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【勝手に読書感想部】みかんとひよどり:近藤史恵

[作品紹介]

フレンチシェフの潮田は愛犬のピリカと共に狩猟に出かけた山で遭難し、猟師の大高と狩猟犬のマタベーに助けられる。
ぶっきらぼうで気難しいけどピリカにだけは優しい大高
この出会いを機に、食材となる肉が生きた背景を知ってたうえで料理したい潮田は、大高が山で仕留めたジビエを使わせてほしいと持ちかける。

腕はいいがビジネススキルのない潮田と、あまり人生を複雑にしたくない大高が狩猟やジビエ料理を通じて距離を縮めていく、友情の物語。


[感想]

人間が生きていくために自然から命をいただいていることを改めて感じさせられる作品でした。
料理人として、獲物を仕留める瞬間から目を背けない潮田の姿勢がとても印象的でした。
そして命を奪う最前線でその責任と重みを背負い続けるハンターの大高の姿も・・・
職業柄、理不尽に憎まれて攻撃されても、きちんとやるべき事を全うするし命に対する責任から逃げない大高は本当にかっこよかったです。

私は美味しそうな食べ物が出てくる小説が大好きなのですが、ただただ美味しいものをつくって食べて幸せな気持ちになるだけじゃなくて、その美味しさにたどり着くまでのストーリーや背景を見せてもらえたことが、貴重な読書体験だと思えました。

年間約100万頭もの猪や鹿が害獣として駆除されているそうです。命を奪うならせめて最高に美味しくいただけるようなシステムがもっと一般化するといいなって思います。

お肉はともちろんジビエも大好きな私ではありますが、「食材」になった状態しか知りません。
生き物の命をもらっていることに対して頭では理解してるつもりでいるけど、その命に対しての責任を負ってるわけじゃありません。
死の現場、解体の場面を目の当たりににすると怖くなって目を伏せてしまう・・・無責任な私です。
命をくれている動物たち、そして猟師や畜産農家の方々には本当に、感謝してもしきれません。
食べる時はせめて、人間らしくきちんと手を合わせて「いただきます」したいですね!

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