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■行ってみたいウォーキング■鉄道目線で歩く渋谷(後編:渋谷駅周辺と、京王井の頭線・神泉駅へ)

渋谷駅周辺を歩くツアーコースを考えてみました。中目黒駅から代官山駅を経由し、渋谷駅方面に東横線沿いに歩き、そこから渋谷駅周辺を回り、最後は道玄坂上から京王井の頭線の神泉駅に至るウォーキングコース。前編では、中目黒駅から渋谷駅周辺までやって来ました。(前編①~⑪までの見どころは、こちらです)

ウォーキングコース。全体で約4kmのコースです。

後編は、渋谷駅周辺のスポットを巡りつつ、道玄坂を上がって、最後は京王井の頭線の神泉駅までたどり着くルートです。

■⑫渋谷駅西口歩道橋

国道246号に架かる歩道橋。完成しているものの、
橋脚がまだ仮設のままのものがあります。
国道246号の上を通る、首都高3号渋谷線の高架橋を間近で見ることができます。
いよいよ、桜丘口再開発(Shibuya Sakura Stage)が11月竣功予定だそうです。
今はまだ仮囲いで覆われている場所も多いですが。
仮囲いで覆われていた、桜丘地区に再び賑わいが戻りそうです。
渋谷駅南口の今の姿。東急百貨店南館の上半分の解体が進み、
駅前の再開発工事が引き続き進んでいます。

■⑬銀座線渋谷駅

東急百貨店西館も、かなり解体が進みました。この百貨店、
2階に玉電(田園都市線の前身の路面電車)、3階に銀座線が来ていました。

玉電ビルの当初の形については、土木学会のデジタルアーカイブスにある、「土木建設工事画報 昭和13年6月号」に記載がありますので引用します。

渋谷西口付近の銀座線(当時の東京高速鐡道)の計画断面図。
こちらは平面図。玉電ビルの2階に玉電、3階に高速鉄道(地下鉄)が入っています。
「帝都電鉄」(今の井の頭線)ホームも見えます。
「壱階市営」とは、今のハチ公広場に来ていた都電のことでしょう。
井の頭線からJRの駅を結ぶ通路。昔は玉川電車が走る鉄道橋だったのですね。
岡本太郎さんの壁画の後ろに、銀座線の車庫線が今も走っています。
仮設通路の窓から眺めた銀座線の橋。
「西広場架道橋」は現役なのですね。
当時の玉電ビルも、解体がかなり進んできました。
通路を歩いていくと、昔のプラットホームの一部が現存している部分が。
この通路、銀座線のかつての降車ホームを歩いているのですね。

銀座線の渋谷駅は、かつてはJRの線路の真上に位置していて、東急百貨店の西館と東館の間を貫通する形で存在していました。先ほどの「土木建築工事画報」に図があるので、こちらも紹介します。

「土木建築工事画報」にある、東口の東京高速鉄道の図面。
渋谷川が、昭和13年の時点で東横ビルの地下を流れていますね。
こちらが、平面図。当時の省線(JR)の様子がよくわかります。
この時に「新設ホーム」と書かれた外回りホームが使われだしたようです。
東横百貨店のビルは、高速鉄道開業の際に「増築」されたようです。
旧ホームと、一部床を後で付け足した部分がよくわかりますね。
今の回送線。昔の線路の形から変更を加えた単線の線形になっています。
すぐ隣には、JRの上を跨ぐ銀座線の線路の
架け替え用の工事桁の架設が進みます。

■⑭ヒカリエデッキ

渋谷駅と渋谷ヒカリエを結ぶ歩道橋。こちらはおなじみの姿です。
ヒカリエの3階からは、銀座線の電車が垣間見えるスペースもあります。
ヒカリエの4階には、「ヒカリエデッキ」があります。(2021年10月撮影)
この真下に、銀座線が走っています。
将来は、4階レベルで西口と往来できるようになるようですが、
まだ西口は再開発がこれから進んでいくところです。

■⑮渋谷川の暗渠

宮益坂の交差点に来ました。
渋谷川は、実はこの写真撮影箇所の真下を流れています。
スクランブルスクエアの地下を貫通しているのです。
宮下公園に向かうこの歩行者通路。
かつての渋谷川の暗渠の部分になります。
その横は、「のんべい横丁」。趣のある飲み屋さんが多いです。

■⑯宮下公園

宮下公園は、1階が駐車場、2階・3階が商業施設で、屋上部分に公園がある、珍しい公園です。2020年に今の形のものがオープンしました。

屋上にある、ビーチバレーができるコート。
何だかさすが渋谷、と言う施設が多いです(笑)。
こちらは、ボルダリングができる場所。
スケボーもできます。
意外とこの公園の階段部分とか、電車のビュースポットなのです(笑)。

■⑰中渋谷架道橋

渋谷の真ん中に、古びたアーチ橋が・・。ということで
ここは是非訪れたい場所です。
中渋谷とは、道玄坂付近の昔の字の名前。
ちょっと魔境感があるようなガードです。

■⑱スクランブル交差点

スクランブル交差点に戻ってきます。途中でしばしJRの宮益架道橋を眺めます。

宮益架道橋。既設の橋桁の高さや方向を変えて線路切換に対応してきました。
ハチ公広場。いつでもたくさんの人で賑わっています。
この駅舎の上にある、山手線外回りホームの解体も進んでいます。
この風景も、少し変わっていくのでしょうかね。

■⑲渋谷マークシティー

渋谷マークシティーに続く、銀座線の車庫線。
ビルの中に今も車庫があります。
銀座線の車庫線下の空間と、平行する井の頭線の改札。
銀座線、存在感を巧みに消している感じがします。
車庫の上、4階はこんな感じ。
3階には、車庫が広がっているのでしょうが、想像ができません。
4階から見た、下の階の様子。
確かに銀座線が続いているのがわかります。
実は5階(屋上)はバスターミナルになっています。
玉電廃止後も、ここでバスターミナルとして健在、
という感じもしなくはありませんね。

■⑳道玄坂

マークシティの4階を歩き続けると、道玄坂上に着きます。
ある意味廃線跡を歩いている感じがしなくもないです。
今では、5階に上るバス道路と、4階を進む歩行者道路。
昔はここに玉電の路面電車が進んでいきました。
当時の貴重な写真を見つけました。
道玄坂之碑なるものがありました。
こちらは、与謝野晶子が詠んだ句碑だそうです。

■㉑神泉駅(ゴール)へ

さあ、最後の神泉駅に向かって歩きましょう。

神泉駅へは、滝坂道という古道を歩きます。
道玄坂で分岐し、府中を目指した道なのだとか。
一歩路地を入ると、こんな不思議な光景が広がります。
神泉駅に向かう、古びた階段。その脇には
「この下に井の頭線のトンネルが設置されています」という標示が。
そして、トンネルと向かい合う、神泉駅が現れます。
これが、渋谷駅と神泉駅を結ぶ、「渋谷隧道」。

これは、渋谷駅から撮影した、隧道の渋谷側からの様子です。

渋谷駅から見た、渋谷隧道。駅とほぼ途切れずにトンネルが繋がっています。

渋谷隧道建設当時の貴重な記録、土木学会のデジタルアーカイブに、建設中の昭和8年発行の「土木建築工事画報」があり、そこで見つけることができました。

当時の記事。幻の「山手急行電鉄」も地図中に書かれています。
隧道掘削中の写真。普通に山岳トンネル工法で作られたのですね。
神泉駅側の坑口。今と同じ形していますね。
隧道掘削手順図。小さい導坑をいくつか掘り、上下に広げていくような
工事を続けていたようです。
そんなトンネルを観つつ、神泉駅へ。道路とホームがとても近い駅。
西側は駒場東大前駅に向け、またトンネルが続きます。
神泉駅の駅舎。渋谷駅の隣とは思えない不思議な場所です。

■終わりに

中目黒駅から東横線に沿って渋谷駅に向かい、渋谷駅付近を散策して、井の頭線の神泉駅まで向かう散策コースを作りました。代官山駅と神泉駅はどちらも、「渋谷隧道」から顔を出したところに駅があるという場所になっていて、昭和初期に鉄道が開業しているという共通点があります。進化しつづける街、渋谷の歴史を、この2つの「渋谷隧道」という構造物を通してみると、地理的なことも含めてよくわかる気がします。

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