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「五分で読み解く文学の世界。夏目漱石著・こころ」

皆さん、突然ですが、学生時代の夏休みのことを思い出して見て下さい。  

きっと、楽しい思い出ばかりではなかったはずです。

学生諸君は、束の間の自由を手に入れるのと引き換えに、大量の宿題をこなさなくてはなりませんでした。

その中でも、最大の難敵だったのが、「読書感想文」だったと思います。

それもそのはずで、一冊の本を読んで感想を書きなさいというのは、無茶振り以外の何者でもありません。

何故なら、人生経験の乏しい学生には何かを論評できるだけの批評精神が培われていないし、そもそも、それを言語化する能力に欠けているからです。

なので、大抵の学生さんは、字数を埋めるために、あらすじを書くことに汲々として、肝心の感想を書かないというミスをやらかしてしまうわけです。

それでは、読書感想文の意味がありません。

これは脚本家の三谷幸喜さんも仰っていたことですが、「その本を読んで、自分がどう感じたのか? どのように変わったのか?」というのを書くのが読書感想文の醍醐味なので、そもそも、あらすじなんて書く必要が全くないのです。

しかし、感想を書くにしても、その本の内容をきちんと理解していなければ、感想を書くことなんてできないでしょう。 

「じゃあ、どないしたらええねん」というツッコミがあちこちから聞こえてきそうですが、今回から、難しい文学作品の読み解き方を私なりに紹介していきますので、参考にしていただければ幸いです。

題して、「五分で読み解く文学の世界

記念すべき第一回は、夏目漱石の「こころ」です。

こころは、夏目漱石の長編小説で、「彼岸過迄」、「行人」と並び、後期三部作の終局を為す作品です。

この作品を読み解くためには、明治の知識人が抱えていた深い孤独を理解する必要があります。

作品の舞台となった明治は、日本が近代国家として歩み始めた時代でした。

それまで不自由を強いられていた人々は初めて国民として扱われ、天下国家のために働く自由を得ました。

作中に登場する「先生」や親友の「K」もそんな時代を生きた人たちです。

この時代に生きた人々はとても純粋でした。

誰もが天下国家のために何事かを為さなければならないと考えていて、そのための努力を惜しみませんでした。

この純粋さが強い国を築くための原動力となったのは間違いありませんが、一方で、そのために苦しんだ人も少なくありませんでした。

その典型的なタイプが、明治天皇に殉じた乃木希典であり、親友のKであり、「先生」だったのです。

彼らは純粋であり、孤独でした。いや、ある意味では、純粋ゆえに孤独だったということができるでしょう。

乃木希典大将は、西南戦争で敵方に旗を奪われたことを悔いていました。

Kは、三角関係の恋において、親友の「先生」から「向上心のないやつはばかだ」と言われたことを悔いていました。

そして、「先生」は、Kを死に追いやってしまったことを、悔いてきました。

純粋ゆえに孤独に沈み、孤独ゆえに死に向かわざるを得なかった人々。

それこそが、この「こころ」で描かれている最大の悲劇なのです。

読書感想文で感想を書くとしたら、この点に焦点を絞って書けば、先生から及第点をもらえるでしょう。

このように、一見難しそうな文学作品も、作品の時代背景や作者の掲げている主題について学べば、より一層理解を深めることができます。

次回以降も、折に触れて、作品を紹介していきますので、参考にしていただけたらと思います。

それでは、今日は、このへんで。





























 

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