「不良と映画・第二回 さらば青春の光」
今回は、「さらば青春の光」の話をします。
芸人さんの話と思われる方が多いだろうから先に断っておきますが、芸人さんの話ではありません。
映画の話です。
先日、イギリスのロックバンド、「オアシス」の再結成が発表されたのは記憶に新しいですが、ギャラガー兄弟のリアム氏が影響を受けたと語っていた作品です。
この作品には、50〜60年代の若者文化を席巻した不良たち、モッズとロッカーズが登場します。
モッズとは、スーツの上からミリタリーパーカを羽織り、ベスパやランブレッタといったスクーターに乗って街中を走っていた英国労働者階級の不良たちで、「モッズコート」の語源にもなった人々です。
そして、ロッカーズとは、50年代後半に英国に登場したバイカーたちで、黒の革ジャンに黒の革パンといったバイカーファッションに身を包み、ロカビリーを聴いていた人々です。
物語は、両者の対立を軸に、若者たちの青春の光と影、そして、彼らが理想と現実の狭間で苦悩しながら成長していく姿を、丁寧に描いていきます。
異なる不良グループの対立といった点だけ見れば、「ウエスト・サイド・ストーリー」に似ていますが、本作では、ストーリーが進行するにつれて、熱狂的なモッズ青年の「青春の懊悩」が浮かび上がっていきます。
青年は、青春の光を存分に味わいながら、同時にその影の下にさらされ、葛藤した末に「光からの決別」を果たすのです。
理想に立ち向かって現実に打ちのめされるという苦いラストは、「アメリカン・ニューシネマ」のそれを彷彿とさせ、壊れそうに危うい青春の残骸を、スクリーン一杯に焼き付けます。
青春とは無軌道であり、その無軌道から自由になるための通過点であることを、如実に表したラストだと言えます。
このラストを見て、何か思うところがあるとすれば、青春時代を精一杯に生きた証なのでしょう。
青春真っ盛りの若者にはもちろんのこと、青春の何たるかを味わい尽くした大人にもオススメの不良映画です。