側面の影
人生の道を歩むうち、
ふと立ち止まり、深く考える。
若い頃には何もかもが鮮やかで、
真理がすぐに目の前に現れた。
だが歳を重ねると、
あらゆるものに側面が生まれ、
その影を見ずにはいられない。
ある時、戦後の物語を聞いた。
闇市に通う人々の姿、
飢えをしのぐために手を伸ばした者たち。
その中で、おばあさんが裁かれた。
法律を守るため、判事は冷静に、
彼女に刑を下した。
その判事は、後に闇市の食べ物を拒み、
ついには命を絶った。
真実かどうかは問題ではない。
重要なのは、何を感じ、どう考えるか。
その物語を心に刻み、
自分自身と向き合うこと。
神は見守ることもなければ、
助けの手を差し伸べることもない。
死は悪ではなく、
意志の曲がりもまた防げない。
時代や環境に頼らず、
己の道を選び取ることが、
偽りのない生き方への道標となる。
側面は無限に生まれ、
やがて全てが一つに溶け合う。
その時、鋭さは消え去り、
人は丸く、静かに老いていくのだろう。
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