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【勝手に読書感想部】夜明けのすべて:瀬尾まいこ

[作品紹介]

山添は、数年前に発症したパニック障害によって勤めていた大手企業を辞め、付き合っていた彼女とも別れ、交友関係も全て断ち切り、いつ来るかわからないパニック発作に怯えながら慎ましやかに暮らしていた。
なんとか生きていくために、給料は安いけど働きやすい栗田金属に転職し、そこで藤沢と出会う。彼女は普段は穏やかでおとなしいけど、月に一度、生理前の時期はPMS(月経前症候群)の症状に苦しんでいた。

[感想]

この本を読んで、すごく良かったです。
周りのいろんな人に対する、自分の接し方を改めて見つめ直すきっかけになりました。
読後、心がじんわり温かく優しくなったような感じです。

症状は人によって違いがあるんだろうと思うけど、私自身もパニック障害の人がもし職場にいたら「何事にも無気力で怠けもの」って思ったかもしれない。PMSの症状を目の当たりにしたらドン引きして、「こんなヒステリー女とはなるべく関わらないようにしよう」って避けたかもしれない。
こんなに苦しいなんて、全然知らなかった。
病気に対する知識や理解が少しでもあるだけで、ちょっと優しくなれる気がします。
その点、栗田金属の社長やスタッフは程よい距離感で接して、仕事のカバーやコミュニケーションのフォローをしてくれる。すごくいい職場でしたね。

病気とは違うけど、生きづらさを抱えるマイノリティをテーマにした作品で最近読んだ2冊を思い出しました。




*以下ネタバレ含みますので、まだ読まれていな方はご注意ください。



山添藤沢はそれぞれツラい症状を抱えてることを理解した上で、気兼ねなく、遠慮せず、だけど相手のためになりそうなことを自然と考えながら行動できるのだと感じました。
自分が元気で、相手が辛そうだと、やっぱどこか遠慮しちゃうし、気を遣っちゃいますもんね。
この2人の、お互いに対しての無神経すぎる言葉やり取りや、あまりにもズカズカと相手のテリトリーに入っていく感じに、思わずクスッとしてしまいました。
だけど、ちゃんと相手が喜びそうなことを考えて行動してる。
恋愛未満。だけど、心の深い部分で繋がっている感じ、すごくステキな関係でした。

生きがいを見つけるのは難しいけど、楽しみは簡単に作れる。

物語序盤、藤沢のこの言葉が文章の中でひときわ輝いて見えました。
小さな楽しみがいっぱい積み重なって、生きがいにつながればいいなって、心から思います。


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