牛の性格が優しい理由
みなさん、こんにちは。牛ラボマガジンです。牛ラボマガジンでは「牛」を中心としながらも、食や社会、それに環境など、様々な領域を横断して、たくさんのことを考えていきたいと思っています。
今回のテーマは、「牛の性格について」です。牛と接したことがない人も、牛に対してなんとなく温和なイメージを抱く人が多いと思います。では、牛は本当に優しいのでしょうか?優しいとしたら、それはなぜなのでしょうか?牛の性格について考えていくと、そこには人間にとって、とても大切な学びがありました。
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人々が抱く牛の性格のイメージ
まずは、牛の性格に対する世間のステレオタイプなイメージを、事例から明らかにしていきます。
牛系女子の特徴
牛を用いた人の性格に関する言い回しのうち、比較的新しいものだと「牛系女子」というものがあります。「猫系女子」「犬系男子」などと同じ、性格の特徴を動物に例えた「●●系女子/男子」のひとつです。
牛系女子の場合は総じて「母性が強い」「穏やか」「聞き上手」「不平不満を言わない」「一歩引いて人を立てる」といわれているようですが、これらはSNSで自然発生的に生まれたもの。明確な定義や根拠はなく、牛に対しての漠然としたイメージからきたものと推察されます。
干支が丑年の人の性格診断
古くからある性格診断に、血液型や星座のように干支から導くものがあります。十二支の動物の特徴やイメージから、その年に生まれた人の性格を推定するもので、自分の性格を振り返ったり、人との相性を占ったりするのに用いられています。
それによると、丑年生まれの人には「力強さ」「慎重」「誠実」といった特徴があります。
丑年の性格の由来は、かつて牛が農耕や運搬作業に利用され、労働力として人々の生活に欠かせない存在であったことからと考えられます。十二支に丑が加えられたのも、勤勉でよく働く、誠実さの象徴としてなのだという話もあるようです。
面接の質問「自分を動物に例えると?」の回答
これは企業の新卒採用面接によくある質問で、自分の長所や短所を客観的に捉え、うまくアピールできるかを問われるものです。「牛」を挙げた回答例には次のようなものがあります。
歩みは遅いが、誠実に仕事に取り組む
おっとりして見えるが、少しのことでは動じない強さがある
あせらず深く考える、根気強さがある
1つめ、2つめは牛から想起されるイメージに基づくもの。3つめは、夏目漱石が自分の門弟に宛てた手紙に書かれた「牛のような生き方」に関する言葉を用い、面接官へのアピールを狙ったもの。これらの回答から、牛は落ち着いて思慮深く、根気強い印象を持たれていることがわかります。
夏目漱石が考える「牛のような生き方」については、以下のnoteで詳しく考察しています。興味のある人はこちらもぜひご覧ください。
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なぜ牛の性格は真面目で優しいとされるのか?
誠実で穏やかな性格の例えとして用いられる牛ですが、実際はそうとは言い切れません。ウシノヒロバで育つ牛たちも一頭一頭個性があり、臆病な子もいれば気性が荒い子もいます。それではなぜ、真面目で優しい、おっとりとしたイメージを持たれるのでしょうか。
牛の性格と生態
日々のんびりと過ごしているイメージがある牛ですが、牛も人間と同じように、牛独自の社会を作って生活します。序列を作る習性はないものの、気の弱い牛は強い牛に負けて餌が食べられなくなることもあります。それでも総じておっとりとして見えるのには、「性格」ではなく「生態」が理由として考えられます。
牛は、牧草や藁を消化するために口の中と胃を往復させて何度も咀嚼する、反芻(はんすう)を行います。その時間は1日あたり6〜10時間ほど。反芻には多くのエネルギーを要するため、横になって体を休めながら反芻を繰り返します。
性格には個体差があるものの、横になる姿をよく目にすることから、牛は穏やかで地に足が付いたイメージを持たれているのでしょう。
牛と日本人の歴史
勤勉でよく働く、誠実な動物の象徴として十二支にも選ばれた牛ですが、そう捉えられるようになった理由を考えるときに、人との関係性を無視することはできません。
日本に牛が暮らしているのは、弥生時代に朝鮮半島から持ち込まれたのが始まりとされています。その後、農耕や運搬作業に役立てられるようになったのは先述の通りです。そこから、足腰が強く穏やかな性格の牛が重宝されるようになり、真面目で優しい個体が増えていったのだと考えられています。
乳牛・肉牛の品種ごとの性格
乳牛を代表するホルスタインや、和牛と呼ばれる日本の肉牛も、個体差はあるものの基本的に温厚な傾向にあります。
日本の肉牛の過去には、明治時代に体格のいい牛を求めて外国種と交配させたことで、気性が荒く肉質が落ちてしまったこともあるようです。その後、長い時間かけて改良を重ねたのが、黒毛和牛などの、「和牛」と呼ばれる上質な品種なのです。
一方、乳牛は比較的優しい性格をしています。なかでも、日本の乳牛の9割を占めるホルスタイン種は温和で優しく乳量が多いのに対し、日本の乳牛の1%未満のジャージー種は、人懐っこく活発で乳脂肪分が多いのが特徴です。
日本に暮らす乳牛や肉牛の多くが温厚なのは、酪農家や畜産業の人々が、より育てやすく生産性の高い牛を求めて品種改良を重ねた結果なのです。一頭ごとの性格に多少の違いがあるといえど、全体としては優しい印象を受けるのではないでしょうか。
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牛も人も、性格は関係性によって育まれる
人々が牛に対して「真面目」「温厚」「誠実」といった印象を抱き、好まれているのは、牛と人が築き上げてきた関係性があってこそ。人の側で生きる牛たちが、長い歴史のなかで大事に育てられてきた証なのです。
つまり、人と牛の関係性次第で、牛の性格は変化していくのです。人間にとって都合の良い性格にさせられたという側面もあるかもしれませんが、ウシノヒロバではこれからも、人と牛の穏やかな関係を守り続けていきたいと思います。
また、人間同士でも、相手を思いやることで自分の心が温まり、自分らしくいられる人と過ごすことで、日々がより豊かになっていきます。牛の暮らしや性格を考えることは、人の生き方を考えることに近いのかもしれません。
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(執筆:tama、編集:山本郁弥)