生理の話②
月経困難症治療のため、低用量ピルを処方されて一ヵ月が経過した(とてもとても長文です)。
月経困難症とのこれまで
私の月経困難症は大学在学中あたりから相当にひどくなり、月によっては内臓を捻りあげられるような痛みにのたうち回ることもあったし、痛みを少しでも軽減するため真夏でもカイロをお腹と腰に貼って過ごすこともあった。もちろん頭はぼうっとするし、変な汗もダラダラ出てくるのだが、痛いものはしょうがない。
就職して会社の寮で一人暮らしを始めて数か月経ったころ、生理が来た日の深夜に今まで経験したことのない痛みに襲われた。下腹部がとにかく痛くて、うまく息を吸うことができない。刻々と増す痛みに、これはただ事ではないと思い、隣の部屋の同期に助けを求めてタクシーを呼んでもらった(同期は次の日も勤務なのに、呼んだタクシーに同乗して一緒に病院まで付き添ってくれた一生の恩人だ)。
幾度か入院もしてみたけれど
寮から近い総合病院に夜間の救急外来があり、血液検査などによれば何らかの炎症反応が出ているとのことだったが、はっきりとした病名などは分からないままだった。そのまま三日ほど入院することになった。同期組が、マンガ本を持ってお見舞いにきてくれた。運悪く、私はその週末に会社の資格試験を受けることになっていた。会社の先輩に「入院したので病院の外出許可がでたら試験を受けられます」というメールをすると「へー、ロックしてるね」とちょっとおもしろがっている風の返事がきた。しばらく絶食だったため水だけを飲んでフラフラになりながら受けた試験は、かろうじて受かっていたのでほっとした。
今になって振り返ると、あの痛みは卵巣のう腫茎捻転だったのではないかと思っている(あくまで素人の見解だけれど)。というのも、その後婦人科にかかる機会があり「チョコレート嚢胞」と呼ばれる卵巣に血液が溜まって肥大化する病気が見つかったからだ。
嚢胞はそこそこ大きくなっており、子宮筋腫や腺筋症と呼ばれる症状も見つかったため、腹腔鏡手術をした。せっかく入院するんだから…と、その地区で一番ゴージャスな病院(婦人科がいいという評判だったので)に入院した。受付に自動演奏のグランドピアノが置いてあるような病院で、看護師さんたちもなんだか看護師さんというよりはCAさんのようなファビュラスな雰囲気を漂わせていた。手術はうまくいって、その後、子どももでき、予定帝王切開での出産となった。
産後は産後でそれなりに辛く
産後は、生理時そのものの症状とは比較的うまく付き合えるようになってきたが、PMSと呼ばれる生理や排卵前後の不調や精神的な落ち込みを強く感じるようになった。特に偏頭痛との付き合い方は難しく、痛みと吐き気で家事や仕事にも不調をきたし、脳神経外科でも見てもらったものの特に異常はなく、頭痛の予感がしたら市販の痛み止めを服用してしのいだ。月の4分の1くらいしか調子がいいときがないので、育児と家事と仕事のバランスをとりながら、なるべく不調が大事な仕事や会議などにあたって影響が出ないように、いろいろな調整をするのがとても大変になってきた。
そんなこんなで、かかりつけの婦人科と相談して、低用量ピルの服用を始めた。家から近いという理由でかかりはじめたクリニックだが、とても丁寧に話を聴いてくれる。
不調のことを相談すると、「これはあくまでご本人がどう選択するかですが」と前置きをして、低用量ピルのことを説明してくれた(以下はあくまで個人の理解で書いていますので、正確ではないかもです)。
その病院では、月経困難症の治療として、28日周期で使うタイプと、最大120日連続で飲むことができるタイプの2種類を取り扱っているということだった。
苦痛を耐え忍ぶための神話
私:あの、ひとつ疑問なんですが。
医:はい、なんでしょう。
私:生理って、なんか毎月のデトックスみたいにいわれたりしますよね。120日も生理がこなくて、なんか悪いものが溜まったりすることってないんですか…?
医:それがねー、ないんだよね。不思議でしょ。
そうだったのか!私たちはどこかで、様々な苦痛を耐え忍ぶための「神話」のようなものをあちこちで内面化しているのかもしれないな、と思った。お産の痛みを経てこそ愛情が深まる、とか、叱られるのも愛情のうちだ(違うか)、とかそういうこと。
次に、副作用のことも質問してみると、医師はすらすらと答えてくれた。一番気を付けたい副作用は血栓症であること。そのために、服用にあたっては血栓のできやすい体質でないかどうかを調べる血液検査や既往歴などの問診を丁寧に行い、その後も年に一度は血液検査をして血栓の予兆がないかを確認するとのことだった。この検査もクリアできたので、その次の受診時に、28日周期のタイプのジェネリックを処方してもらった。薬代だけだと、月約1,500円。イメージしていたよりはかなり、価格面のハードルは低い。それでも、最初の処方までに少なくとも2回は通院しないといけないし、出費は出費なのだけど。
服用を始めてみると
服用を始めてすぐは、ささいな体調変化にも「血栓の影響では…?」と怖くなって、いろいろな情報をインターネットで検索しまくった(あまりお勧めしません)。特に、脚の、中でも左ふくらはぎのむくみを強く感じて、ドラッグストアで買った着圧ソックスを履いて過ごし、仕事仲間にも断って1時間ごとに少し歩いたりするなど、ややナーバスになりすぎていたところもあったかもしれない。
1週間もすると、体が慣れてきたのか、気になるむくみもなくなった。忘れんぼうのわたし(そそっかしいので職場では「サザエ」と呼ばれている)は、とにかく薬を飲み忘れる自分が容易に想像できたので、あらかじめ投薬管理アプリの設定など手を尽くしておいた。そのためか、きちんと1か月忘れずに飲み切ることができた。
あの不調の波がとまった
一ヵ月飲んでみた所感としては、とにかく不調が、あきらかに減った。生理が終わって次の生理が来るまでに、いつもだとかなり体調面と精神面の波があるのだが、くるぞくるぞと構えていた不調の波が、拍子抜けするほど来ない。
家族がむかつく言動をとったときも、今までだと「イッラァ‥‥ゴゴゴゴゴ」と怒りの炎が燃え上がっていたのが「イララー?」くらいで収まるようになった(これはいいすぎかも)。なので、「私はこうしてほしい」ということも、落ち着いて伝えられることが増えた。うまく行かないことがあっても、それに思考が吸い取られることもなくなった。
休薬期間中に消退出血という生理に似た出血があるとのことだったが、そのときの痛みもまったくなかった(私の場合は、ですが)。生理2日目の、あの起きてるのに起き上がれない、起き上がっていても歩けない、歩いてもおばあさんのように壁につかまりながら腰を曲げて歩かないといけないようなことが一つもおきない。
生理のない人、あるいは軽い人の生活ってこんなんだったのか!と、改めて驚いている。この困難があるとないとでは、仕事のパフォーマンスや家族などとの関係に、それは大きな差が出るだろうな、とも。
もちろん、じゃあみんなが薬を飲めばいい、という話でもない。合う合わないの体質はあるだろうし、先に述べたような副作用のリスクもある。薬はなるべく使いたくない、という考えもあるだろう。でも、女性の権利、ということを考えるときに、様々な情報を得た上で、使いたい人が使える、自分で選択をすることができる、選択するしないで誰かから非難されたり後ろめたい思いを抱えたりしない、そういう環境が用意されているか否かということはとても大きなことだと思った。
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