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人生初サウナをフィンランドで【Löyly(ロウリュ)】
家のお風呂でものぼせてしまう、熱さ耐性ゼロの私が、フィンランドで人生初のサウナに入った話です。
サウナに入ったことがなくて、これから行ってみたいなという人へ。
サウナ超初心者が語ります。
夏にフィンランドに行くことを話していると、
「せっかくサウナの本場に行くのに、1回も行かないなんてもったいないよ!!」と、サウナ好きの友人に言われた。
以前から、金曜日の夜や旅先でのサウナの話や、“ととのい”がいかに気持ちがいいか、ということを友人から話を聞いていたので、私もととのいたい!と興味が湧いていた。
今後、万が一サウナを好きになって、
“あのとき行っておけばよかったよ〜”と悔しい思いをするのはイヤだ。
しかし、私は家のお風呂でさえ、長風呂するとすぐにのぼせてしまう体質。
サウナを楽しめるとは思えない。
倒れたら?気分が悪くなったら??サウナの作法は???
さまざまな不安を抱えつつも、“せっかく行くんだから” の気持ちが僅差で勝ったので、旅の行程に入れることにした。
楽しめなかったら、外で待ってればいいもんね。
一方で、一緒に行く妹は予習として、都内でサウナに行っていた。
とても気持ちがよかったらしく、フィンランドのサウナも楽しみにしていた。
「それにさ、サウナから出ると、視力が良くなった感じがするんだよね」と妹。
ねぇ、それって本当??聞いたことないけど。
サウナ経験1回の先輩(妹)についていくことにした。
*
数ある中から選んだサウナは、「バルト海に飛び込めること」を売りにしている「Löyly(ロウリュ)」
おしゃれなレストランも併設されていて、フィンランドでも大人気のサウナ。
Google翻訳に助けてもらいながらネット予約した。
1週間前でも、すでに満員の時間帯があったので予約必須です。
私たちは19時〜21時の回。
不安を抱えながら水着をまとい、いざ出陣。
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(写真は公式Instagramより)
初めに入ったのは、スモークサウナの部屋。
なんだこの真っ暗な空間は。
周りの空気がモワンモワンとしていて、息がしづらい。
こんなの、わざわざ熱中症になりに来ているようなもんだ。
リラックスどころか、辛い。
倒れるんじゃないか、不安でしかない。
不安な気持ちのまま、熱さを堪えていると、
「さ、行こっか。」と汗だくの妹がすくっと立ち上がる。
外の冷たい空気に触れて、安心したのも束の間。
(フィンランドの8月の平均気温は20度前後)
すぐにバルト海が見えた。
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(写真は公式Instagramより)
どうやら、このはしごを降りて、海に飛び込むらしい。
怖いよう。
ドボン!とためらわずに飛び込んだ妹が、
「気持ちいいよ!入りなよ」と誘ってくる。
おそるおそる、足先を入れてみる。
ひえ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
こんなに冷たい海に入ったら、心臓が止まってしまうんじゃないか。
怖い、怖すぎる。
すぐに足先を海から出してしまった。(リタイア①)
海にぷっかり浮かびながら、「まだお姉ちゃんは体があったまってなかったんだね」とニヤニヤする妹。
冷たいと思っても、思い切って肩まで浸かってみると、じんわりと温かくなるらしい。
さすが、1回経験している人は違うのね。勉強になります。
「さっ、もう一回行くよ」と言われ、再びサウナにチャレンジ。
今度は薪サウナの部屋。
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(写真は公式Instagramより)
途中で、恰幅のいいおじさんに「ロウリュ、mGBおsじゃbkフォd??」となにか言われた。
???となっていると、
しゅぉおおおおおおおおおおおおおおおおお
おじさんがストーブに水を流し込んだ瞬間、
ものすごい熱波が押し寄せてきた。
どんどん水を流し込むおじさん。
どんどん上がっていく温度。
何これ何これ!耐えられない!!!と、逃げるように退室。(リタイア②)
ほんとに丸焼きになるんじゃないか、と思うくらいに熱かった。
同じタイミングでサウナから出たお姉さんと「Too hot!!」と言い合う。
熱かったよね、あのおじさんは何をしたの。
やっぱりサウナは楽しくないかもしれない…と、涼しすぎる外気に当たりながらぼんやりしていると、妹やおじさんが湯気を出しながら出てきた。
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「あの熱波が怖かった…」とホクホクの妹に伝えると、
「数秒すれば、あの熱さは落ち着くんだよ」と教えてもらった。
そうだったんだ。じゃあ次は、もうちょっとだけ耐えてみよう。
怖いけど、なんとかしてサウナを楽しみたいという意地が生まれていた。
ちなみに、サウナストーンに水をかけて蒸気を発生させることを“ロウリュ”というらしい。おじさんはきっと、「ロウリュしちゃうけどいい?」って聞いてたんだね。
何回か入っているうちに、汗がたくさん出るようになってきた。
ロウリュされても、確かに5秒くらい経つと慣れた温度に戻っていくことも分かった。
妹に「そろそろ出ない?」と伝えると、「あと10秒数えたらね」と制される。
だらだら汗を垂らしながら外へ出る。
あれ……なんかあったかい……
“今度こそは、海に入りたい”と思いながら、はしごに向かって歩いて行く。
目の前に広がる海。
「よし!」
はしごを一段ずつ降りていく。
ぎゅっと目を瞑りながら、肩まで浸かる。
えっ、えっ、えーーーーーーーーーーーーっ!
あったかーーーーーーーい!
思わず目を見開く。
なんだこの、ぶわあっとする感覚は。
最高に気持ちがいい。
そして何よりも、
海に入りながら見た景色がたまらなく美しかった。
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写真を見るだけで、あのときの気持ちが戻ってくる。
どこまでも続く穏やかな海と、夕焼けに染まる雲と空。
普段、景色に感動することはあまりないが、
このときばかりは、自分の心が大きく動いたのが分かった。
きっと、一生忘れることのない景色。
こんな景色が見られるのだから、これからも生きていこう。
もし何かに絶望することがあっても、ここへ来よう。
この景色を見たら、また生きていく力が湧いてくるかもしれない。
“ここへ逃げてきたらいい”と思える場所ができた。
隣にいた妹も、何も言わずに目を潤ませていた。
フィンランド旅行の中で、1番心に残ったひととき。
*
それからは、汗がじわりと垂れるのも、
ロウリュして熱波を受けるのも、全てが心地良くなった。すっかりサウナの虜に。
初めのスモークサウナでは、どうやってこの2時間を過ごそうか心配していたが、
退室の時間が来るまで、サウナと海を永遠に行ったり来たりした。
頼もしい妹がいてくれたおかげで、人生初サウナを楽しむことができた。
それに、最高の景色を見ることができた。
フィンランド、来れてよかったな。
サウナ、来れてよかったな。
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サウナ好きの友達に、「サウナ行ってよかった!最高だったよ!」と報告すると
「初めてのサウナがフィンランドなんて、
初めての運転でベンツに乗るようなもんだね」と言われた。
ベンツ、乗っちゃいました。