恩田陸「蜜蜂と遠雷」を読んで
音楽は行為だ。習慣だ。耳を澄ませばそこにいつも音楽が満ちている。
フィボナッチ数列
「巻貝見つけた。フィボナッチ数列だね」
音楽を外に連れ出そうとしている風間塵の言葉。
気になって調べてみると、フィボナッチ数列は「2つ前の項と1つ前の項を足し合わせていくことでできる数列」だということが分かった。この数列はひまわりの種の並びや巻貝のうずまきなど自然界の多くのものに見られ、黄金比にも関係しているらしい。数学と自然が繋がっていることを不思議で美しいと思った。
本来、人間は自然の音の中に音楽を聴いていた。その聞き取ったものが譜面となり、曲となる。だが、風間塵の場合、曲を自然のほうに「還元」しているのだ。
そして音楽も自然と繋がっている。最初は風の音とか、音に関するものだけをイメージしていたけれど、それだけではない。夕暮れの色や花の匂い、海の冷たさ・・・書き切れないような全てのものが音楽なんだろう。だからこそ、私たちは音楽を聴いて様々な景色や情感を思い起こすのではないか。
最後に
物語はコンクールに参加する4人のピアニストを中心としながらも、審査員やコンクールを取材する記者など、多種多様な人々に焦点が当たる。まるで音符のように1人1人の存在に意味があり、重なり合っている。
読み終わった後も「もっと彼らのことを知りたい。続きを読みたい。」と、頭の中で「蜜蜂と遠雷」は鳴り響いて止まない。
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