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【CEO対談】OKR導入から2年半。運用の違いから見る組織づくり

今多くのスタートアップが導入している目標管理手法、OKR。

複数ある目標管理手法の中で、なぜOKRを導入したのか。その背景には、組織や事業づくりに対する経営者の想いがありました。

今回はOKRを導入して約2年半が経とうしている弊社代表の梶原が、TVISION INSIGHTS代表の郡谷 康士さんと、ぶっちゃけトークを展開。組織のリーダーはどのようにOKRに向き合い、OKRのどこに魅力を感じているのでしょうか?

「3割達成」の目標は厳しすぎ?

梶原:チカクはOKRを導入して約2年半が経ちます。TVISION INSIGHTSさんも同時期にOKRを導入したとのことですが、OKR導入のきっかけは何だったんですか?

郡谷:会社のメンバーが10人を超えてきた頃から「そろそろ目標管理をしっかりやらないとな」と思い始めて。そのときに、リクルート時代に経験していたミッションツリーか、OKRのどちらかの手法を使おうと思ったんです。

トップダウン型ではなく、みんなで一緒に取り組むようなボトムアップ型の目標管理を求めていたので、イメージに近かったOKRを選択しました。

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▲郡谷 康士さん(TVISION INSIGHTS株式会社/代表取締役社長)

梶原:導入のきっかけはうちも同じです。会社の人数が10人ぐらいになるまでは、目標管理をきっちりと体系立ててやってなかったので、このままじゃいけないなと(笑)。細かい経緯は、以前noteに書いた通りです。

郡谷:チカクさんのやり方を参考にしたいなと思って、読ませてもらいました。

そのときにすごいなと思ったのが、チカクさんは3割くらいしか達成できない高い目標を設定しているじゃないですか。僕たちは目標の7〜8割で達成にしてるんですよ。

梶原:なるほど。OKRの記事や書籍でも7割ぐらいが一般的な数字ですよね。

郡谷:ストレッチした目標を立てて、それに向かう中で成果を出すというよりも、「OKRは絶対達成する」というモチベーションのほうが社内では大きい。なので、3割しか達成しない目標を設定することは、今の時点では考えられないですね。

梶原:そうなんですね。僕らはいろいろ試した結果、3割に落ち着きました。なぜそれがいいと思っているかというと、7割と、3割では目標として目指す角度が違いますよね。3割の方がより高い目標になるので、かなり急な角度になると思っていて。

僕らの会社のフェーズは郡谷さんの会社よりもちょっと手前のフェーズなので、まだまだ急な角度で挑戦しないといけないという状況でもあります(笑)。僕自身がそう思っているし、チーム全体も同じ意見ですね。

郡谷:なるほど……。でも、3割で達成の目標だと、もちろん達成できないこともあると思います。そのときに、社内ではどんなコミュニケーションが取られているんですか?

梶原:もちろん達成できないこともあるので、コミュニケーションの面では『Winセッション』を大事にしています。KR(key results:主要な結果)の達成に向かう中で、できたことをドヤ顔でシェアする場を毎週金曜日に設けています。

「ムーンショット」を目指しているわけですから、月にたどり着けない可能性は十分ありますよね。だからこそ、「月に行けなかったけど、ロケット技術身についたよね」というような、“副産物”を大事にする機会は必ず作るようにしています。

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▲チカクのWinsession風景。週1回、ご飯を囲んで成果を共有し合います。

郡谷:Winセッション、すごくいいですね。

OKRって事業成長のためだけにやるものではなくて、メンバーの思いを1つにする手段でもあると思うんです。確かにWinセッションのような機会があれば、よりチームの結束力も強まりますし、ストレッチした目標設定にも耐えられるのかもしれません。

ストレッチした目標を掲げたいけど、着実に目標達成もしたい……

郡谷:僕は、目標を達成する瞬間があるからこそ、事業って成長していくんじゃないかと思っているんです。でもその一方で、事業成長のためにはストレッチした目標設定が必要とも言える。この2つの要素をどうするかが、OKRの運用で一番悩ましい点です。

梶原:その話よくわかります。どちらも大事なので、そのバランスをどうするかは自分も常に悩んでいます。

ただ、本当にハイパフォーマンスな人って、その2つを両立させませんか?例えばソフトバンクの孫さんは、めちゃくちゃチャレンジングなこと掲げておきながら、かなりの確度でやり切っちゃいますよね。そういうのって、すごく大事だと思っていて。前職でも本当に凄い人はそういうタイプでした。

郡谷さんが仰った2つのことは、ついトレードオフの関係で考えがちなんですけど、「どうやったら両立できるんだろう?」と考え、実行することにエネルギーを使っていくことも大事なことだと思っています。

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郡谷:確かに、それがストレッチした目標を掲げる本来の意味ですよね。トレードオフではなく、どちらも成し遂げる方法を探して、トライする。

梶原:そう思います。もっと言えば、OKRだけでなく、ベンチャー企業そのものについても同じ話だと思っています。

「世の中変えるぜ!」みたいな、めちゃくちゃ高い目標を掲げたら、それを本気で実現しようと日々全力を尽くしているのがベンチャーだと思うので、「やらなくてもいいや」って思いながら、とりあえず高い目標を掲げるっていうのは、すごくおかしな話かも知れません。

郡谷:その通りですね。

梶原:「そんなのできるわけないじゃん!」って周りが思っていることを、本気でやれると思ってやりにいって、本当にやっちゃうのが大事なことなのかなと。僕がOKRを好きなのって、そういうところなんだと思います。

ちなみに、TVISION INSIGHTSさんは、OKRと評価って結びつけていますか?

郡谷:別々です。開発であればロードマップ通りやれたかとか、セールスであれば数字を達成できたかとか。評価は別軸で行なっています。

ただ、評価とOKRの両立は、人事にとって一番の悩みどころですよね。「OKRが評価と紐づかない限り、ファーストプライオリティがOKRに向かないのでは?」という議論は常にあります。

梶原:難しいですよね。うちはまだ人数が少ないので、あまり齟齬はない状況ですが、これから組織が大きくなったときには、再構築は必要だと考えています。

フォロワーシップがOKRの基盤を支える


郡谷:うちは、メンバーに「問題は何?」と問いかけて、問題とは直接関係の無い人が、助けに行くっていうモードは強いスタイルなんです。

梶原:それって、すごい大事ですよね。「何か助け合うことない?」と言い合える雰囲気づくり、いいですね!

郡谷:そうなんです。基本的に、OKRのいくつかは、1人では出来ないことじゃないですか。

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例えば、チームを拡大するタイミングなら、採用人数が会社のKR1だったりするんですよ。でも、採用を詰めるというよりは、「全社採用をするには?」「人事以外の人はどうやって採用する?」「何を助けて欲しいの?」とか。他の人のやれることを考えよう、という動きになるんです。人事担当者1人にタスクを詰めたところで、抱え込むだけで問題解決しないですから。

梶原:おっしゃるとおりですね。うちも結局、僕というよりは、僕以外のメンバーが「どういう助けがあればいいか」「こんなことやれないか」「自分こんなことできますよ」みたいに、全員の中で話して出てきます。基本的にKRも「1人の人」の力に依存するというよりは、KRによって大方のメンバーやリーダーが決まっていて、そのチーム内でフォローし合っています。

基本的にはリーダーが、メンバーのアイデアに対してコメントして行く形で。メンバー以外の人からも「こんなこと手伝えるよ」とか声かけてもらって。まさに、同じことがうちにもありますね。


「何にフォーカスするか」を考える習慣が身につく

郡谷:うちの会社はメンバーが今30人ぐらいいて、各チームでOKRを作っているので、KRが計18個もある状態なんです。

今は各チームで1つのOに紐付くKRを3つにしているんですけど、4つ作っていた頃は、途中から2つに絞るチームもあったので、もうちょっと統合してもいいのかなと思っています。

梶原:確かに、やるべきことがたくさんあるときに何にフォーカスするかって、すごく大事ですよね。

それに関するApple時代の印象的なエピソードがあるんです。当時の上司がスティーブ・ジョブズとのミーティングに出たときのこと。「今の自分の組織のプライオリティを10個書き出してほしい。そして、下の7つを消して、上の3つにだけフォーカスしろ。それがフォーカスするということだ。」と言われたそうなんですね。

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集まっているのは各地域の最高責任者ですから、10個全部が超重要なタスクなんですよ(笑)。でも、それぐらいやることを絞るからこそ、エネルギーが注ぎ込まれるんだと思います。

郡谷:同感です。経営で重要なのは、何を「やらないか」を決めることですからね。

梶原:チカクを立ち上げてからも、「どうやったらみんながやるべきことにしっかりフォーカスできるだろう?」とずっと考えていて。OKRを知ったときに、「これを使えばみんながフォーカスできる!」と感じましたね。

郡谷:OKRを導入すると、リーダーだけでなくメンバーも、「何が重要なのか?」を常に自分に問いかけることになりますよね。複数のKRのインパクトの測定や、コストパフォーマンスなどを包括的に考える癖を身につけられるのは、OKRのいいところだと思います。

もう1つOKRのメリットだと感じるのは、チーム間のコミュニケーションが円滑になること。例えば同じプロジェクトでも、営業と開発で優先順位がズレてしまうケースがあるんですけど、OKRに基づいて会話するとすんなり解決できるんです。

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梶原:あーなるほど。僕らは今まで会社で1つのOKRでやってきてたので、チーム間のコミュニケーションをどうするかは、近い未来の課題です。

郡谷:他のチームからの頼まれごとをどうしても断らざるを得ないことってあるんですが、単に「できない」ではな無く、「KRの優先順位が下なので、できないんです」と伝える。「あなたが嫌いだから断るわけじゃないよ」というメッセージを正しく伝えられるのは、OKRの良いところだと思います。

梶原:断るって、ともすれば人格否定と紐付いちゃうこともありますもんね。OKRが組織のコミュニケーションに役立っているというのは、とても良いですね!

数十人の規模でも、Googleの規模でも使えるフレームワーク

郡谷:梶原さんは今後もOKRを続けていきたいと考えていますか?

梶原:そうですね。Googleもやっているぐらいですから、会社が成長して大きくなっても、やり続けたいなと思っています。

ただ、何割達成の目標にするかは変わるかもしれません。ずっと3割達成ではなく、そのときの事業規模に合わせた目標設定になると思いますね。

郡谷:僕もOKRは続けたいです。先に言った通り、OKRって単なる目標管理手法ではなく、事業成長や組織のコミュニケーションといった、さまざまな要素をひっくるめて、きちんとやるためのフレームワークだからです。

今も試行錯誤の途中ですが、OKRが組織を良くするものであることは間違いないので、自分たちに合うやり方を模索していきたいですね。

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