志馬なにがし『透明な夜に駆ける君と、目に見えない恋をした。』(8/20読了)
花火を見上げるときに思い出すだろうな。
他人と関わらない生き方をしてきた大学生・かけるが、目の見えない同期生・小春と出会い恋に落ちる物語。
いつか友達と打ち上げ花火をしてみたいと話し、やりたいことリストを作り叶えていこうとする小春が、かけるに変化をもたらしていく。彼女の目が見えぬことを失念しての戸惑いや、却って意識しての失礼な思考、彼女と比べての自己嫌悪など、かけるの中でさまざまな感情がせめぎ合う。
でも、小春のことを知ろうとし、関わり方を模索してゆく彼の姿がとても印象的でした。
当初、誰かの印象に残る生き方はパワーがいると嫌っていたかける。でも、小春は心に焼き付く花火のような生き方をしてみたいと考えていて。懸命な彼女の姿が、かけるを揺さぶるほど大きくなっていたことを感じたんです。
彼だけじゃない。小春の生き方が、俯く誰かの顔を上げさせ、暗闇を照らす瞬間は一度ならず訪れる。
そして……かけるにとっての小春は、線香花火と重なる存在でもある。二人ならんで灯す線香花火に、かけるが託した想い。二人で共有した願い。
瞬く希望の数々が、彼らを導いたんだろうな。
改めて最初の一ページを見ると焼き付きますね。
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