サンドイッチ事件
ねえこのサンドイッチ食べないの?
とぼくが聞いたら娘はいらないと言うので、持っていても邪魔だし食べちゃおうかとぼくは息子と二人で食べた。
そのサンドイッチはコンビニで買ったもので、3つ入っていて息子はひとつでいいと言うからぼくが二つ食べたのだった。その二つ目を食べている最中に娘がやってきた。
あっ!サンドイッチ食べてる!なんで勝手に食べちゃうの〜!!!
え、だっていらないって言ったじゃない。
あーもー!あとで食べようと思ってたーっ!!
どうもいらないというのはその時食べないという意味で、後ほど召し上がるということだったらしい。とにかく娘に怒りの火がついてすごい剣幕である。
お父さんなんでも勝手に食べちゃう。ひどいよお〜!!
だっていらないって言った…。
言ってない!
娘は大声で泣きながら蹴りや突きをボカスカぼくにかましてくる。ぼくは痛いのでとなりのベンチへ移動した。
わーん。お父さんいつも勝手にさあ。じゃがりこだってさあ。メロンパンだってさあ!
じゃがりこは覚えているがメロンパンは身に覚えがない。大体じゃがりこ事件だってもう3年も前のことではないか。じゃがりこ事件というのは今回と同じで置き去りになっていた残り2本をぼくが食べたことで勃発した騒動である。3年も前の事案を持ち出してくるあたり娘はやはり女である。女は恨みを一生忘れない生き物なのだ。
熟年離婚をする夫婦は奥様があのときはあのときはあのときはあのときはと何十年分もの恨みを積み重ねて暗唱し、夫はそのほとんどを記憶していないので唖然とするわけである。
メロンパンについてはまったく記憶がないが、おそらくぼくが勝手に食べたという話なのだろう。しかし濡れ衣の可能性もあるのでこちらは断固として反対しておく。
メロンパンは知らん。
そう言ったら息子がお父さんスティックメロンパン食べちゃったじゃんなどとのたまうではないか。あ、男のくせに裏切りおって。
お父さんひどいっ!
娘は大粒の涙をこぼしながら延々とぼくに抗議して、お母さんにジュースを買ってもらって、お父さんあっち行ってと言っていたけれども次第に落ち着いて無事に仲直りしたと思ったのはたぶん僕だけで、またひとつ一生忘れない恨みを買ったのであろう。次回は、じゃがりこのときも、メロンパンのときも、サンドイッチのときもとなるのだ。まるでおだんごぱんの歌である。