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夏の終わり─イマカコミライ─ 一日一詩vol.57

終わりかけた夏を背にして走り出した

忙しいと 過ぎた日々のせいにしてやり過ごした

熟れた果実のよう 瑞々しい人生の断片

発見を重ねて歩んできた 短編の小説

直接 目で見て触れたものからしか

わからない事柄をただ愛おしく思えた

見通しは悪くないのに傾く夕日

眩しいな 立ち止まることをいい加減覚えて

手にしたものを誇らしく思いたいね

夜になれば鈴虫が鳴く 窓 開け放つ

網戸越しの世界に 壁はなく

自分が自分が っていつの間にか小さく

自分を自分で苦しめる 果てはなく

そもそもが宛てのない旅なんだ わかりな

なのにぶつけられる常識や当たり前

変わり映えしない視界 だったそのはずだった

仰向けの蝉 近付く台風 登下校するランドセルの群れ
夜が早くなった そう

夏が終わる 夏が終わる

明日が止まる くらいのスピードで走り抜けたいと願う君の心
今も僕の中に 十八

ワイングラス傾ける 窓の外は夕立

応え 合わせ 君と僕ふたり

移り変わる季節が過去と今を繋ぎ


暮らしは嘘みたいだ 嫁と娘 幸せ

へえとか言って信じないか それも僕らしい

約二十年のあいだにあった色々の数々が

点と点を結ぶ美しい線の延長に君がいて

だから後悔はしなくていいと今更になって言えるんだありがとう
足跡 曲がり角 ずっと探していた自分だけの何かを

いつか掴めるのかな その前に疲れるのかな

ふざけるのさまだ 砕ける氷 冷えた葡萄酒の赤
ただ純粋な思考求めて放浪する またひとつ夏が終わる 夏が終わる

暑さ拭う汗透けたTシャツ ビーサン 身軽
こどものままなのは馬鹿なとこだけ

終わらない仕事 楽勝 確証のない勝負

最速のタイムはこの歳になったら出ないか

つまりは 明日は止まらずに進み続けるのか

願いが叶わずにいた 空 また小さく考える 性懲りもなく


この手で触れていた世界 十八プラス十八

時間の感覚は 段落を移し替えたら
過去も錯覚するくらい思考は今を連れていく

夏の終わりに待つの何

立ち止まり葉を揺らす風の音

あの日 何度負けようと

過去はかたち変えて今を照らしている

無責任に十八の自分を笑った

反対に十八の自分はぼくを笑うか?

一方通行じゃないライフ

今までと 今からでもまた相対する

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