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【第209回】【23年度内閣府モデル地区】山梨県山梨市日川地区(上栗原区)の地区防災計画づくり


質問 山梨県山梨市日川地区(上栗原区)の地区防災計画づくりについて教えてください。

概要

 ➀内閣府の地区防災計画モデル事業
 ➁山梨県山梨市日川地区(上栗原区)の地区防災計画づくり
 ③地域特性・社会特性—明治40年の水害経験—
 ④マイタイムラインの活用と古い寺院との連携

解説

➀内閣府の地区防災計画モデル事業

 内閣府の地区防災計画モデル事業(地区防災計画作成モデル創出事業)では、内閣府から派遣されるアドバイザーの協力の下,住民等と地域の計画作成支援者による計画素案作成に向けたワークショップ等を実施し,地区防災計画の作成を推進しています。
 2024年度から開始されたこのモデル事業は、2024年度までに全国約90地区で実施されてきました。
 そこで、今回から3回に分けて、2023年度のモデル事業の対象地区の取組について紹介します。

➁山梨県山梨市日川地区(上栗原区)の地区防災計画づくり

 2023年度の内閣府のモデル事業の対象地区の一つに、山梨県山梨市日川地区上栗原区(かみくりばらく)があります。
 同地区のアドバイザーは、吉川忠寛防災都市計画研究所所長でした。

③地域特性・社会特性—明治40年の水害経験—

 上栗原区は、山梨市の南東部に位置する比較的平坦な果樹地帯で、ブドウや桃の栽培が盛んです。人口は392名、世帯数は159世帯、高齢化率は51.4%です。なお、同区内の消防団員数は14名、農業従事者は42世帯で、全世帯の1/4程度になっています。
 同区は、南側を流れる日川(ひかわ)と北側を流れる重川(おもがわ)が、笛吹川(ふえふきがわ)に合流する三角地帯にあり、ほぼ全域が、洪水による浸水想定区域となっており、指定避難所が、その中に含まれています。
 明治40年(1907年)には、日川及び重川の堤防が決壊し、笛吹川の瀬が変わるほどの大水害になりました。そして、同区の大部分に濁流と土砂が流入し、甚大な被害を受けました。
 現在では、水害の歴史を知る人々も少なくなり、護岸工事の整備とともに水害に対する備えの意識が薄れつつあります。そのため、同区の自主防災会が、県や市等の防災講座をきっかけとして、2022年12月に区の役員等によって組織され、地区防災計画の作成に向けて活動するようになりました。
 そして、定期的に地域主体の学習会を行いながら、防災知識や防災意識の向上を図りつつ、地区防災計画の作成に取り組んでいましたが、人によって受け取り方が違うことや、イメージしづらい部分があること等が障壁となり、計画の作成が進んでいませんでした。

④マイタイムラインの活用と古い寺院との連携

 2023年度に内閣府のモデル事業の対象地区となったことを受けて、内閣府や専門家から助言を受けながら、水害における避難対策について検討しました。同区では、当初は。厚い資料の入った計画が理想的な形だと考えていましたが、検討の中で、ポイントを簡潔にまとめ、日頃から確認できる場所に貼っておけるようなものにすることが検討されました。
 また、住民への調査を経て、同居家族、避難行動要支援者の人数、一緒に避難したいペットの数、自宅の住所、自宅の浸水深から想定される避難の条件等を洗い出し、地図に書き込みながら、避難先、避難手段、避難経路、避難のタイミング等について検討し、避難できない理由を探りました。
 さらに、避難行動計画(マイタイムライン)の様式を利用して、地区の住民が、発災時に備えて、時系列で対応すべきことを整理して作成していた「マイ・タイムライン」を踏まえて、避難開始のタイミング、避難手段、避難経路、避難場所等の避難の課題を住民が主体となって洗い出し、その避難課題を踏まえて、コミュニティのタイムラインを作成し、コミュニティの共助で対応することにしました。そして、警戒レベルに応じて自主防災会等が実施する避難対策を定めていきました。なお、検討の中で、避難しなければならない地区の多く人が、「自宅は安全」と考えていることが明らかになりました。
 なお、避難施設の確保が課題となったことから、やや高台の浸水しない場所にあり、駐車場、休憩施設、井戸、非常用電源等避難施設として活用可能なリソースが揃っている古い寺院を避難施設としての活用することにしました。また、隣接する自治体への避難等については、計画素案に要望として盛り込むことになりました(2024年度中に計画提案実施予定。)。

文献
・武井淳,2024,「地区防災計画づくりの取組① 山梨市日川地区上栗原区の地区防災計画づくり」『広報誌ぼうさい』(109)
・武井淳,2024,「山梨県山梨市上栗原区の地区防災計画づくり」2024年11月13日内閣府「地区防災計画基礎研修資料」.


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