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同人誌「砦」一首評 1
うたたねにたゆたう肩へ肩を貸し来世も汽水域でありたい
「冬の涯」帷子つらね
眠りは水と相性が良い。「泥のように眠る」や「船を漕ぐ」などの慣用表現があることにも表れている。
電車などのうたたねでぐらぐらとしている人がいるのだろう。その横に座り、肩を貸して、眠りを助けてあげている。そのとき願うのは、淡水と海水の混ざる河口の曖昧な水域、汽水域のように、相手にとっての自分の存在が来世でも曖昧なものであってほしいということ。
眠りの水っぽさと、関係性を示す汽水域という語の調和が見事な一首である。それにしても、曖昧な関係を願うのはどんなときだろうか。何か切ない事情があるのだろうか。たとえ曖昧な関係でもいいから、来世でもこの人に逢いたいのだろうか。などと考えをゆらゆらさせると胸がぎゅっと痛む。
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同人誌「砦」は、2021年11月23日発行。帷子つらね、小松岬、田村穂隆、中田明子、永山凌平、拝田啓佑、橋本牧人、平出奔が参加。入手は以下のリンクから。
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