見出し画像

【第211回】【23年度内閣府モデル地区】岡山県矢掛町中川地区の地区防災計画づくり


質問 岡山県矢掛町中川地区の地区防災計画づくりについて教えてください。

概要

 ①岡山県矢掛町中川地区は内閣府の2023年度のモデル地区
 ②中川地区の地域特性・社会特性
 ③西日本豪雨の経験を踏まえ、地元企業と連携した地区防災計画づくり

解説

①岡山県矢掛町中川地区は内閣府の2023年度のモデル地区

 岡山県矢掛町中川地区は、内閣府の2023年度の地区防災計画モデル事業の対象地区の一つです。
 この対象地区では、内閣府の地区防災計画アドバイザリーボード(座長 加藤孝明東京大学教授)のメンバーで、地区防災計画学会の理事でもある磯打千雅子香川大学准教授が支援を行いました。

②中川地区の地域特性・社会特性

 中川地区は、矢掛町に7つある小学校区の一つです。
 同地区の人口は1,564人、世帯数は481世帯、高齢化率は42%で、少子高齢化が進行しています。
 同地区は地区の中を東西に小田川が流れており、洪水浸水想定区域があります。また、この小田川堤防の北側に小学校、公民館,保育園が近接しています。
 川北は、東西に旧山陽道が走り交通の要衝として栄えており、南北の平坦地は小田川の恵みにより農地として利用されていますが、小田川が砂礫(されき)の堆積により川底が周辺の平面地よりも高くなった天井川であるため、昔から内水等による水害に悩まされてきました。昭和の築堤までは、毎年豪雨による水害に悩まされ、阿部山系の土砂災害による砂防工事等の記録が残っているほか、大正時代には、丁老池の堤防決壊の記録があります。最近では、2018年の西日本豪雨で、土砂災害6件、床上浸水66件の住家被害があり、これらの小学校、保育園及び公民館も被害を受けました。

③西日本豪雨の経験を踏まえ、地元企業と連携した地区防災計画づくり

 内閣府の地区防災計画モデル事業では、同地区の自治協議会、自主防災会が、実施主体となって、内閣府、岡山県、矢掛町等の支援も得て、計画づくりのための検討が行われました。
 この事業では、毎回70人ほどの住民が参加して、ワークショップが実施されました。  
 そして、洪水浸水想定区域外にある地元企業(平野鐵工所)の施設を一時避難場所として活用することとし、地域住民の代表と地元企業が、一時避難場所に関する協定を結びました。
 また、地元の矢掛高校の生徒が、検討の際に、防災チラシを紹介する等世代を超えた連携が図られました。
 この他、西日本豪雨の教訓を踏まえて、日頃の備え、要支援者対策、災害時の避難、日頃の近所づきあい等をテーマにクロスロードゲームを用いて意見交換が行われ、平野鐵工所への避難時に持ち出すもの、避難所として利用する場合のルールについても検討が行われました。そして、「中川地区防災計画(案)」の検討と連携して、個別避難計画作成に向けて、避難経路、避難先の確認、要支援者の避難方法等について検討が進みました。
 その結果、2024年3月に矢掛町で初めての地区防災計画が、中川地区で作成されました。また、モデル事業を通じて、住民だけでなく、行政や事業者も含めて、関係者のコミュニケーションの強化が図られました。

中川地区防災計画の内容
1 地区防災計画作成にあたって~災害を自分事として考えよう~
 「自助」,「共助」を着実に推進するために,知識と意識を向上させ地区防災計画に基づく施策に取り組むことを記述
2 地区の特性
 24町内会の特性と3自治会の特性,中川小学校から見た強み,弱み,危険な場所を記述
3 中川地区で予想される災害と避難所
 予想される主な災害(雨、地震、風)
 避難所の場所
4 防災体制
 ①防災体制、②災害警戒時、③応急対策時、④復旧・復興時
5 組織図
 組織図と役割
 (会長-副会長-4班(消火班,通報避難誘導班,救出救護要配慮者班,炊出し給水救護物資班)
 中川地区自主防災会組織図と連絡網
6 防災タイムライン
 主な災害等の状況、町、自治会、町内会、地域住民の動きを記述
7 防災訓練の実施と検証
 避難時の訓練の例、避難後の訓練の例、応急訓練の例、毎年防災訓練を行うことが重要、訓練の結果についての課題把握と改善
 これまでの中川地区における防災講習会、防災訓練の列挙
 備えておきたいもの,もって逃げるもの
8 みんなで決める 住民主体の防災
 地区防災計画は、自分たちでつくるもので、行政等がつくるものではない。
 計画を作り上げるのが、最終目標ではない。
 自分たちの計画をつくることで地域の防災力を高めること
 計画に基づいて訓練をし、見つかった課題を新たに改善していくこと
 行動(訓練など)を繰り返すことが大事
 平常時は,身近な行動で地区防災計画を楽しんで行うことも大事

文献 
・岡山県矢掛町総務防災課,2024,「矢掛町中川地区の地区防災計画づくり」『広報誌ぼうさい』(110).
・岡山県矢掛町,2024,「矢掛町中川地区における地区防災計画作成の取組について」2024年11月13日地区防災計画基礎研修資料.
・2023年12月5日『山陽新聞』「西日本豪雨被災の中川地区 地区防災計画理解深め作成を 住民らワークショップ 内閣府モデルに」.

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集