
大阪府岸和田市畑町は、内閣府の2023年度の地区防災計画モデル事業の対象地区の一つです。
この対象地区では、内閣府の地区防災計画アドバイザリーボード(座長 加藤孝明東京大学教授)のメンバーで、地区防災計画学会の幹事でもある澤田雅浩兵庫県立大学准教授が指導を行っています。
②畑町の地域特性・社会特性
畑町の人口は、3,012人であり、世帯数は1,210世帯です。高齢化率は27.9%で、各世代同じくらいの人口がいて、子供を含めた若い世代の人口も少なくないという特徴があります。
当該地区には、洪水、高潮、津波等による浸水想定エリアは含まれていないことから、地震災害が想定災害となっています。
③だんじりの人間関係を活用した地区防災計画づくり
ところで、当該地区では、毎年10月の東岸和田だんじり祭りで地車の曳行を行っており、その運営が大きな地域活動になっており、毎年、この祭りに向けて一年をかけて住民が協力しあって準備をしています。
この祭りには、各年代に役割があり、上下関係や組織もしっかり構築されています。例えば、町会の代表者で、だんじりの前方に添乗する「町会長」、世話人から選出される曳行の最高責任者でだんじりの前方に座る「曳行責任者」、世話人を経験した年輩者・長老として、後進を指導する「相談役・賛助員、参与」、町全体の取りまとめ役で他の町との交流を進める「世話人」、事故防止のためにだんじりの前後につく「若頭」、だんじりの舵を担当する「組」、だんじりの曳き手の中心である「青年団」、安全な綱の前方部分を曳く「少年団・子ども会」等の役職・役割があります。
当該地区では、このような地区の特性を踏まえて、地区防災計画の作成をはじめとする防災活動に、この祭りの人間関係を活用しようとしています。具体的には、だんじりを運営する祭礼団体と自主防災組織、町会が連携を取るようになって、事前調整を進めることによって、避難所開設に当たっては、町会よりも祭りの団体ごとに防災活動の役割を決めるほうがいいという話が出ています。祭礼団体が、その特性を活用して災害時の役割を引き受けられる能力を持つようになっているようです。
④防災活動の活性化に向けた工夫
当該地区の町内会の加入世帯では、家族構成、年齢、要介護者等の情報を記載する「家族カード」を配布し、3年に1回更新しています。そして、町内会への加入世帯からのカードの回収率は、ほぼ100%となっています。
一方、当該地区は、町会へ加入していない住民との関わり方に苦慮しています。
そこで、だんじりの粗品に「無事ですタオル」を出したり、防災訓練には、町会未加入者に参加してもらい、町内会加入への勧誘の機会とする等工夫が重ねられています。
また、無事ですマークを用いた安否確認訓練と一時集合場所の確認を実施する中で、隣近所の声掛け、一時集合場所に集まるルール等の隣組主体で行う避難方法について議論が交わされるようになっています。
文献
・田口陽佑・澤田雅浩,2024,「令和5年度モデル事業地区 岸和田市畑町の取り組み 祭礼団体との「防災の地域活動化」」2024年11月13日地区防災計画基礎研修資料.