ホテル文化に学ぶ(5)
<理想的なホテル利用法>
先ず、「ホテルじゃお金を払うのだから、無理難題言っても勝手だろ!」と豪語する人は、グローバル標準のホテル利用をご遠慮願いたい。
連載の中の<礼儀作法と所作>で記したように、「紳士淑女」への接遇が理解できるお客は、その人なりに「理想的なホテル利用法」を見出し、ホテル側の「紳士淑女」として接遇対象になっている。よって、ある程度の歳月を経て相互信頼が生まれると、フレンドリーな「常連客」としての立場を確保することができる。
さて、これからホテル玄関に入ることに。二重扉となっている正面玄関。扉が開けば、そこは別天地。四季を通じて常春のような、すこぶる過ごしやすい空間として、室温・湿度が一定に維持されている。方や、ベルボーイさんは笑顔で来客応対に大忙し。車の誘導や施設案内などに東奔西走している。
施設はどのようにあるべきか!?・・・最重要チェックポイントは、レストルーム(トイレ)である。トイレが美しく管理されていないホテルやレストランは、二度と足を運べない。食を初めとする全ての衛生面に通じるものなので、レストルームを先ずチェックする必要がある。勿論、非常口の確認も必須。
次に、宿泊するための各部屋について・・・。ツイン、ダブル、シングル、エクゼクティブルーム、インペリアルルームなど、大なり小なり各種の部屋が揃っている。星の数が多いホテルは、快適なバスルーム、疲れを癒す大きなベッドを備えており、入室早々、一気に生活レベルがグレードアップしたかのような気分に浸ってしまう。
人気シティホテルやリゾートホテルでは、長期滞在でも食べ尽くせないほどの美味しい料理が揃っている。<和洋中融合の食文化>で記したように、フレンチ、イタリアン、中国料理、和食、寿司、スイーツと、世界の料理群を食せるのがたまらない。多勢で円卓を囲んで食す中国料理は豪快だ。ナイフとフォークをしなやかに使い、ベストパートナーと食すフレンチは、すこぶるロマンチック。その他、リーズナブルだが、たらふく食べれるイタリアン、加えて、あっさり目の和食や寿司を思う存分頬張ることもできる。
熊本ホテルキャッスルは、「美味しいホテル」を目指すシティホテルとして、県内外に多くのファンを持つ。実は、筆者の食文化のスタンダードの礎を築いてくれたホテルの一つでもある。お陰様で、あちこち国内外を取材する時に、同ホテルで育まれたグルメのスタンダードが功を奏し、他の五つ星ホテルでの会食やパーティーなどにおいて、一切恥を掻くことはなかった。同ホテルのグルメは食のスタンダードの「基本書」の第一巻でもあり、質の高い生きた「ホテル文化と食文化」を体感させて頂いた。
ホテルの利用法として、次のようなことをシミュレートしてみた。
例えば、急ぎでお礼の贈り物をする場合、ホテルメイドの菓子やレトルト食品、その他グッズなどを、伝票1枚書くだけで、全国津々浦々へ簡単に宅配を依頼することができる。また、糖尿病やその他持病があり、摂取危険な食材などの相談をすれば、可能な限り宗教的な食材制限に対して、また、アレルギー体質を刺激しないように、ヘルシーな料理(ブルーサークル)をサーブしてくれる。
ビジネスで急ぎのファックスなどを送る時に、ホテルスタッフへ依頼すれば、しっかりと対応してくれる。何人もの秘書を随行しているかのように、日常と比べ物にならないほど、心地良いビジネス環境が作れる。自分自身のビジネスライフを、上手い具合にホテルの仕組みや施設と噛み合わせると、誰しもそれなりに「理想的なホテル利用法」(自分流)が作れることになる。
畢竟、安心安全、快適で信頼のおけるホテルとの出逢いがあり、そこで「理想的なホテル利用法」を発見できれば、至福の極みと言える訳だ。