読書レビュー #2:新海誠 『言の葉の庭』
梅雨ですね。
雨で服の裾が濡れるのも、ジメジメとした湿気も嫌いですが
雨の音はとても好きです。
だから最近の雨の休日は、家に引きこもってなるべく全ての音を消して
静かに過ごすのがお気に入りです。
...自分、結婚はきっと向いていない。
さて、前回投稿に引き続き、読書レビューを書いてきたいと思います。
1. 作品紹介
(詳しいあらすじはリンク先をご覧ください)
今ではその名を知らない人はいないと言っても過言ではない(?)、新海誠さんの作品です。映画『君の名は』で有名な新海さんですが、「君の名は」以前にもいくつかの作品を発表されています。
その一つが『言の葉の庭』。
雨の日の午前中だけ授業をサボる、靴職人を目指す秋月孝雄
とある事情で有料公園の東屋で、チョコレートをつまみに缶ビールを煽る雪野百香里
映像では表しきれない細かい心情を含めて、小説では丁寧に描かれているのが見どころ...いえ、読みどころです。
2. 読書レビュー(ネタバレ注意)
新海さんの作品はストーリーの完成度だけでなく、映像の美しさでも高い評価を得ています。それは映像から文字の世界に移っても変わりません。
満員電車から吐き出される人々、木々の新緑、不規則な雨音...。孝雄が触れた雪野先生の足の柔らかさまで、まるで自分が見て、聞いて、触れているかのような錯覚に陥りました。
私にみえている景色と、新海さんにみえている景色はだいぶ違うんだろうな...。現実味はあるけれど、どこか儚く美しい。『言の葉の庭』の舞台を巡るのは時間とお金さえあればできそうですが、きっとその世界にたどり着くことはできない。
どうせ人間なんて、みんなどっかちょっとずつおかしいんやけん
雪野先生の先生の陽菜子先生(先生多い)が言っているように、私たちはきっとみんな少しずつおかしい。だって、こんなに個性だとか、多様性だとか叫ばれている世の中にも、たくさんの決まり事や暗黙の了解があるわけで、そこにピタッとはまれない人がいても当然の結果かなって思います。
とはいえ、雪野先生が学校に行けなくなった原因は、その「ちょっとおかしい」のしわ寄せじゃないかなって思いました。誰かの一言、些細な行動、何でもいいから、「ちょっとおかしい」が雪野先生に集まらないようにできたらよかったのにな。
3. お気に入りのシーン
「あんたは!」
「あんたは一生そうやって、自分には関係ないって顔して、」
「ーずっとひとりで、生きてくんだ!」
孝雄が雪野先生に向かって感情をぶつけるシーンです。まっすぐに相手を想った、どこか悲痛な叫び。「孤悲(こい)」ってこういうことなんですかね。
「孤悲(こい)」かどうかは置いといて、なんか胸に刺さる言葉でした。相手を傷つけないように、そして自分を保つために他人と一線を敷く。けど、その行動自体が他人を傷つけるときもあるわけで...。
孝雄の言葉は耳が痛いのですが、ズカズカと相手に踏み込んで大切な何かを汚すよりは、「無関心」と思われて構わないから無難に人と関わる生き方が、私には合っている...気がする...。
やっぱり、他人と関わって生きるって難しいな、と今日もひとり、雨音を聞きながら思います。
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