1-2 出入りの女商人、マーヤ ~小説「女主人と下僕」~敗戦奴隷に堕ちた若者の出世艶譚~
ディミトリがはじめてマーヤに会ったのは数年前のことである。
ある日、使いの後、ディミトリが茶舗に戻ろうと店の前にきたちょうどその時、馬車が止まり、店の前に、黒髪の東洋系の少女が降り立った。彼女の出身国は、東洋一の大国、シーナの帝国の配下ではあるが、帝国の最西端のはずれの地の小国で、そこは東洋と西洋のはざまなので、厳密には完全なる東洋人ではなかったが、やはりそれでもこの西洋のランス国においては珍しい存在で、戦後ずっとランスに住んでいるディミトリの目には充分に異国的な稀人に見え