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(飛び出してさえしまえば世界は)
ここ最近、心揺さぶられるような嬉しい出来事があった。
わたしは引き寄せの法則なんて言ったりもするけれど、こんなのはわたし自身が勝手に思っているだけの偶然に偶然が重なっただけの出来事であって、ただただこのタイミングだからこそ、この重なった嬉しい偶然を記したい。
先日旅した箱根旅行。
新宿に向かう際、「しまった。忘れた!ロマンスカーに乗りながら続きを読みたかったのに。」と、わたしは読みかけの本を自宅に置いてきてしまったことに気づいた(出掛ける時は何かしら絶対忘れるからね)。
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わたしは西加奈子さんの作品が大好きだ。
こどもがまだ保育園に通っている頃に「きいろいゾウ」を読んで西加奈子ワールドに一気に引き込まれたのである。
それからというもの、作品という作品を読み漁り、新作が出ようもんなら本屋に駆け込んだ。もう十数年、西加奈子ファンである。
本は昔から好きで、図書館で借りて読むより購入するタイプだ(借りても期限までに読みきれない。そして図書館から返してくださいとハガキが届く始末)。「買ったらいつでも(すぐ)読めるやん!」そうやって購入しては読まずに積み重ねて置きっぱなしにしている本ばかりだ。
鬱で休職した最初のうちはとても本など読める状態ではなかったが、しばらくすると(余計なことを)何も考えずに済むものが必要になった。
そういや読みかけの本もたくさんだし、読んでもない本もたくさんあるなと本を手に取り、パラパラとページを捲った。
途中まで読んだかもしれない本の中に紛れ、これは絶対に読んでいないという本を見つけた。
くもをさがす/西加奈子
乳ガンを宣告された西加奈子のノンフィクションである。病は違えど、わたしはわたしで己の病と闘っている。闘う女なのだ。ずっと色んなことと戦ってきたし、過去も闘ってきた。だが、今回は長い戦になるかもしれない。
だが、(長い戦になろうとも、いまはまだ)負けてはならぬ。
西加奈子に(あなたに)読んで(闘って)ほしいと言われたような気がした。
バンクーバーという異国の地でガン宣告を受ける。それがどういうことなのか。しかもコロナ禍の最中。計り知れない恐怖を抱え闘い抜いた最強の女、西加奈子。
「まさか」「わたしに」
そんな「まさか」「わたしに」という絶望からはほど遠いかもしれない。しかし、負けてはならぬ。闘うしかないのだ。
わたしには頼れる家族も、そんなに多くの友人もいない。
ただひとりの大切な愛娘。夫はいないが、わたしもわたしの娘も大切にしてくれるパートナーと、そして愛犬2匹。
わたしはこの人たちのために生きねばならない。闘うのだ。
「闘いはいつか終わる」そんな希望をもらった気がした。
「くもをさがす」を読み終えた後、わたしはサラバ!を読み始めた。そんな中、箱根旅行に向かったのだった。本を持ってくるのを忘れてしまったという後悔はあったものの、箱の宿でたまたま見ていたテレビで「おしゃれクリップ」でカナダ生活を語る光浦靖子さんが出ていたのだ。
50歳からの留学。まさにコロナ禍でのカナダでの生活。「くもをさがす」で心を掴まれ、戦うぞー!絶対に負けたらあかんのやぞー!となっていたところに光浦靖子さんが出演していたのだ。光浦靖子さん、、、素敵すぎました!
「わたし、西加奈子のくもをさがす読んでたじゃん?西加奈子も同じ時期にカナダにいてガンと闘ってたんだよ。いま、これ見て感動してる。同じようなこと西加奈子が(本で)言ってたんだよ。西加奈子が!」そうパートナーに伝えながらぽろぽろと泣いたのだった。
その後に、まさかの。まさかの西加奈子からのコメント。
あぁ、これは引き寄せの法則だ。
もう、この闘いは闘い抜くしかない。ぽろぽろと溢れていた涙は滝のように鼻水と一緒に流れた。
その日、ふたりに挟まれ横になったわたしは、何かに安心したようにすぐに大いびきをかきながら爆睡したのである(翌朝、ふたりからは寝返りも酷いし蹴飛ばすし眠れなかったとクレームでした)。