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あっけなく終わった恋

こんなに、いつも通りに帰路に着くとは思わなかった。

君と過ごす、最後の日。
君には受験を言い訳に別れを切り出した。
受験が理由なのはちょっぴり本当で、少し嘘だった。
4回くらい話し合ったから、お互いの意見は対立することなく合っていて、特に喧嘩することも無く話し合いはあっさり終わった。
長くなるかと思って奮発して買ったコンビニのフラッペは私の手を冷たくするだけだった。
私は、そのすぐ終わった別れ話に少し安心したような寂しいような気がした。

もちろん別れ話を振り出したのは私なので、
別れられて良かった。
あの人を傷つけないで済む
自分が傷つかないで済む。
とかは思ったけれど、話し合い第一回目から第四回目まで君は駄々をこねることも、私を引き止めることもしなかった。ちょっと寂しかった。

君は無責任に
一生好きだよ。
なんて言葉は言わないタイプだから、巧みに受験を言い訳にした私を無責任に引き止めなかったのかもしれない。

君は相手のことをよく考えて、相手にとっての正解が、まるで自分にも正解だと言うように話す時があるから、私の意見を第1に考えてくれたのかもしれない。でも、君は時に無情にも思えるほど切り捨てる時もあるから、私の意見をこんなにも大切に掬ってくれたのは、君なりの愛だったのかもしれない。

真相は、ずーっと闇の中だね。これから一生、知ることもないんだろう。

君に引き止められたって、私は多分意見を変えないとは思うけど、大きく揺らぐ位には貴方が大好きでした。
我儘だなとは思うけど、少しは引き止められたかった。涙だって流してくれて良かった。傍から見たら女々しくて、傍から見たら気持ち悪いとしても、愛の言葉の1つとか惜しむ言葉の1つとかがあっても良かったらなって思った。
でも、それは私も言っていないからお互い様か。
私たち、そういう所が似てるから付き合ってたのかもね。

最後にした会話はいつもと何一つ変わらなかった
お互い、「これで最後だから」「これで最後なのに?」と言いつつも、いつもみたいにくだらない話をして、いつもみたいに笑って、いつもみたいに君から話を切り上げて、いつもみたいに手を振って「じゃあね」って。
いつもと違うのは最後に「頑張ってね」って言われたこと。「頑張ろうね」って言ったこと。

あんまりにもいつもと変わらないからさ、帰り道涙の一つも出なかったよ。
だって、またこの「いつも」が来る気がしちゃったから。
もう、来ないのにね。
私が終わらせたのにね。
君が好きじゃ無くなりました。
でも、君が大好きでした。

ずるいよ、いつも同じ服来てたくせに、今日新しい服着ちゃってさ。
ずるいよ、いつもは「私って天才で優秀で素晴らしい人間だからさ!」って私が言うと、苦笑いするだけなのに、いつも通り笑った後に「でも、本当にそう思うよ」って言っちゃってさ。
ずるいよ、ずるいよ。

君に会わないと君のことが嫌いになるのに
君に会うと君が好きになるのは、なんでですか

私は、どうすれば良かったのかな

あっけなく終わった別れ話、いつも通りの気持ちで着いた家。それまでは普通だった。大丈夫だった。少し寂しいけど、きっと私も君も何も変わらないと思ったから。
でも、夜はダメだね。夜の静かさが私に君との関係性が変わる寂しさを伝え始めた。いつもは君の悪口を言う夜の風が、今日は君を惜しむ言葉を吐いている。

話がお開きするタイミングを決める時に君が
「30分くらいにお別れすればいいかな」
って言ってて、
「やば、二つの意味で?かけてる?」
って私が返したら
「ダブルミーニング?笑」
と笑ってて。
「こんなに笑いながら別れ話する人たち、居ないよね」
と笑った。

本当にお別れをした。
さようならだよ、さようなら。
学校も、時間割も、部活も、何もかも違う私たちがばったり会うことなんてそうそうないと思う。
週に一度は会っていた日常は、もう過去のものだ。

あんなに君に文句を言っていたのに、居なくなると恋しくなる。
これが恋と言うならば、あまりにも苦いと思います。
これが愛と言うならば、私は本当に君を愛していたんだと思います。

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