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映画と美術#16『はじまりの記憶 杉本博司』目に見えないものを物質化する儀式
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〜2月23日 08:00
▷キーワード:杉本博司、写真、現代アート、シミュレーショニズム
1980年代まで、写真と美術の間には大きな隔たりがあった。しかし、ニューヨークを中心にシミュレーショニズムの運動が盛り上がり、既存のイメージを流用するアイデアが評価される中で「写真」が芸術として評価されるようになっていった。
写真に魅せられニューヨークの写真学校に通っていた杉本博司は、最初こそ広告写真を撮っていたが、この流れに乗り「写真」で美術界に挑戦することとなる。シロクマがアザラシを食べようとする決定的瞬間を撮った「ジオラマ」シリーズが評価され、彼の人生は大きく変わった。この作品は、北極で撮影されているように思えるが、実は自然史博物館で撮影されたもの。写真は真実を映すと我々は思うが「そうではない」と杉本博司は語り、その後のコンセプトの軸となる。たとえば、「シネラマ・ドーム・ハリウッド」がある。映画館の劇場内を正面から撮った作品であり、スクリーンは真っ白となっている。これは上映中の劇場内を撮影したものであり、長時間カメラを回すことで、様々な光を映すスクリーンから真っ白な画を返す、人間が知覚できない世界を投影しているのだ。
『はじまりの記憶 杉本博司』は、そんな彼の写真に対する哲学を余すことなく提示する作品となっている。
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