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一寸先が闇だとしても (続き)

 さて、前回は私の高校時代までを書かせてもらった。

 今回はそこから今に至るまで、立ち直ろうとしてきた話と今回のテーマへの考えを書きたいと思う。

 前回の最後、双極性障害を発症。高校を退学した私は引きこもりへ逆戻りする事となる。

 双極性障害について簡単に解説しておこう。双極性障害は躁うつ病と呼ばれることもある障害でハイテンションな躁状態と無気力なうつ状態を行き来してしまう。これが両極端で躁状態では無計画、無謀な事をしてしまうし、うつ状態では家から出れないほどおちこんでしまう事がある。(症状は人や状態によるので参考までに、詳しくは医療機関の情報を参照してください。)

 その影響で私は毎日ベッドの上で過ごし、ご飯などでしかリビングに出ない生活を送った。ゲームやアニメ鑑賞もしていたと思うがベッドで寝る訳でもなく横になっていた時間が長かった気がする。振り返ると「体からキノコが生えてきそうな生活」とでも例えたくなる日々だった。

 そんなある日のこと、隣に住む祖母とした話が大きな転機となる。
 会話の中で
「私には何もない」
という話を祖母にしたのだ。その言葉に対して一言
「写真があるじゃない!」
 と返された事で火がつく。その日から封印していたカメラを取り出し、写真を撮り歩くようになった。
 そうしているうちに両親が通信制高校を手続きしてくれて通信制高校へ入学。写真もコンクールなどでわずかにだが実績を残す事ができた。それでも双極性障害の悪影響は大きく、学校の成績は悪いまま。ただ、進学したかった。更に言えば写真をもっと撮りたかった。
 そこでコンクールの実績を活用してAO入試で芸術系の学校へ進学する事を思い立つ。背水の陣的な覚悟で望み、なんとか合格を勝ち取る事ができた。

 それからは有意義な日々だったと振り返って思う。双極性障害による気分の波と闘いながらではあったものの通学でき、周囲の人にも恵まれた。芸術系というのもあって一癖も二癖もある個性的な人が集まり、その個性が尊重される場所だったというのも大きい。双極性障害も個性の一部として扱ってもらえた。私が今、この話を書けているのもこの時間があったからだと思う。
 そうして楽しい時間はあっという間に過ぎ去り、卒業が近づくなか一つ問題が出てきた。就活が上手くいかなかったのだ。うつ状態が就活時期に直撃してしまった事が原因で面接はうまくいかず、そもそも積極的に動く力が残されていなかった。
 就活に失敗した私はうつ状態の落ち着きを待って仕事を探し始める。求人を漁るなかで就労支援A型事業所、そして今勤めているTANOSHIKAを知る事になった。
 こうして今、この文章を書くに至る。

 私のまだ短い人生ですら山あり谷ありで、一寸先は闇でもあった。良い事も悪い事も沢山経験した。
 「想像していなかった未来」という意味では想像していなかった事だらけ、想像できたとしてもしたくなかった事も多い。逆に想像より良かったことも沢山あったと振り返る。
 少なくとも、今私は幸せだ。それだけは確かだし、胸を張りたいと思う。

 さて、ここからは「想像していなかった未来」というテーマに対しての想いを書いていきたい。

 持論としては未来が想像通りになる方が珍しいと思う。素晴らしい未来を夢見ても現実になる程世界は甘くない。
 では、想像することは無駄なのか?私は決して無駄ではないと考えている。想像しなければ実現しないこともまた確かなのだから。
 夢が叶わないとしても、想像通りに行かないとしても、幸せを想像しなければ幸福は掴めない。私もまた幾つかの夢を失ってきた。それでも幸福を祈って歩いてきたから今があると思っている。

 一つ私から忠告しておくと、悪い想像だけは現実になりやすい。なぜかというと不幸になることは思いの外簡単だし、人間は不幸になりたいと思ったら全力で走っていける。不幸は実現しやすく、幸福は実現しにくいという事を頭の片隅に置いておいて欲しい。
 私は皆さんに、今が辛くても不幸に向かって走って欲しくはない。確かに幸福を想像出来ない状況は理解できる。しかし、不幸に向かって走り出したら止まれない。だから消極的にでも前を見よう。

 私もまた、これからの未来を見据えていきたいと思っている。正直、将来の事は未だに一寸先も闇状態だけれど絶望はしていない。
 なぜなら明かりを灯してくれる人達がいるからだ。これまでも、今も、そしてこれからも。沢山の人が支えてくれる幸せを感じていきたい。そして私も、誰かの道を照らす明かりを灯していきたいと思っている。もし、わずかでも貴方の足元を照らす明かりを届けることができていたら嬉しい。


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TANOSHIKA 地平線
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