私の物語はいつだって憧れから4話
『調理場という戦場』
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私世代のフレンチ料理人でなくても、フランス料理を志す日本人ならば必ず知っているであろう本のタイトルだと思います。
本の著者は斎須政雄氏。
東京都三田にあるレストラン、コート・ドールのオーナシェフ。
この本には斎須氏の仕事論や彼が12年間過ごした、70年代から80年代のフランスの料理界の様子、人との出会い、そして当時の彼の心情などが書かれています。
私は専門学生時代に斎須氏のこの本に出会い、毎日カバンの中に入れて持ち歩いては、通学や帰宅の際の電車の中で彼の言葉に触れていた。
(なので表紙はボロボロになり溶けてなくなってしまいました(笑)。
本自体も少し傷んでいます。。。)
斉須氏の言葉のひとつひとつがフランスで働くことを憧れていた当時の私の心に、そして体の細胞一つ一つに染み込むように響いていました。
『いつかは自分もフランスのレストランを渡り歩き、星付きレストランで働いて、フランス料理の本質、美食の魅力を語れる人物になりたい』
っと斎須氏の本を繰り返し読んでは、フランスへの想いが加速していったことをよく覚えています。
『私も必ず・・・』
行く宛もなければ、技術も自信も見いだせないでいた私ですが、フランスへのその想いだけは途切れないよう祈るように願っていた日々は、少しだけ懐かしく感じます。
あの悔しい期間があったからこそ、今フランスで四六時中料理に向き合える時間を愛おしく感じられるし、美食の本質に日々近づいていく自分自身をとても誇りに思えます。
そして、ちゃんと本当のスタートラインに立てる日は訪れるのです。
斎須氏の言葉に触れて、心に留めて大切に育てた当時の想いだけで。
コーヒーから始まる仕事
2010年6月7日火曜日。
オーベルジュのシェフに指定された仕事の開始時刻の午前8時まで、まだ2時間近くある。
昨晩は緊張感と疲労で、外がまだ明るく日が沈むであろう21時30分頃には就寝についていたと思う。
今日が初めての仕事の日という緊張感と、フランス語でコミュ二ケーションが取れるであろうかという不安は眠気をすっかり忘れさせてくれていた。
10分前の7時50分にホテルの部屋を出て、歩いて1分もかからない距離にあるオーベルジュの調理場裏口に向かう。
既に3人の料理人が扉の前で待機している。
皆、私よりも年下の22,3歳の若いフランス人。
私が挨拶をすると、皆が優しく笑顔で話しかけてくれたときは少しホッとしたのを覚えている。
シェフはまだ到着していない。彼はいつも少し遅れて到着するのが彼の出勤スタイルのようである。
8時を回りすでに5分経った頃であろうか、私を駅からここまで送ってくれた青い車でシェフが到着する。
シェフは私に笑顔で『やあ、昨日はちゃんと休めた?』
っと聞いてくれたが、私は『はい』っと返答するのが精一杯であった。
シェフが調理場裏口の鍵を開けて、それぞれみんな仕事の持ち場についていった。
各々仕込みを始める準備を始めると思いきや、皆何かを待っている様子?
『あれ?今日は忙しくないのかな?』
っと勝手に勘違いしていると、調理場スッタフの一人が奥からコーヒーを人数分運んできて皆に配っている。
当時コーヒーを飲むことも楽しむ習慣もなかった私にとって、現在のようにコーヒーを楽しむために、わざわざパリまで足を運んでカフェ巡りをするようになったのは、間違いなくここでの仕事を始める前の一杯のコーヒーを飲んでから仕込みを始めるっという習慣が、コーヒーを楽しめるきっかけになったことは間違いないことである。
皆、コーヒーを飲みながら一日の仕込みの流れ、予約人数を確認し、そこから仕事を始めるのがオーベルジュの朝の日課であった。
そして私はまだ知らない。
このゆっくりと始まる朝のスタートから、調理場が戦場に変わる日々が続くことを。。。
それでは今日はここまで❗
続きはまた次回【私の物語はいつだって憧れから5話】にて
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Chef ichi